第35話 エピローグ③
カフェテリアでの一件から一週間が過ぎた。
あの後、鮎美たちのグループが教室に押し掛けてきて、「ごめんね、ちょっとした冗談だったの」と謝ってきた。まったくわからない。
アレだけ敵対的な事をしでかしておいて「ごめんね」で済むと思っているのか? 理解不能の行動で、プライドの高い鮎美らしくもない。
ただ、鮎美たちの態度は平身低頭だったので、まあそれならそれでよいかと水に流した。ついでに、舞依たちの為に、カフェテリアでかなぐり捨てた仮面をもう一度被り直すことにした。
さすがにあの時は感情に任せるままに言葉を発して、そのことに関する後悔は微塵もないが、後から思い返してみると流石にやりすぎた感があると思っていた。鮎美たちに攻撃されなくなった事は良いことなのだが、俺の咆哮のせいで学園の生徒たちに陰口を叩かれるのは、俺はともかく舞依たちには申し訳ない。
だから学園内では『仮面リア充――再』という穏やかキャラとして二度目のデビューをすることにしたのだ。
そして日常が戻ってきた。
朝、舞依のタワーマンションに迎えに行く。俺の家からは港南中央駅の反対側になるが、さしたる手間でもない。
待ち合わせの時間には、日奈もユリカも、もう来ている。
舞依がエントランスから出てきた。「いきましょ」と俺たちの声を掛けて、学園へ向かい始める。
中央駅を抜けて国道沿いを進み、緑豊かな中央公園脇のスロープを丘上の校舎に向かって進む。
なんという事もない会話を交わしながらゆっくりと上ってゆく。
「舞依に『友達』が出来るとは想像してもいなかったな」
俺がぽつりとつぶやくと、
「『友達』はできたから……今後の目標は『彼氏』かな?」
舞依が俺にちらと目線を走らせる。なんとなく意味深なものを感じた俺だったが、俺が反応する前に日奈が言葉を差し挟んできた。
「もう時効だから言うけど。優斗君が鮎美たちと対決したの、感動して。私もちょっと『彼氏』ってものに憧れるようになったんだ」
こちらも、ちらっと俺を見る?
何故だ? と胸中でつぶやくが当然のごとく答えは返ってこない。
そののち、舞依と日奈が互いに視線を絡ませて……二人共相手の何かを理解したという面持ちで表情を強張らせる。
「舞依さんは『彼氏』なんて作っちゃダメです!」
ユリカが突っ込んできたが……そのままの流れで五人、通学路を進む。
もう丘の上に立つ校舎が見えている。
見上げると、どこまでも青い空が広がっているのだった。
――――――――
お付き合い、
ありがとうございました。
m(_ _)m。
仮面リア充とザンネン氷姫~氷姫とか呼ばれている学年一の美少女が実はポンコツで、俺がリア充に育ててやることになってしまった~ 月白由紀人 @yukito_tukishiro
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