第220話 神の世界の借金って、神気の貸し借りのことだったんだねー
正直、いきなりイヌ耳幼女神――リスリジェアスにオンナノコをぺろぺろされるとは思わなかった。後日彼女曰く、芳醇な神気と魔力香が最高だったとのこと。
まあ、うん。
よもや神族にまで私の体臭を好む者が出てくるとはね……。
ぺろぺろ好きですか。そうですか。でもそろそろやめてもらえません?
あなた、女神なのに私の淫魔特性が感染しても知らないよ?
愛するマリー、セラーナたちメイド隊、ミーナちゃん、アーカードちゃん。
現在、私の淫魔特性が感染確認されているメンバーは以上の通り。
たぶん私とちゅっちゅして淫魔特性が感染していないのは
陛下は夢魔だからね。夢魔と淫魔は呼び方が違うだけで根本は同じ種族だもの。
というか犬ってさ、人の股間とか大好きだよね。スカートの中に顔を突っ込んできてふんふん嗅いで、ときには内股をぺろぺろ舐めたりするし。あれってなんで?
「孫姫さま、どうか、どうか……寛大なお心を……ぺろぺろ……!」
「んっ、ふっ、あっ……そ、そろそろわんわんみたいな真似、やめるにゃー!」
「この世界に酷いコトしないと、や、約束してくださいませっ。ぺろぺろ! わ、私はこれでもこの星を預かる女神。お約束を孫姫さまより拝領しなければならない身なのです! ぺろぺろ! いい匂い! やみつき! ぺろぺろ、ぺろりんこ!」
「にゃ!? こ、こいつ……んんっ、上手いにゅ! 舌遣いがただ者ではにゃい!」
「せ、先輩とも、よくこういうことをしていましたので! ぺろぺろ!」
「うにゅ……わんわんは百合っ子にゃし?」
「そうです、ぺろぺろ!」
「みゅっ、みゅっ、緩急テクが凄いにゅっ。……あ、愛していたにゃし?」
「わからないです! でも尊敬していました! ぺろぺろぺろりんちょ!」
「……にゃあを恨んでる?」
「わからないです! 天帝ルミナスグローリーを下して300以上の世界を奪い取るお方に恨みなど抱くだけで身体が震えます! おしっこ漏れそうです! それよりぺろぺろが止まらないです! なんでこんないい匂いなんですかぺろぺろ!?」
「みゅ……っ、も、もういいから止めるにゃー! ぼるてーじが上がるにゅ!!」
ふと我に返る。レミリアードが物欲しそうな目でこちらを見ている。
執事長の老婆――吸血鬼化して少女の姿に若返った彼女は静かに瞑目している。
アサシンメイドたちはドン引きしている。まあね、わかる。私の世界観をフィルターにかけると、いきなり男が男のアレをお口でソレしてるのと同じだから。
そんな中、一番狼狽しているのは――
もちろんレミリアードの兄、聖職者と思しきブレナス青年だった。
「ど、どうなっているの……?」
「……簡単に経緯を教えてあげよっか?」
「くっ……妹をかどわかした得体の知れない幼女にこのような屈辱を……」
「聞きたくないならもう教えないもんね」
「お、教えなさい!」
「まあー、態度がアレだけど、にゃあの世界の性格キツめの女だと思えば」
「何を言っているの!? 私は男よ!」
いや、知ってるし。気合の入ったオカマちゃんにしか見えないし。
ここだけの話、お前の見た目ってさー。
某北斗な拳の妖星ユダにわりとそっくりだよ。性格はどうなのか知らないけど。
どうせアレなのでしょ? クンフーモンク的な聖職者なんでしょ?
電マを両手に持たせて悪魔神官ごっことかさせるわよ!?
