第21話 屋敷の柱

 くわーあ


 梨紗は大きく欠伸をして目を開けると、すぐ目の前に巨大な顔がぼんやりと浮かんだ。

 梨紗は思わずその場で飛んだ。


「にゃっ!?」


 慌てて辺りを見渡すと、部屋はまだ暗かった。近くでステラが眠っていた。


(夜か……。)


 ステラは柱事件の後、自分を抱えてこの部屋に戻ったのだろう。そう思った梨紗は、布団の上で丸まり、二度寝をするのだった。


☆★☆


 夜遅くまで仕事をしていたリチャードは、少し休憩をとるために執務室を出た。そして、何気なく、近くの柱に手を置いた。

 

 ぐにゃり


「なんだ!?」


 驚いて柱を見ると、リチャードの手の形ではっきりと凹んでいた。

 観察したところ、柱には粘土が貼り付けてあった。今まで誰も気づかなかったのは、柱の模様が粘土の上から緻密に描かれていたからだろう。


「誰だ、こんな悪戯をした奴は……。」


 リチャードは頭に手を当てた。


(最近睡眠時間が減ったな。仕事の苦情も心なしか多い。こんな時に、柱の修繕か……参ったな。)


 リチャードは修繕の書類を作成するために、再び執務室に戻ることになった。足取りは重い。


☆★☆


 翌日の朝、ステラが朝食を食べるために部屋を出ると、梨紗はネズミ探しの旅に出た。しかし、この屋敷にはネズミがいなかった。梨紗はしかたなく、庭に出て獲物を狩ることにした。


バサバサッ


「トラちゃん!?」


 キジのような鳥をくわえてきた梨紗は、侍女達に貴重な食材として大層喜ばれたが、明らかに梨紗より大きい獲物だったため、ステラにドン引きされたのだった。

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