◆フードの男
時は雨の日に戻る。
流浪の冒険者トマスは、いつものようにギルドで魔物を換金して、宿屋に戻る途中であった。
ふと、目線を上げると、鉛色の雲が空を覆っている。思わず、トマスは顔をしかめた。
(嫌な天気だな……)
フードを深く被り直そうとしたその時だった。
どこか
トマスは束の間、不意を受けて少女とすれ違ってしまった。
(しまった、闇の精霊憑きか!)
少女は去っていったが、黒い
トマスは精霊が見える体質だが、その分、精霊に憑かれやすいのである。
(くそっ、はやく宿に戻らなければ……)
黒い幽霊は周囲の湿気や負のオーラを吸収し、人に悪影響を及ぼしてしまう。
雨が降りそうな天気である以上、すばやく屋根のある所に避難することが大切だという事を、トマスは知っていた。
フードを深く被り、重くなる体を引きずって歩いていると、トマスは前から来た誰かとぶつかってしまった。
「すみません! 大丈夫ですか?」
「ああ……すまない。大丈夫だ。」
ぶつかった少女に会釈して宿屋に帰ろうと急いでいると、トマスは背中が軽くなっていることに気づいた。
慌てて少女がいた方向を見るも、そこに少女はいなかった。
「ほんとうに、すまない……」
無力なトマスは精霊を
悔しい想いを抱えながら、歯を食いしばって踵を返す。
(……そろそろ違う街に移るか)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます