第7話 ボーナスタイム

 深夜、屋根裏部屋で寝ていた梨紗は、ガサガサという物音で目を覚ました。


(……なんの音? 下から聞こえるような)


 下の階に降りると、宿泊部屋の入り口に置いてあるごみ袋をネズミが漁ってるのが見えた。


(うわー、ゴミを漁ってる)


 不快に思った梨紗は、ネズミを追い払うために威嚇した。


「フシャー!」


 驚いたネズミは慌てて梨紗から距離を取ると、安心したのか、また食べ物を探すために動き出した。

 


ちょこちょこ、ぴたっ。ちょこちょこちょこ

 


 その様子を見ていた梨紗は、猫の本能が目覚めてなんだかそわそわしてきた。


(ネズミがちょこちょこ動いているのを見ると、なぜか追いかけたくなる)



ちょこちょこちょこ、ぴたっ。ちょこちょこ、すすすすすっ。



「うにゃー!!」



だだだだだっ!

べしべしべしべしべし!!



 梨紗はネズミを叩きのめした。



テッテレー♪



 梨紗の猫レベルがアップした。



ガサガサガサ


キラーン!



 次の標的を見つけた梨紗は、次々と敵を倒してどんどん猫レベルが上がったのだった。



テッテレー♪テッテレー……



 そうして宿屋のネズミを殲滅した猫は、部屋の隅にネズミの山を作った後、満足してガイの足元で眠るのだった。

 

☆★☆


「にゃー」


 翌朝、猫の声で目を覚ましたガイは、キジトラ柄の猫がこちらを見つめているのに気付いた。


(……そうだ。昨日トラ公が家に来たんだったな)


 梨紗はガイがこちらを見たのに気づくと、少し進んでは振り返り、少し進んでは振り返り、という奇妙な動作を繰り返した。


 不思議に思ったガイは、梨紗について行くと、部屋の隅に両手で抱えられるほどのネズミの山があった。


 それを見たガイは目を擦ると、再びネズミの山を見た。



「全部ネズミ……なのか?」



 ガイは、ネズミが予想以上にたくさんいることに驚き、さらに朝一番でネズミの山を見ることで精神的ダメージを受けたのだった。



(ネズミ獲ったよ! ほめて!)



 そんなガイの気持ちは知らない梨紗は、ゴロゴロと喉を鳴らしながらガイの足に頭を擦り付けた。


 ガイは得意げな梨紗に気づくと、苦笑して



「ネズミを獲ってくれてありがとう。」



 そう言って、梨紗の頭をしっかり撫でた。



(ご褒美をやらないとな。)



 ガイは、梨紗と一緒に台所まで降りると、パンくずを浸したミルクとシチューの残り(肉入り)をそれぞれ器によそぎ、梨紗の前に置いた。



(やった! いつもより豪華だ!)



 梨紗は目を輝かせてご飯を見た。

 そんなごはんも梨紗によってあっという間に平らげられ、いつものように器がピカピカになった。


 

(それにしても、なんの肉だったんだろう? ドラゴンの肉だったりして)



 梨紗は、このファンタジーな世界に思いを馳せながら、受付カウンターで二度寝をするのだった。

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