第34話 竜と空

(よし、さっそく竹林に行こう!)


 そう思って竹林の方へ歩き出した梨紗は、それに気づいたギルに慌てて止められた。


「リョク、そっちは野生生物がたくさん出るから危ないぞ。すでに日が落ちてきた。今からの時間は宿へ向かった方がいい。」


 ギルは空を見上げると、周囲を見渡しておもむろに指笛を吹いた。


ヒューー


 音になってない指笛は果たして笛と言えるのだろうか。梨紗が唖然とギルを見上げた時、遠くから風を切るような鋭い音が近づいてきた。


『!?』


 梨紗が気づいた時、首が長くて竜のような大きな両翼と角を持ち、鋭い爪のついた二本の脚と太い尻尾でうまくバランスをとっている、灰色のワイバーンのような竜が目の前で地面をえぐり、着陸した。


(わー、迫力がすごい。)


「リョク、相棒のレイだ。旅の途中で助けた時に懐いてしまったんだ。爪の毒は危険だが、穏やかな性格をしている。女の子だから、きっとリョクとも仲良くなれるはずだ。よろしくな。」


 ギルはそう言ってレイの頭を撫でると、レイは嬉しそうにギルの手に頭をぐりぐりした。癒しだった。


 さっそく親しみを覚えた梨紗は、恐る恐るレイに近づいた。足元まで来るとレイはこちらに気づき、鼻先を近づけた。


「レイ、お座り。」


 ギルはレイにゼッケンと腹帯、ハミや手綱等をレイの背負い袋から取り出して設置すると、梨紗を抱えてレイの背中に乗り、命綱として梨紗をぐるぐる巻きにした。


「レイ、もう大丈夫だ。」


 その言葉を聞くと、同時に、レイは地面を走り、助走をつけて大きく羽ばたいた。一気に空へ向かって上昇した。


ふわっ


 空の飛行は梨紗の三半規管を狂わせた。ジェットコースターに乗ってるような胃腸の気持ち悪さが襲ってくる中、投げ出された空高くの景色に背筋が凍るようだった。完全に高所恐怖症であった。


 そんなこんなで、隣町の門までたどり着くことができた。そして突然、つんのめるようにして地面に着地した。ぐえっ。


 ギルは素早くレイから降りると、梨紗の命綱を解いて乗竜器具を取り外し、レイの背負い袋にしまった。


 門番と短く会話をしたギルと梨紗は、一度レイと別れることになった。梨紗はギルの肩に飛び乗り、二人は街に入ってすぐ近くの大きな建物へ向かった。

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