◆冒険者ギルド
「カレンさん、昼から貴族様の対応をよろしくね」
「はい、承りました」
冒険者ギルドの先輩からの言葉に、カレンは了承の意を示した。
男爵家の三女であるカレンは、本名をカレン・ペラムという。実家が貧乏貴族な為、給料が安定した職業であるギルドの受付嬢を以前から目指していた。
しかし、ギルドの受付嬢になるためには知識、教養が必要とされるため、誰にでもなれるわけではない。特に物書きもできない平民には難しいとされている。
カレンは15歳まで学園に通っていたので教養はあったが、冒険者ギルドで必要とされる知識は不足していた為、勉強に励み、努力して見事合格したのであった。
現在は勤めて3年目である。貧乏貴族といえども男爵なので、最近は貴族の対応を任されることが多い。
本日ここを訪れる貴族はハワード伯爵といい、移動するついでにこの街の視察をするそうだ。
カレンは今までのことを振り返りながらギルド長と入り口で待っていると、馬車が目の前に止まった。
御者が降りてきて扉を開けると、赤髪に黄色の涼しげな目をした男性が降りてきた。若く見えるが、どうやらハワード伯爵のようだ。
お互い挨拶をすると、ギルドの応接室に移動した。視察の内容には主にギルド長が対応している。
たまに、実際に働く現場の意見として聞かれるので、それに答えるのがカレンの仕事である。
一通り話が終わると、伯爵はしばらく聞き役だったカレンに話題を振った。
「ペラム嬢、兄妹で営業している『リスのしっぽ』というパン屋が評判だと以前に聞いたのだが、今もやっているのだろうか?」
「だいぶ前に、妹の方が出産して体調を崩し、亡くなられたみたいで、今は兄の方が妻とふたりで営業しているそうです。妹の子供が現在12歳ぐらいで、一緒に暮らしているそうです。父親は分からないようなので(ごほんっ)……あ、失礼しました!」
カレンはギルド長の咳払いで自分が失言したことに気づき、慌てて謝罪したが、伯爵は考え事をしているようだ。
「ふむ。(12歳の子供……?)」
「うちのものが失礼いたしました。では、これからもどうぞよろしくお願いします」
「……ああ、すまない。了承した。」
伯爵はギルド長に答えると、物思いに耽っている様子で帰っていった。
カレンはその様子を見て、なにか言ってはいけないことを言ってしまったのではないかと不安に駆られるのだった。
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カレンは、思ってたより素敵に見えたハワード伯爵に浮かれてしまい、喋らなくていいことまで喋ってしまいました。
その後、ギルド長に怒られたことで自分の言動を振り返り、深く反省することになります。
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