話外 ホ・ワイト・デー(例によって一日遅れ)
大盛況で終わったバレンタインチョコイベントから一ヶ月。
次なるイベントは――
もちろん、ホワイトデーで決まりだね。
定義づけっぽいこと、やってみる?
ホワイトデーとは、バレンタインデーに貰ったチョコのお返しとして、ホワイトチョコレート、キャンデー、マシュマロなどを贈る習慣のこと。
なお、ホワイトデーの発祥は日本。
貰ったらお返しする。2倍返しが基本。お菓子屋のわかりやすい策謀なのは言うまでもない。が、それを含めて楽しむのがイベント好きの日本人の美点だった。
義理すら貰えなかった人(主に男性)にとっては
……。
さて、さて。
先月、私はバレンタインデーを称して親しき間柄の人たちにチョコを振る舞った。
恋愛とかそういうのは関係なしに、親睦会みたいな意味合いで、だった。
本来ならホワイトデーでは私はお返しを貰う権利が発生する……のだけど。
彼らはもちろんバレンタインデーの意味など知らず、ならば1か月後のホワイトデーなども知る由もない。そもそも私はお返しなど期待していない。
第一、ヴァン・アレンタイの日などとトンチキな誤解のまま周知されてしまっている。なので気持ち的にはもうどうにでもなれーと投げ槍気味であった。
「うみゃーい♪」
「うむ! サクサクと美味い!」
私たち母娘は強欲権能で取り寄せた北海道限定菓子『白いブラックサンダー』をサクサクと食べていた。余談だが『ピンクなブラックサンダー』などもある。
ネーミングの矛盾は気にしてはならない。美味しければ何も問題ない。
サクサク食べるのである。サクサク。
「娘よ」
「にゃー?」
「ホワイトデーはせぬのか?」
「……
「そりゃあアレよ。
「みゅー」
「
「ホワイトデーは先月チョコを食べた人がにゃあにお返しする
「たーべーたーいー。たーべーたーいー。たーべーたーいー」
「うみゅー。
いつもの如くロリ化している
場所は私の第二私室。魔帝宮最下階の黄竜の間。つまりコントロールルーム。
設置されたキングサイズベッドの、そのまた上に設置された二人用の棺。
私とマリーの、愛の巣。
でも今はマリーは所用で少しお出かけ中。私はお留守番。じきに帰ってくるよ。
代わりに
まあ……マリーと陛下とちゅっちゅ3Pとか、何度もしているからね……。
それはともかく。
魔帝宮は宮殿そのものが巨大ダンジョンであり、私室は有事の際に攻め入って来た勇者を迎え撃つ最終防衛ライン、魔帝の間の更に奥に位置している。
攻略推奨レベル、3兆。
人類種には手の施しようのないレベル。なんせ惑星と同レベルだから。
でも、それでも。どんな手を使ってでも魔帝宮殿に忍び入るのが人類というもの。
決して慢心してはならない。人はいざとなればなんでもする。必要なら敵の尻穴ですら舐める。それが、人。ゆえ、相手取る場合は絶対に手を抜いてはならない。
……ふう。なぜか熱を入れて語ってしまった。
人は弱いからこそ、強い――ここ、テストに出るからね。
「にゃあ。じゃあねー、内々で、ホワイトデーパーティーするー?」
「それは良い考えじゃのう」
「わかったのー」
「しよう」
「しよう」
そういうことになった……のは、いいのだけどさ。
実のところ……。
ホワイトチョコのお菓子バリエーションって、私、あまり知らないのよね。
とりあえず生チョコは作るでしょ?
それから……うーん?
ホワイトチョコを練り込んだチーズケーキとか?
ホワイトチョコを使ったクッキーとか?
ホワイトチョコフォンデュは味がしつこそうなので止めるとして。
生チョコよりも柔らかく作ってプリンソースにしてみたり?
ホワイトガトーショコラなんかもいいかもね?
あとは……チョコそのものにイチゴフレーバーをつけてみたり?
苺大福のあんこ部分を生チョコ仕立てで作ってみたり?
生クリーム鬼たっぷりでトロリと溶かして、アイスにかけてみたり?
