第5話 ご飯を求めて
カウンターに上がった梨紗はしっぽをぴんと立てると、カレンの左手に擦り寄って頭をぐりぐりした。
「あ、猫だ。かわいいな〜」
カレンは目を細めてそっと梨紗の鼻に手を近づけ、優しく梨紗の頭を撫でた。
(ごはん! くれるかな!)
期待に目を輝かせる梨紗はさておき、カレンは名残惜しそうにしながらも梨紗から手を離し、次にやってきた冒険者の人と会話するのだった。
(そっか、仕事があるからかまってもらえないのか。残念だなぁ)
梨紗はご飯をもらうのを諦め、他のところでごはんを探すことを決意した。
☆★☆
(お腹すいた……)
あれから色々な所をさまよったものの、冒険者は宿のチェックアウトや依頼内容の確認、住民は屋台の仕込み作業や朝の身支度など忙しそうに働いており、梨紗はごはんを食べることができないでいた。
(もう自分でごはん探すしかないな。よし! 獲物を探そう!)
梨紗はとりあえず難易度の高い鳥以外の獲物を探そうと、住宅街の方に歩いて行った。
住宅地の路地裏を歩いていると、目の前をスッとネズミが横切って行った。
腹ペコだった梨紗はあまり深く考えずに真顔でネズミを追いかけた。すると、ネズミは素早くUターンして、一軒の宿屋に入って行った。
『……!!』
梨紗はジャンプして宿の中に飛び込むと、すごい勢いで受付の裏にネズミを追い詰めた。
その時、どこからか美味しそうな匂いが漂ってきた。
梨紗はごくりと唾を飲み込んだ。
そろり……そろり……。
一歩ずつ、ゆっくり慎重に進み
じり……じり……。
ネズミを追い詰め
……今だ!
ネズミが少し気を緩ませた瞬間、飛びかかってネズミを捕獲するのだった。
☆★☆
梨紗がネズミを発見した頃、宿の店主ガイは朝食の仕込みをしていた。
「くそっ、また食われてやがる」
籠からジャガイモを取り出すと、少し齧られているのが分かる。
毎日、夜から朝にかけてネズミが食料をあさっているのだ。
ネズミがかじった部分は切り落として使っているが、材料が少し無駄になることがもったいなかった。
「大切な野菜達が……」
ガイは猫にネズミの駆除を頼みたかったが、この宿屋の来客に薬草を持ち込む冒険者がいる為、強烈な匂いを嫌う猫が長く居ついてくれないことが悩みだった。
いつも通り朝食を作り、水をくもうとガイは台所を出た所で、ネズミをくわえるキジトラ猫(梨紗)が足元で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます