第44話 報告
冒険者ギルドに到着したギルとアスカは、ギルドマスターに報告するため、受付の女性に用件を伝えてギルドマスターを呼び出してもらった。
ギルとアスカは別室に通されると、ギルドマスター、ジンと対面した。
ジンは40代のがっしりとした体型の男性で、やり手の元冒険者であった。
「よく来たな。何か異変があったか?」
「実は、」
アスカがギルドマスターに竹林の異変を報告しようとすると、扉が三回ノックされた。
「失礼します。隣街のハワード伯爵家当主が
「そうか。では、ここに呼んでもらえるか?」
「承知しました。」
ちょうどリチャードが来たので、アスカとギルの報告を交えて話をすることになった。
「突然すまない。竹林の詳しい話を聞くために
「いえ。ちょうどその竹林について、報告を受ける所なのですよ。」
まずはアスカの話を聞くことになった。
最近竹林内で巨大化した野生生物が増加していて、激しい縄張り争いにより危険地帯が発生した。という内容だった。
次にギルの報告だった。
その竹林内には、所々に竹に巻き付く新緑色の蔦のような植物が見られ、そこに実った赤い実が、蜂蜜のような香りで野生生物を誘き寄せていた。
さらに、今日の探索では、危険地帯の近くに巨大な竹を通じて地下のような存在を発見した。
これらの報告を聞き、リチャードは一度自分の領地に戻り、自分の領地内の竹林を調べることにした。
「世話になった。」
「いえ、今後ともよろしくお願いします。」
リチャードは自分の領地の現状を伝えると、お礼を言い、この場を立ち去った。
「伯爵の仕事は大変そうだな。」
「ギルドマスターの仕事も疲れそうだ。」
「皆んな、大変だよな……。」
アスカ、ギル、ジンが会話をすると、お互い疲れたように視線を交わした。
☆★☆
ギルが宿屋に帰ると、梨紗は宿屋の受付カウンターの上で丸くなっていた。
「お帰りなさい! 猫ちゃんが待ちくたびれていましたよ。」
「リョクの世話をありがとう。助かった。」
ラインが鍵を渡すと、ギルはそっと梨紗を手ぬぐいで包み込み、部屋まで運んだ。
梨紗はいつもの寝床に到着すると、麻の布団の上で大きく伸びをして、再び丸まった。
ギルは少しだけ癒されたように微笑み、またいつもの無表情に戻った。不器用な人間なのであった。
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