思うさままに――
色々と、調理室で作ってみました。
「これは美味そうだ。ふむ、ホワイトガトーショコラ。どれどれ……」
「つまみ食いはダメにゃー」
「と言われると、余計に食いたくなる。ホワチャーッ! パクンチョ!」
「みゅー! 食べちゃだめなの!」
「うまし!」
「もー。どうせあとで嫌ってほど食べられるのにー」
「んふふ、これが良いのじゃよー」
見た目はロリ同士の他愛ないじゃれ合い。
だけど知ってるかい。
私たち、これで親子なのよ。義理の、だけどね。
私が知っているだけで下は10歳女児、上は30代熟女まである。
その気になればもっと範囲を広げられるはずだった。
ちなみに私は、基本的に3歳幼女から15歳少女までだった。
「あ、いたいた。ただいま帰りました、お義母さま、そしてカミラ。調理室にいるってセラーナから聞いたわ。美味しいものを作っているって?」
「マリー。良いときに帰ってきたにゅ! そろそろホワイトデーパーティするよ!」
ホワイトデーパーティのメンバーは少なくて良い。
私と、
あとはセラーナたち専属お世話メイド隊に下賜する分があれば良い。
そう思っていたことも、ありました……。
「どうしてこうなった」
いやね、ちょーっと嫌な予感がしたものだから、随分と多めに作っていたのよね。
それなのにさー。
前回のバレンタインでやってきたメンバーが、そのまま……うん、そゆこと。
私のホントのパパ氏とママ氏、カインお兄ちゃん。
うん、わかる。むしろ来てくれて嬉しい。
私の血脈上の子ども、つまりアーカードちゃんやミーナちゃん。
まあ。わかる。私の血脈上の娘――要するに眷族だからね。
ここからは別扱い。
まだまだ他に、ド・ケスベイ淫魔侯爵と彼女の部下たち。
デスメトゥ死霊公爵とアーデルハイド前教皇夫婦、彼らの愉快な仲間たち。
アモル・アモーレ侯爵とワイズロード公爵家のルナマリア嬢。
アーカードちゃんパパのドラクロワ伯爵。
空気読めYO!! にゃー!! 身内の身内だけで楽しむつもりなのに!!
……ちゃっかりメガルティナお祖母ちゃんまで混じってるし。
どうして来るの、キミたち。家族や眷族、お祖母ちゃんは例外として。
ふと、アモル・アモール侯爵と目があった。
ニチャア、と彼女は笑みを浮かべた。ぞわっと背中が粟立った。
「おにょれ」
「うん? どうしたの、カミラ」
「元凶に気づいちゃったの」
「そうなんだ……?」
理屈とか理論とか関係なしに、気づいてしまった。
そういえばアモルん侯爵って転生者だったわ。となればもちろんホワイトデーイベントも知っているわけで。彼女から伝播して情報が行き渡ったのかもしれない。
みゅっふー!!
あとで前立腺パンチでもアモルん侯爵にお見舞いしてやろう。
それはともかく、プランBを発動させなければ。
――ドム、プランBはなんだ?
――ねえよそんなもん。
とはならず。ただし、ホワイトデーの趣旨から乖離しちゃうのは覚悟する。
甘い物を食べたら、辛い物も食べたくなるんだよねー。
たとえばペッパーの利いたダブルベーコンチーズバーガーとかね。
ついでだからてりやきワッパーも出しておくかなー。
チリチーズ(ポテト)フライなんかもいいよね。意外と辛味が優しいの。
さり気なく、翼を与えるとされるエナジードリンクなんかも置いてみたり……。
あと、ビールとかもね、ピッチャーに入れて置いておく。
そう、私ってバーキン派なのよ。ビールも頼めるので大好きでした。
なのでちょっと、いやだいぶ強引に、強欲の権能を使って取り寄せました……。
店のレジに金貨を送りつけておいたから、たぶん大丈夫よね?
結果。
「「「「「「美味い!」」」」」」
甘い物ばかりで舌が飽きてきたところにピリ辛の
みんな、バカウケ。シュプレヒコール。
もりもり食べまくり、レッドブル呑みまくり。テンション上がりまくり。
ビールも呑んで、その舌のままホワイトチョコ菓子をパクリ。
えーっ、気持ち悪い。
とか思うでしょ。でもうっすらと思い出すのだった。
前世の私、ビール呑みながらケーキとか普通に食べていたわ。
なのでヘーキヘーキ。
「にゃあ……みんなゴキゲンだからこれでいいかぁー」
「うむ。寛容な心は支配者には必須だな」
「
「もちろんである。んふふふ……」
ホワイトチョコをロリっ娘が三人で食べるパーティだったのに。
さてそれでは、この集まりは一体何のパーティなのか。
来客はみんな満足していたので、良いか悪いかの二択なら良い一択だけど。
ただね、度し難く許容できないコトもあって……。
ホワイトデーの意味がね……。
死霊公爵の一番側近にホウ・レンソウ氏なるワイトがいるのだそう。
その人――人なのかどうかはともかく、そのホウ氏の命日が今日だったので。
ホ・ワイト・デー。
ということになっていた。
……はあ?
さすがにそれはないわ。というか駄洒落かYO!?
なお、お出かけしていたマリーは――
実は彼女のいた世界でも似たようなイベントがあるそうで。
そう、作ってくれていたのだ。
パーティ中に、コッソリと手作りチョコを、私にくれましたとさ。
マリー、この世の誰よりも、愛してる!!
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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