第26話 嫌な予感
じー……しょぼん
月の光にぼんやりと照らされた部屋の中、枕元にいる梨紗は、ステラの顔を見てひげを下げた。ステラの閉じられた目の濃いクマと青白い顔は、まるで死人か幽霊のようだった。
梨紗はこのままでは状況が何も変わらないと思い、散歩に出かけて自分の考えを整理することにした。
スッと、無音でベットから飛び降り、猫用ドアをすり抜けると、絨毯に肉球を沈めながら廊下を歩いた。消えかかった
(ステラ、どうして部屋に閉じこもっているんだろう……。やはり奴のせいか。がるる!)
しかし、梨紗は頭を振って気持ちを切り替えた。
(だめだめ、人のせいにしたらダメだ。ウィリアムのことはあくまできっかけに過ぎないはず。ステラがずっと心の奥で考えてたことを、人に言われたからこそ、ここまでふさぎ込んだんだと思う。)
そこまで考えると、ステラが一番言われたくなかった言葉は何か、疑問に思った。
(ウィリアムが言った言葉は確か、『その妾は父上を捨てた後、ステラを産んで……』だったっけ? うーん。話の流れ的に、その妾はステラの母親のことだよね? そうなると父上のリチャードをステラの母親が捨てたってことになる? ……なるほど、ステラは母親がリチャードを捨てた、ってことに怒りを覚えたのかもしれない。さらに、父親が母親を捨てたと思って暮らしていたのなら、より
梨紗は長い時間をかけて結論を出すと、現在の状況をどうやって改善するか思考した。
(よし、そうと決まったらステラに真実を知ってもらうしかない。リチャードは優柔不断だけど、意味もなくそんな言葉は言わないはずだ。……ふわーあ、今日は疲れたな。また明日。)
考えがまとまったことで眠くなった梨紗は、長い道のりを引き返そうとした。その時、近くの部屋から不気味な
ぴょん、ガチャリ
嫌な予感がした梨紗は、すぐさま唸り声が聞こえる部屋の取っ手をジャンプして開けると、部屋に入り状況の把握に努めた。
真っ暗な部屋の中央にはベットがあり、リチャードが寝ている。だが、リチャードは眉間にしわを寄せて苦しそうに寝言を呟いていた。
「ううう……苦しい……許してくれ……。」
ひやり
突然背筋が冷やりとして毛を逆立てた梨紗は、
ステラの形をした何か、それは、執念を感じさせるものすごい目つきでリチャードを睨んでいた。
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