「……端的に言うと、女神ドルメシアスは一万年前ににゃあが食い殺した。ちなみににゃあの世界とこの世界では変化の度合いが違うからね。人間概念風に表現すると時間の流れが全然違うとなる。にゃあにとっては数か月前のことになるにゅ」
「……嘘! 嘘よそんなの!」
「ところがどっこい現実にゃし。今ここにいる、わんこな女神リスリジェアスは代理神なのよ。可哀想にね、ホントは獣人神になるのだったのでしょー?」
「前天帝陛下から打診され、その後は身が悶えるほど苦労しましたぺろぺろ……」
「んっ……その前天帝ってルミナスグローリーだよね、リスリジェアス?」
「はい、おっしゃる通りです」
「主が変わっても、天帝一派から離れずに仕えているんだよね?」
「はい。そして私は
「にゃあだよ。お祖母ちゃんの娘と魂的な繫がりのある、いわゆる孫娘だもん」
「わ、わからないわ……」
「コトの始まりは女神ドルメシアスがにゃあを無礼召喚したことにあるにゅ。混乱するのもわかるけど、まずは落ち着いて聞くのにゃ、ブレナス青年くん」
「神が魔族を召喚する時点でおかしいのよ! あなた吸血鬼でしょ!?」
「そうだよ? え? どこかおかしい?」
「すべてがおかしいでしょ!?」
「にゃー?」
狼狽しまくっているレミリアードの兄、ブレナスはオネエっぽいくねくねした動作で頭を抱えた。率直に、その所作がなんかもう堪らなく気持ち悪い。
しかし落ち着いて思い出してみよう。この世界は、貞操観念逆転世界なのだと。
つまりこの動きは女性のそれだと思えば……やっぱり気持ち悪いや。ゴメンね。
私はこみ上げてくる吐き気を呑み込みつつ、未だぺろぺろしようとするリスリジェアスもなんとかやめさせ――とある球体を空間収納から取り出して見せた。
「見るにゃ。これは神器。名を、アストロスフィア。この神秘の球体はね、宇宙そのものにゃの。たいていの場合は主神クラスが持っているのだけど……にゃあはこのスフィア内にある無数の星系からハビタブルゾーンに適した星を選んで被造物を住まわせ、発展を見守り、ときに助言を、ときには奇蹟を与えてやっていたの」
「……!? あなたは単なる魔族ではなく、創造の魔神……なのですか!?」
「それはどーなんだろうね、ブレナス青年くん。行動だけを鑑みれば正しく神さまではあるけれどね。……にゃあの基本は太祖の吸血鬼だよ。と同時に魂的な繫がりで現天帝メガルティナの孫娘でもある。でも生まれた世界では主神の使徒っぽいこともしていたり、元公爵家令嬢で養子入りした魔族帝国の皇太女だったりもするよ」
「どうなっているのですか、あなたの経緯は……っ!? 正体不明過ぎる……!?」
「混沌だよ。宇宙の外に無限に広がる真空。にゃあは混沌の顕現体にゃし!」
「やはりそうなのですね!」
ガバッと立ち上がるリスリジェアス。こちらに抱きついてくる。
イヌ耳が可愛い。モフりたい。抱きつかれて当然ながら、顔が近い。超近い。
キミ、その口で私のアレをぺろぺろしてたんだから、私とキスとか絶対ダメだよ。
わんこってさ、局部を舐めた直後の口で人の顔を舐めようとしてくるからね。
「孫姫さまは、偉大なる外なる神であらせられると!」
「いやまあ、それはどうでもいいとして」
「大切なことですよ! もっとも尊き三大アウターゴッズの一柱なんですよ!?」
「いーのいーの。ともかくにゃあは人類を創造し、適切な星に住まわせ、その発展を見守ったり助言を与えたりと身を入れた日々を送っていたの。何と言っても始まりが肝心だからね。そんな折、突如として召喚を受けて、格下の神に私の惑星のために尽くせとか寝言めいた命令されたらどう思うって話。何なのお前、ってなるよね」
「そ、それはそうですが……」
「もちろんキレるのにも段階があるにゃ。これまでにゃあは7回、元世界の主神のとある意図によってはるか東方の国に飛ばされたり、滅びかけの魔族の国に飛ばされたり、童話の世界に飛ばされたりと、そういう『転移』を受けていたにゅ。場合によっては転移先の人物の『召喚』に応じる『転移』だったりもしたっけー」
「た、大変ですね……?」
「一年間という……違うにゃし、半年間という短いスパンで次々転移するものだから慌ただしくて。にゃあは転移も召喚も懲り懲りなの。さっきも言ったように神による転移は7回行なわれた。以後、神による転移はなくなった。だけど今度は異世界の神やら王家やらの召喚を受けるようになった。だから心に決めた。次、にゃあを召喚したやつはただじゃおかないと。……それが女神ドルメシアスだったわけ」
「……先輩、運が悪いですぅ」
「で、暴食権能で美味しく頂いたのち、お礼参りに前天帝ルミナスグローリーが配下の神族やその他諸々の神兵を率いてにゃあの世界に侵攻してきたので……」
「……やっちゃったと」
「にゃーにゃー砲で、全部、無に還してあげたにゅ! 異世界の軍勢を相手世界に許可なく入れるとはこれすなわち宣戦布告にゅ! なので全力で迎撃したの!」
「ガクガクブルブル……」
「ついでにヤツらが持っていた300の世界も奪ってやったし! でも管理がめんどいのでお祖母ちゃんに丸投げしたにゃ! 箱庭は一個あれば十分なの!」
「は、箱庭。宇宙丸ごとを箱庭扱い」
「というわけでブレナス青年くん。要するににゃあは強制転移(召喚)を何度も強いられていい加減頭に来ているところに、トドメに弱い女神にエラソーに召喚された上で世界を救えとか妄言を吐いてきたので、前から決めていた殺害を実行したのよ」
「も、もう。私、何も言えないわ……」
「あとは、リスリジェアスが上手いことフォローしてくれたみたいだけどねー」
「フォローじゃないですよぉ。突然管理神の後釜に任命されて分からないまま魔の軍勢と必死で戦って、なんとかこの星を維持して、大変だったのですから!」
「お前のレベルは幾つ?」
「当時は100億ですぅ。今は150億ほど……」
「よっわ。そんなので異世界侵略者とよく対抗できたよね」
「ううー。方々の神さまたちから借金をして回ったんです。だから今も自転車操業なんですよぉ! 借金のカタにとこの世界の貞操観念を逆転されたり魔力器官の位置を改変されたり、男の出生率を減らされたりと玩具にされちゃったんですよぉ!」
「にゃー。だからこの世界にはあまりいたくなかったのにゃー」
「ちょっとは悪いと思うなら、せめて、借金返済を手伝ってください!」
「別ににゃあが悪いとは思わないけど、わんこな幼女神を泣かせるのは心が痛むにゅ。……ちなみに借金って、そもそも神々の通貨概念ってどんなのにゃ?」
「神気ですぅ」
「んー。じゃあはい、これね」
「えっ、これって……こ、こ、これってまさか……!?」
テテテッテ、テーテテー!
