◇宿屋の日常
宿屋に帰ってきた梨紗は、日当たりの良い宿屋の裏庭でゴロンと横になっていた。
いつもこの時間には、シーナが洗濯物を干すためにここに来ることを梨紗は知っていた。
しばらく草の上で日向ぼっこをして待っていると、シーナが宿屋の裏口から洗濯物の籠を持ってやってきた。
シーナはこちらに気づくと、一瞬だけ嬉しそうな顔をした後、洗濯物をすばやく干し始めた。
梨紗は、水が飛ばないように遠くからシーナを見守っていた。
バサッ
最後の洗濯物を干し終わると、シーナはさり気ない様子で梨紗に近づき、やさしく頭を撫でた。
ゴロゴロゴロ……
シーナによる絶妙な撫で加減によって、梨紗はうっとりと目を細め、お腹を見せてゴロゴロ喉を鳴らした。
シーナは、そんな梨紗にデレデレしていた。
梨紗はしばらくシーナに撫でてもらっていると、裏口の扉が開いた。
「シーナ、ガイさんが呼んでたよー」
ステラが来たようだ。ステラの言葉に、瞬時に真顔に戻っていたシーナは、少しむくれた様子で答えた。
「今から行きますよー。………ちっ」
「今、舌打ちしなかった!?」
シーナはそう言って、裏口から室内に入っていった。
ステラはシーナが去っていくのを見送ると、辺りを見渡して誰もいないことを確認した後、「少し待っててね」と梨紗に言って室内に入っていった。
ステラは、香ばしい匂いがする紙袋を持ってすぐに戻ってきた。
「トラちゃん、パンだよー」
ステラはそう言いながら笑顔でパンを取り出し、ちぎって手のひらの上に乗せた。
梨紗は喜んでふわふわのパンくずを食べた。
(おいしい、おいしい……)
梨紗がおやつをもらっていると、また裏口の扉が開いた。カールがやって来たようだ。
カールはステラを見つけると、用件を言った。
「ステラ、いないと思ったらここにいたのか。仕事が
「はーい、今から行きまーす!」
ステラはそう言うと、名残惜しげにちらりと梨紗を見てから、パタパタと走って宿屋に戻って行った。
カールは梨紗に気づくと、少しだけ梨紗の頭を撫でてから、仕事に戻って行った。
梨紗は大きなあくびをすると、ぽかぽかと日の当たる庭でもうひと眠りしようと微睡むのだった。
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