第208話 全速力で。止まったら死ぬからね!
鈴鹿サーキットベースの私の
「よっしゃああああっ! バリリンの限界を超えて直線番長じゃあああっ!!!」
「負けぬぞおおおおおっ!!」
「うふふっ。粒の細かいこの天使の咆哮エンジンサウンド、最高ねっ!」
ギュンギュンアクセル全開!
なお、会話はインカムで行われています。
まず、スタートグリッドのある表ストレートコースの距離が約2キロあるのだった。ここではアクセル全開全速前進直線番長を楽しむのがセオリーだろう。
リミッターカットしていないホーネット250なら速度メーター読みで160キロくらいは出る。外部からの速度測定ならマイナス10キロで実質150キロくらい。
基本的にバイクの速度メーターはハッピーメーターなのである。
次いで前期型バリオスなら170キロ近くまで出る。ハッピーメーターを差し引いても160キロは出るはず。祖母の珍走バリオスはそこまで出ないかもだけど。
わからないのが世界樹の乗るカタナ250。
たぶんリミッターカットしていると思うのであるいは180キロくらい出すかも。スズ菌感染の変態が乗るのでそれくらいの速度は出すだろうと勝手に予想。
でも坂道が結構あるからね、私が作ったこのコースは! 立体交叉の三次元レースコース! 最高速度重視の貧弱バイクでどこまで張り合えるか見ものだね。
「くっそ。トルクを犠牲にした分、そなたのカタナは速いのう!?」
「これで誰にも小刀などと呼ばせまいて!」
「そろそろ第1カーブよ。気をつけてね」
コース解説に戻ろう。
直線番長ストレートを抜けると右に大きく第1カーブ。基本的にレースコースは時計回りとなる。なぜなのか理由は知らない。それはそういうものらしい。
ここでの注意点は。
絶対に速度を落とすな、死ぬぞ。
なのである。
「うごおおおおっ、なんつー傾斜角度のカーブなのじゃ!?」
「ヤバすぎて大草原!」
「高速でカーブできて楽しいでしょう?」
なぜってカーブのコース傾斜角が75度あるため、速度を殺さず遠心力を利用してIN − OUTしないと曲がりきれずに失速からのちゅどーんしかねないためだった。
いわんや、暇を飽かした神々が作るエクストリームコースなのである。
まあ神は神でも外なる神のコースだけど。
にゃはっ。みゅふふ。にゃあ!
にゃんにゃんニャル子、にゃるらとてぷ。
真空混沌虚無。楽しいこと大好きなの。
「S字カーブはハングオン!」
「わらわのバリリンもハングオン!」
「アメリカンハンドルでふんぞり返って乗ってるのに、おばあちゃん凄い!」
「わははははっ」
「尻を移動、重心移動膝摺り余裕よ!」
そしてにゃあにゃあっとS字カーブ。ここの縮尺は鈴鹿サーキットそのまま。これを抜けたら逆バンクカーブ&15パーセント角度ダウン。逆バンク中間点で折り返しのアップコースに変貌。悪魔もドン引きのダウン&アップとなる。
「この逆バンクダウンカーブが楽しい!」
「怖えええええっ!?」
「うぐおおおおお!?」
「速度落としたら速攻でちゅどーんよ!」
「ちょっと鬼コース過ぎんかっ!?」
「同意!!」
「何言ってるの、まだ始まったばかりよ?」
変わらず、速度は殺してはいけない。
これを越えたら、アレが来る。
アクセルは全開のまま! 今度は20パーセントダウンが500メートル続いてからの遠心力ロール。ちなみにここだけ道路標識で140キロ以上速度を出せと指示が入る。
でないと、ちゅどーん。
芋を引いて速度を落とすと、ちゅどーん。
「うおおおいっ!? カミラよ!? ジェットコースターですかねこれぇ!?」
「コ、コースが一回転しているぞ!?」
「140キロオーバーをキープ! 覚悟を決めてアクセル全開よ!」
「「ぎょえあああああっ!?」」
これを越えたらオリジナル左螺旋アップコースとなる。厳密には4周半周、抜けて立体交叉。続けざまにデグナーカーブが牙を剥く。一瞬たりとも気は抜けない。
ちなみにこれ、まだ全行程の3分の1。
「キンタマが縮むわ! わらわにはないけど! 孫の作るコースが半端ない!」
「パない! タマひゅん! ワタシもキンタマはないけど!」
「命は投げ捨てるもの」
「北斗の拳アーケードゲームネタやめい!」
「ワタシは死にましぇーん!」
「百一回も女にプロポーズして失敗してたらホモになってそうなものじゃが」
「ねえそれ、攻めなの? 受けなの?」
「いやそれ俳優さんに失礼だからやめよ!」
こんな幼女ばかりでも神さまである。
恐怖は感じても、思考には余裕がある。
え? 立ちゴケは思考と感情を分離できないのかって?
