第46話 討伐

 ギルが竹林に到着すると、ほぼ全ての赤い実の除去が終わり、残りは危険地帯にあるものだけとなっていた。


 太陽の光が直線となって、竹林の隙間から煌めいている。ギルは頬から流れる汗をタオルで拭った。


 危険地帯では、巨大化した野生生物がひしめき合っている。縄張り争いが至る所で行われ、怪我をして殺気だった野生生物は、食糧を求めて竹林の浅層へ溢れ出していた。


 縄張り争いに敗れた野生生物は、直ちに冒険者ギルドに所属する人々によって、麻酔銃での鎮静化が行われた。


 しかし、危険地帯にいる残りの野生生物は、麻酔銃での鎮静化は効果がないようだった。


「……」


 ギルも参戦し、しばらく残りの野生生物の鎮静化を試みていると、とうとうギルド本部から、残りの野生生物の討伐依頼が発表された。



 ギルはやるせない思いだった。人間から野生生物の領域に踏み込んで置きながら、なぜ人間は野生生物を討伐しなければならないのか。


 しかし、このまま巨大化した野生生物を放置していると、危険地帯にある赤い実の植物を撤去することができない。巨大化した野生生物が増加することで、住宅地への氾濫が予測されることは免れなかった。

 




 ギルは野生生物の討伐に参加した。自分だけ何もしないでいることは、とてもできないことであった。


 正面から野生生物をダガーで切り付ける。野生生物は苦しみながらも、一方的に攻撃されることは許さなかった。


 熊型の野生生物が爪でギルの肩を切り付ける。ギルは完全に避けることはできず、肩に浅い切り傷を負った。


 ギルは野生生物の後ろに周り、連続して首に攻撃した。野生生物は振り返り、薙ぎ払うように爪でギルを攻撃する。


 ギルは直角に避けて攻撃を回避すると、再び後ろに回り、首への攻撃を繰り返した。


 しばらくすると、ギルだけでなく、周囲の冒険者達も危険地帯にいる野生生物の討伐を終えたようだった。


 ギルは血だらけの身体を振り返り、深い傷がないことを確認した。


 戦いが終わった冒険者の中でも、ちらほらと重症者が存在してるようだった。

 その後、重傷者を除き、ギルを含む数人でまとまって地下を探索することになった。


(残るは地下か……)


 ギル達冒険者は、穴の開いた巨大な竹の近くに集まった。

 冒険者の一人が覗き込むと、巨大な竹の空洞には、吸い込まれるように深い暗闇が広がっていた。地下深くまで続いているようだ。


「他に入口はないか?」

「探せ!」


 それぞれ散らばって巨大な竹林の周りを探索していると、冒険者の一人が岩陰に隠れた空間を見つけた。


「見つけたぞ!」

「地下に通じているかもしれない」


 ギル達は数人で大きな岩を移動させると、簡単な松明を作り、現れた下り階段へと足を踏み出した。

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