第40話 出会いと別れ
ぶちっ
ギルは渋い緑色の竹に巻き付くように育った新緑色の蔦、そこに実った赤い実を一つもぎ取ると、慎重にポケットに仕舞い込んだ。
赤い実を取ると、蜂蜜のような香りはすぐに消えた。
あたりを見渡して梨紗を探すが、なかなか見つかりそうにない。
「リョク……?」
そのまま進んでいくと、野生生物が凶暴になる危険地帯に入った。ギルは一度冒険者ギルドに戻ることにした。
☆★☆
ふんふん
梨紗は従者風の男性に連れられて道を進んでいると、梨紗の鼻の近くに焼肉の匂いが漂ってきた。
「はっくしゅん! あれ?」
従者風の男性がくしゃみをすると、梨紗は手元からいなくなっていた。
★☆★
『おいしそうな匂い……!』
梨紗は従者風の男性から離れ、洞窟の中で匂いの元を辿っていると、洞窟の出入り口の近くで明るい茶髪の陽気なお姉さんがバーベキューをしていた。
「あれ、猫?」
お姉さんが振り返ると、梨紗はよだれを垂らしそうな顔でお姉さんの手元をガン見していた。
「しょうがないなー、あげる。」
梨紗はお姉さんから焼肉をもらった。とても美味しい焼肉だった。
もぐもぐ
梨紗の瞳はキラキラと輝き、お姉さんはやさしく微笑んでいた。
「君はどこから来たの?」
お姉さんが訊ねると、梨紗は冒険者ギルドの方向を鼻で示した。
「にゃー」
「そこまで送ってあげる。」
梨紗はお姉さんのリュックに背負われると、よっこらしょ、とそのまま冒険者ギルドに向かった。
☆★☆
「あ! 猫ちゃんだ。」
「無事でよかったな。」
冒険者ギルドに到着すると、ラインとアスカがすぐに気づいて迎えてくれた。
「猫、よかったね。」
梨紗、ライン、アスカはお姉さんにそれぞれ『ありがとう』と伝えた。
ギルはまだ冒険者ギルドに到着していないようだ。
『なにかあったのかな……?』
梨紗の表情は変わらなかった。信頼しているようだった。
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