第41話 シーチキン

 ギルは、危険地帯から冒険者ギルドへ向かった。


 竹林に隠れ潜みながら進んでいると、右から薄い笑みを浮かべたうさんくさい従者風の男性が歩いてきた。


「すみません、ここら辺で猫を見なかったですか?」


(猫……? リョクについて、何か手がかりがあるかも知れない。聞いてみよう。)


「いや、こちらも探している所なんだ。そちらはなぜ猫を探しているんだ?」

「先程、美しい緑色の瞳の猫を見つけまして。保護したら、目を離した隙に逃げられてしまいました。」

「そうか。こちらが探している猫も緑色の瞳なんだ。」

「まさか……飼い主がいるなんて、聞いてないですよ。」


 従者風の男性は心なしか動揺したようにつぶやくと、すぐにきびすを返してこの場から去った。


★☆★


 ギルは慎重に竹林たけばやしを進み、無事ぶじ冒険者ギルドに到着した。


 扉を開けると、梨紗とライン、アスカ、茶髪の女性がテーブル席で一緒に食事をしていた。


 梨紗は茹でた魚の身をほぐしたシーチキン、ラインとアスカは具沢山シチュー、茶髪の女性はシンプルな魚の塩焼きを食べていた。


「にゃ。」


 梨紗が真っ先にギルを発見すると、シーチキンを咥えてギルの元に走った。


もっちゃもっちゃもっちゃ


 ギルの足元に座った梨紗は、そのまま美味しそうにシーチキンを噛んだ。


「ギル、遅かったな。」

「ギルさん、お疲れ様です。」

「はじめまして。」


 アスカ、ライン、茶髪の女性がギルに気づくと、茶髪の女性は自己紹介をした。


 名前はハクというようだ。


 ギルは今までの経緯を聞き、梨紗を見つけてくれたお礼を言うと、こっそり梨紗の食事代をテーブルに忍ばせた。


「せっかくなので食事をご一緒しませんか?」

「そうしましょう!」

「そうだな」


 ハクが提案すると、ラインとアスカはそれぞれ賛成の意を示した。


「ありがとう。」


 ギルは三人にお礼を言って、梨紗の頭をひと撫でした。ギルは煮込み料理を注文した。


 梨紗は、役目は果たしたとばかりに俊敏しゅんびんに席に戻り、シーチキンにかじり付いた。大好物だったようだ。

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