純粋な↑賢者の↓石ー↑(某のぶよ風だみ声で)。
大きさはちょっと大振りのビー玉くらいの真球形体。
本体は磨いたダイヤの如く限りない透明で、それでいて赤光を発する。
「この星10個分の神気を納めた賢者の石にゃし」
「ひょえ!? 私の数十億年分のお給料なんですけど!?」
「それで足りる? ……というか神さまって給料制だったんだ?」
「90パーセントくらいのおつりが出ます! 厳密には91.358パーセントです!」
「じゃあ残りはこれまでの迷惑料として納めておいてー」
「わんわんっ、わんっ!?」
「ありゃ。リスリジェアスがホントのわんこになっちゃった」
「くぅんくぅん……」
「あーだめ、にゃあのオンナノコ舐めた口でほっぺたぺろぺろはダメ。……んむぐ」
「ちゅっちゅ、ちゅっちゅ。大好き、大好き♪ 外なる神さまだーいすき♪」
「んー! んー!?」
思い切りイヌ耳幼女神にディープなちゅっちゅされてしまった。
知らないぞ、ホントに。私の淫魔特性はたぶん神族にも感染するよ。
「……ぷはあ。ブレナス青年くん」
「は、はい」
「納得した?」
「女神ドルメシアス、いえ、女神リスリジェアスさまがそれで良いとされているようですので……私如きイチ聖職者が口出しすることではございません……」
「それでねー、リスリジェアスちゃんー」
「はい、外なる神さま」
「にゃあの眷族に限ってでいいから、吸血鬼の人間社会での人権を保護してー」
「では、神殿にそのように通達しましょう。破った者は自動的に破門適応にすると」
「神からの破門ってこの世界だとどういう扱いになるのかな?」
「奴隷落ちと同じ扱いですねー」
「にゃるほど。眷族判別法も神殿側にあとで作って送っておくにゃ」
「その……や、やりすぎなのでは?」
「ブレナス青年くん。にゃあはこのためにリスリジェアスを呼んだようなものなの」
「は、はあ……」
「ふみゅ、何か迷いのある表情だね」
「あの……私の信仰の行き先はどうすればいいのでしょうか……?」
「簡単にゃー。お前がリスリジェアスの真の信仰者、その第一人者になるね」
「スキルとステータス。諸々を聖者に格上げしましょう」
「うん、いいね」
「はい♪ 私の初めての信者です♪」
「あ、あの、それこそやりすぎなのでは……?」
「その代わり口外したらダメよ。表向きはこれまで通り女神ドルメシアスの聖職者として行動する。だってリスリジェアスもそうしているから。わかるにゅ?」
「それはもちろん……なのですが……」
「細かいことはいいの。立派なおちんちんついているんでしょ?」
「お、男にそういう言い方はどうかと思うわ!?」
気合の入ったオカマちゃんみたいでやっぱり気持ち悪い。これが異文化交流か。
いずれにせよ、一件落着ということで良しとする。
あえて幼女姿で侮らせ、これを口実にリスリジェアスを呼んだ甲斐があった。
ふと、放置状態になっていたレミリアードと目が合った。
雨の夜に捨てられた子猫みたいな目になっていた。
おいでおいでと呼び寄せる。
特別だからねと、ちょっとだけマウストゥマウスなキスをする――と。
ぎゅんと私を抱きしめた彼女は、めっちゃディープにちゅっちゅしてきた。
ドン引きする周囲のアサシンメイドたち。
そりゃあそうだ。貞操観念逆転世界で言えば、
あ、でも少なからず顔を赤らめて股間をモジモジしている娘たちもいる。
それもそうね、女の方が男の4倍多いもの。百合っ子性癖の子も増えるよね。
……まあいいや。とりあえずバトランド辺境伯家は制圧したとみていいだろう。
いや、あと一人レミリアードに兄弟がいたんだっけ。
うーん、まあ、なるようになるでしょ。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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