第12話 しっぽがふたつ
(しっぽが……しっぽが二つに……。)
梨紗は混乱していたが、素早く気持ちを切り替えて、この現象について考えた。
『きっかけとなった出来事は何だろう。最初に思い浮かぶことは、ステラに憑いていた悪霊を除霊したことだよね。(しっぽがふたつ……)でも、以前に猫パンチで悪霊を払ったときは、しっぽが一つのままだったと思う。……ということは、悪霊を引っかいて完全に消しとばしたことが原因なのかもしれない。(私のしっぽがぁーー!)』
梨紗は、全く気持ちを切り替えることができていなかったようだ。
『それにしても、しっぽが二つの生き物ってなんだろう。猫、しっぽが二つ……日本だと猫又かな? そういえば、人間だった頃は、ステラに憑いてた大きな悪霊は払うことができなかったと思う。今は霊力が大きいから普通の猫ではないのかもしれない。でも妖怪かー、異世界にも猫又っているのかな?』
とりあえず思考がまとまった梨紗は、もう少しだけ歩いたら宿屋に帰ろうと思った。
商店街の方を歩いていると、黒いチョビヒゲ模様の長毛猫が魚屋から出てきた。
(毛がもふもふ……)
梨紗はモフ猫を見ていると、モフ猫はこちらに気づき、挨拶をしてくれた。
「ふぁーん(こんにちはー)」
(鳴き声がふぁーん!? 新しい!)
「(こんにちは)」
梨紗は内心の動揺をひた隠し、あいさつをした。せっかくなので、もっふもふな黒白猫に、猫又について聞いてみた。
「(すみません、猫又について何か知っていますか?)」
「(ねこまた? 聞いたことないねー。それって猫なの?)」
「(そうですか。では、しっぽが二つの生き物は知っていますか?)」
「(しっぽが二つ? あっはっはっは! 面白いねー!)」
「(おもしろい……ぷっ、あははは)」
梨紗はなんだか楽しくなった。久しぶりにたくさん笑い、モフ猫に元気をもらった。
モフ猫としばらく談笑してると、魚屋から慌てた様子で店主が出てきた。きょろきょろと辺りを見渡して、何か探しているようだ。
店主はモフ猫を見つけると、大きな声で言った。
「ちょび! またお前、勝手に魚食ったな!」
「ふぁんふぁーん!(やべっ!)」
ちょびは地面にぴたりと伏せて、カサカサと逃亡を図った。まるでゴキブリのような奇妙な動きである。
しかし、店主の方が足が早かったため、ちょびは店主に捕獲された。
観念したちょびは、ゴロンとひっくり返り、お腹を見せて降参のポーズをした。
「しょうがねーやつだな。」
店主はそう言って、満更でもなさそうにちょびのお腹をもふった。なんだかんだで猫好きのようだ。
一連の出来事を見ていた梨紗は「仲がいいんだな」と微笑ましく見守った。
梨紗もなんだかガイ達に会いたくなったので、そろそろ宿屋に帰ることにした。
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