第29話 鮎美と陽キャグループ

 俺たちがワイワイやっているときと同時刻。


 鮎美と陽キャグループも友達同盟内のトークルームで今日起きたことに対する報告会を行っていた。


 鮎美がカースト頂点に立つグループ内で、最近、氷姫たちとグループ交際をしている日奈が悪目立ちをしていた。というか、鮎美たちのカースト秩序を乱して勝手に行動している。それに対する陽キャグループへの言い訳、フォローもない。正直、鮎美はそれが気に入らなかった。


 日奈は陽キャ女子としては男女問わず人気もあり、立ち位置を確保している。ヘイトがたまっているからと言って、おいそれと攻撃するのは鮎美たちにもリスクがある。


 日奈と一緒にいる優斗は……日和見のヘラヘラ男子だからいいとして。氷姫を神聖視する男子も一定以上いる。逆に、氷姫は女子連中には評判が悪い。過去、アタックをした男子生徒をことごとく振りまくっていたのが災いしている。自業自得だろうと鮎美は思っている。


 一年生の森島ユリカ。一部のロリ男子に人気だが、氷姫と同じく女子には好かれていない。


 やり方だろうと思う。日奈たちが陽キャグループから排除されたら、それにあえて逆らう王子様的な生徒はいないだろう。皆、火中の栗は拾いたくないものだ。


 鮎美は、友達同盟のメッセのやり取りを始める。





アユっち:そうなんだ。氷姫とそんなことがあったんだ


ともみっち:そう。氷姫って前から気に入らなかったけど、最近調子こいてない?


サオリ:そうだよね。ヒナっち……日奈もあっち側について……


アユっち:日奈、最近調子乗ってるよね?


エリ:アユっちの言う通りだよね


ともみっち:マジ〆ない?


サオリ:ちょっと追いコむ?


エリ:こむこむ!


アユっち:じゃあ明日の昼間にカフェテリアに集合。日奈たちもいるだろうから。男子連中にも声かけとくから


ともみっち:オケオケ


サオリ:OK


エリ:桶桶





 ベッドに横になりながら明日の場面を考える。こういうことは根回しが大切なのだ。思いながら、複数人にメッセージを送る。


 日奈がどう出るか?


 まあどう出ようが、勝負は今の時点で既についている。日奈が沈むのは必然なのだ。勝手気ままにやるからそうなるのだ。鮎美でさえ、いつ足元をすくわれるかわからないと思いながら、陽キャの男子女子の顔色を見ながらグループの運営を行っている。グループの秩序を乱した日奈が悪いのだ。


 ざあぁ、と思う。悪い気分じゃない。他人を沈めるのは、出る杭を集団で打つのは、いつでも気分がいい物なのだ。


 ほくそえみながら、鮎美は口端を吊り上げる。日奈の慌てぶりを楽しみにしながら、今夜は気分よく眠ろうと思う北条鮎美の夜であった。

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