サヨナラ マサ

それから、マサはアイドルグループを去った。

結局私は何もできなかった。


ダンゴムシのように落ち込むマサ。カニのようにスロウな横歩きで音も立てず飲み物をとるマサ。ワークショップの続きなんかじゃなく、週刊誌の人間にびくついて物音を立てないように生活している。スマホが鳴るのにも恐怖感じるみたいで私はなんども気を失った。(ただの充電切れ)


女性監督からの連絡はもちろんない。ゴシップチャンネルを見て、恋は、軽蔑に変わったのだろう。雨も夜更け過ぎに雪へと変わる感じかしら。



そんな中でも、声をかけてくれる人たちもいた。マサを心配してくれる人たち。男女関係なく、なんの損得感情もなく、優しい言葉や差し入れをくれる人たち。その中には、あの「ミキちゃん」だっていた。世の中捨てたもんじゃない。マサは少しずつ顔をあげるようになった。


結局、マサは芸能界を引退して、別の道を模索している。勉強をやり直して、大学に入ろうとしているようだ。


女の子に真剣に恋できないのは、母親の影響だった。菓子パンを与えられ放置された、毒親育ちのマサ。母親の恋人からの暴力や誕生日すら祝ってもらえない環境。


「女は信用できない。いつか自分は捨てられる・・・」そう思っていたに違いない。でもそんな連鎖は断ち切らないといけない。


これからたくさん勉強すれば、きっと見方が変わる。マサ考えているような女ばかりではない。


もう、私が見守るのも終わりかなと、充電器で眠りについた。水に濡れてないが、水滴が出た。マサの髪の水滴なんかじゃなかった。これは、私の涙。


ママに会いたい。

わたしのことを考えてくれる大切な人。

泣きながら、深い深い眠りについた。




「真帆!!」

ママの声で目がさめた。私は、気を失っていただけなのか?こんな長い時間?


「いつまで寝てんの!!服のままで!!」


ああ。日常が戻ってきた。私はママを抱きしめる。

「やだ、何!?」と言いながら嬉しそうなママ。


その後スマホで確認したところ、マサは本当に芸能界を引退していた。


白須真帆。名前にスマホが入っている。この魔法マホウ忘れない。



マサ、魔法なんてないんだよ。私も頑張るよ。スマホでも恋してたなんて、誰にも言えないよね。うん。もう転生したいなんて、言わないよ絶対。

あ、わたし最初からしないなんて言ってなかったわ笑。




わたしは自分のスマホを握り締める。

何か押したのか急にバイブレーションで震える。まさか。


まさかだよね笑。

誰かこの中にいる訳ないよね?



そう思いつつ、大切にスマホを充電器に差し込んだ。


(終)

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わたしっ推しのスマホに転生しました!! だら子 @darako

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