うーん。大事な愛馬が傷ついたら誰だってショックでしょう? それはそれ、よ!
緩やかにアップコースを行く。
この先にあるのは。
鈴鹿サーキット名物のNISSINヘアピンカーブであった。
このヘアピンをそのまま私のコースに起用している。減速を決めて、切り抜ける。
ギュンギュンと3者は行く。
トップ。カタナ250を駆る世界樹。
2番手。珍走バリオスを駆る祖母。
最後尾。ホーネット250を駆る私。
お祖母ちゃん、ここでゴッドファーザーをテーマをクラクションで鳴らす。
たぶん意味はない。
思うに、コールの代わりであろう。
コールとは珍走団の十八番であるフォンフォンかき鳴らす空ぶかしのことである。
夜のバイパス道とかでたまに聞いたことあるでしょう? アレです。
ヘアピンを抜けたこの先、1500メートルの超緩やかな時計回りカーブ。
「ヒャッハー!」
「ふおおおおおっ!」
「再びアクセル全開よ!」
ここで再加速を促すのにはちゃんと理由がある。1500メートル先にある左スプーンカーブが、また傾斜角75度の超絶高速カーブであるからだ。
250cc4気筒のアクセル全開サウンドは、まるでF1カーのエンジンサウンド。
キィイイイィイイイインッッッ!!!
なのである。
これだけでも4気筒には価値がある。
全力でぶん回せて楽しいのが250cc!!
排ガス規制とかファ◯クなのである。
「あっ、言うの遅れるところだったわ」
「どうしたわが孫、カミラ?」
「意見を聞こう!」
「このスプーンカーブの先ね」
「裏ストレートじゃな?」
「ふむ、表があれば裏もある、と」
「抜けてすぐに車の初心者マークみたいな印字がコース上にあるんだけど」
「……あれかの?」
「あの黄色いマークだな?」
「それを踏むと」
「踏んだら……ぎょええええええっー!?」
「むぎゅああああああーっ!?」
「くうううっ、魔力干渉で、一時的に速度が3倍になるから!」
「ちょ、言うの遅いわあああああーっ!?」
「むびぇげぼらごぽーっ!?」
だって、赤ホネだもの。赤だよ赤。
シャアザクみたいに3倍早くならないと。
ただの直線番長とかつまらないでしょ?
でも超絶直線番長なら面白そうよね?
仮に160キロで走っていたとして、480キロに一気に加速される。普通の人間だと後ろへふっ飛ばされる衝撃が来るも、それを耐えるのが私たちだった。
リニアモーターカーもかくやの3倍加速をウイリー走行で突き抜ける。
脳汁垂れ流しの快感が湧き上がる。なぜってスリルの裏返しは快感だから。
暇を飽かした神々のコースならでは。
ちなみにBGMは『閃光のハサウェイ』EDテーマの、サビ部分でどうぞ。
「かっはっ! キンモチイイィィ!!!」
「ホワアアアアアアアアアーッ!!?」
「たーのしー!!」
脳汁ガンギマリ走行で直線を抜けて段々速度を落としつつ、大きな反時計回りカーブをクリアする。この頃には速度も正規の最高速度あたりに戻っている。
そして、最後の難関。
正式名称……だと思う。
日立オートモティブシステムズシケイン。
減速を目的とした――
S字というよりかクランクみたいな蛇行する道筋のこと。
結構やばめのシェインを油断なく減速して駆け抜ける。このシケインを舐めるとコケるからね。なんせ鈴鹿サーキットの原寸大でここを再現しているから。
ハイサイドには十分気をつけて。
そしてスタートグリッドのある最初の2キロ直線に入るのだった。
当然、アクセルはフルスロットルガン回しである。
……ふむ。
さてさて、1周目は練習みたいなものだったけれど。
うん、そうだよ。
これをあと3周、まわるからね!
基本的にアクセル全開の全速力で。エンジンをぶんまわして行く。
コースの特性上、チキンな走行は却って危ない。
ちゅどーんである。ちゅどーん。
むしろ命は投げ捨てるものである。死ねば助かるのである。
これぞ暇を飽かした神々のレースコース。
「楽しいけど」
「めちゃくちゃキツい!」
「ふふ……」
そうでしょうそうでしょう。
私はある意図を以って変わらず3番手につけている。
余裕
基本的に彼女たちの後方で送り狼をする。
勝負は、3周目最後の裏ストレート。
どうしてって?
実は、隠していたんだけど、私の赤ホネには秘密の装置がついていて……。
ニトロチャージャー。
これを使って最後の3倍加速でゴボウ抜きよ! ふふん、狙っちゃうもんね!
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます