第206話 祖母と孫と世界樹。あとニーハンマルチ。
「見て、見て! こんな感じ? こんな感じ? にゅうーん、にゃあっ!!」
「ん、おお?」
「にゃにゃにゃにゃ……にゃあっ!」
「おー、上手い上手い。竜じゃ。わらわと色違いでそっくりじゃなっ」
「みゅふー♪」
「飛行もできるのかや?」
「もちろんにゃー」
「では、少し飛んでみるか。慌てるでないぞ、最初はそっと飛ぶのじゃよ?」
「うん♪」
私は擬似的に竜化していた。
そして、祖母のメがルティナおばあちゃんと浪漫飛行するのだった。
やり方は簡単。
まず、コウモリ変怪します。そして一万以上の分割コウモリ状態になります。
で、で。
コウモリの一匹一匹を点として、その点をフレームで区分けする感じに竜の外形を整えます。具体的にはポリゴンフレームを構成してテクスチャを貼る要領です。
カラーリングは私の髪の毛や瞳の色でもある深紅でいきます。
いわんや、ディープレッドの竜です。
飛行は私の履くピコピコサンダル魔道具みたいに空間座標指定式で行ってもいいけれど、力翼展開で飛ぶことにします。メリットは超々高速飛行ができます。
なお、空間座標指定式では無慣性航行が可能となります。
そして――
お祖母ちゃんと、一緒に、ランデブー。
ね? 簡単でしょ?
「みゅっふー!」
「カミラは空を飛ぶのも上手いのう」
「こんなこともできるよー!」
祖母の黄金竜を中心にグルグルと螺旋を描いて私は飛行を敢行する。さながらワインオープナーのドリルの如く。ギュンギュン螺旋飛行なのだった。
「トンデモ機動力。本当に上手いのう」
「飛ぶの、たのしーねー♪」
「むっふふ。そうじゃのう、そうじゃのう」
そうやって、星を7周半、飛び回って。
いやあ、楽しかった。
……後日、ある伝説が一つ生まれた。
最強の竜神メガルティナと、孫(としか思えない)竜の仲睦まじい飛行光景を。
彼らは恐るべき神気を発しながら世界の各地を舞い飛んだ。ある者は平伏し、ある者は祈り跪いた。しかし同時に、深紅の孫竜からと思われる『楽しい、嬉しい』温かな感情もヒシヒシと感じられて、畏敬を感じながらも良き人も悪しき人も、若い人も老いた人も、あらゆる種族が共通で、気持ちがなんとなくホッコリしたという。
さて、と。
息抜きをしたところで征服ゲームを再開しようかな。
最初の1件は妙に義理深いというか忠義の徒の管理神が、前支配者のルミナスグローリーの顔を立ててゴネるものだから身体でわからせる結果に終わった。
が、ソレからの征服ゲームは順調で、支配者変更の旨を通告すると即恭順の意を各惑の星管理神が返答してきたのだった。今後とも宜しくお願いしますと。
上位者の首がすげ変わったぞ。さあ喜べ!
あ、はい。了解です。新支配者様万歳!
みたいな。
こう……表現として正しいかわからないけどお役所仕事的な印象を受けたわ……。
でもね、たまーに、やんちゃな星の管理神もいまして。
その時は物理でぶっ飛ばすわけですよ。
言葉が通じないなら身体に直接教え込むしかない。
千の言葉より一度の暴力。
そしてこういう輩は、上下関係を確立させると意外と忠義者になるもので。
野蛮?
そうかもね。
でも、前世世界でも結局は力こそパワーで他者をねじ伏せていたでしょう?
そう……戦争という形で。
すべからく知的存在に自由意志がある以上、究極的にこういった支配傾向に帰属するのもまた真理。むしろ抵抗してくれたほうが遊べるので望むところというか。
それで、エルフの星なのよ。
108個目の世界――GSXR-750SUZUKI世界のとある惑星のこと。
スズ菌感染者が幸せに暮らしていそうな、鈴ノ木の世界樹を中心とする惑星一国のエルフたちの国であった。……偶然なのかここのエルフ、ファミリーネームがみんな『スズキ』であったと注釈を入れておく。リサ=スズキとか、ロン=スズキとかね。
ただ、世界樹が管理神を務めていたのでなぜ恭順せぬかと問いただしたのが良くなかった。こいつ、変態だったわ。問いかけに問いかけを返してきたので抜粋する。
「ルミナスグローリーは滅んだ。今後はわらわ、メガルティナ・アタナシア・ゴドイルタが主神としてそなたら臣民を支配する。なぜ伏して恭順せぬか!」
「新しき天帝よ。あなたさまは何派か。スズ菌感染者であるか? 答えたもう」
「何じゃ? バイクは男カワサキであろ」
「にゃあは特にこだわりはないにゅ。強いて言うならスーフォアが一番好きなの」
「ホンダのCB400SFか。まあ大抵の教習所では、最初はアレに乗るものじゃし」
「んみゅ」
「きええええええええああああああっ!?」
突如、世界樹が奇声を上げた。
白目を剥いて、大口を開け、微震しながら。
ちょっとしたホラーであった。
「きょええええええええええあああっ!!」
「落ち着くのじゃ世界樹よ」
「ぐぶおば」
撫でる程度にお祖母ちゃんは世界樹を尻尾で軽くぶん殴る。え、殴ってるやんと思った方、祖母が本気で殴ったらこの星が粉砕玉砕大喝采するからねー?
「スズキも悪くはない。比較的安価な割に性能は良いし、デザインも独特で刺さるヤツには刺さる。サイドスタンドがパイプを潰した形状なのは気に入らんが」
「……勝負です。ワタシのスズキ、隼で」
「じゃあわらわはカワサキの NINJA H2 な?」
なんだかよくわからない争いが勃発。
そもそもなんでこの世界にスズキやカワサキのバイクがあるのさ……。
え? 突っ込んじゃだめ? そうなの?
……とりあえずこの争いに私も介入するからね。
「フラッグシップバイクで争うのは値段で殴り合うのと同じにゃ。しかも最初から最高のチューニングがなされているので、自分色にカスタムする楽しみがないにゅ」
「むう……」
「言われてみれば確かに」
「それよりもグレードと排気量を思い切って下げて、自分の好きなようにカスタムしたバイクで勝負したほうが面白くない? それこそまさに愛馬って感じ」
「うむ、カミラは良いことを言う」
「説得力がある」
「世界樹はKATANA250。おばあちゃんはバリオス。にゃあはホーネット250」
「旧来のニーハンマルチで勝負か!」
「面白い。わがKATANAを見よ! 決してKOGATANAとは呼ばせんぞ!」
「みゅ!」
「にしても世界樹よ。そなた、そのデカい図体でどうやって乗るのじゃ?」
「ワタシの分身に運転させる。そも、新しき天帝も竜の姿でどうやって運転を?」
「わらわを舐めるなよ。最強の竜神はもちろん人化くらい余裕じゃよ」
「にゃあも大人モードで参戦なの!」
「「「よろしい、ならば闘争だ」」」
私は想像魔法『EL・DO・RA・DO』でホンダのホーネット250を一台、そのまま造り上げる。カラーリングはもちろんレッド。赤ホネである。
特徴は初期型であること。燃料計がついてなくて、水温計がついている。
カスタムポイントはミラーをバーエンドミラーに、あとビキニカウルを装着。アンダーカウルも装着。マフラーはフルエキ交換ではなくヨシムラのスリップオンで。
実は秘密の装置を一つ、つけている。でも今はまだナイショで。
大人モードで乗るよ。普通にライディングジャケットとズボン、ブーツを着用。
メガルティナお祖母ちゃんは空間収納されていたカワサキのバリオスで参戦する。
特徴はバリオス前期型であること。後期型との見分け方はサスペンションがモノサスかツインサスかで判断できる。加えて、馬力が前期が45psで後期が40psとなる。
あと……珍走団仕様であること。
ロケットカウル&ロングスクリーン、ふわふわの三段シート、アメリカンアップハンドル。アンダーカウル。得体の知れないチタンフルエキマフラー。ふんぞり返って乗るタイプ。ヘッドライトはマーシャル製の猫目みたいなイエローヘッドライト。
コール用にアクセルグリップを肉厚のものに変更。ワイヤーも取り換えてレスポンスを向上。フォンフォン鳴るよ。超高回転域だとF1カーみたいな音になるから。
カラーリングはベースは黒。そこにゴールドのラインを引いたタイガーカラー。
当人の衣装は白の特攻服で決まり。竜神芽我流帝那と背中に刺繍が。
団旗もついている。旭日旗に『
……いや、それ、うん。もしかしてツッコミ待ちなのかな? え? 素なの?
世界樹の用意したスズキKTATANA250は変態に変態をトッピングした大変態仕様。ちなみに、正しくはGSX250SSカタナ。小刀とか言っちゃダメよ。
特徴は変態。まず独特のアナログメーターが有機EL液晶に変更されている。
カラーリングはノーマルのシルバーガンメタリック。ただし、シートはタンデムではなくソロ仕様に変更。材質は不明。なんかめっちゃ軽そう。フロントフェンダーをカーボン製に変更。ブレーキはブレンボ。フォークが倒立フォークになっている。
ハンドルが超セパハン&ステップがバックステップに。ほぼ寝そべるように乗る。
ミラーは取り外されて、ウインカーも取り外されている。テールライトもない。正面ライトだけLEDになっている。もちろんリアはフェンダーレスでナンバープレートも無し。つまり保安器具がほぼついていない。公道走行を想定していない。
マフラーが社名不明のフルエキレーサー仕様に変更。超絶ふけ上りが良い。
チェーンが窒化チタン製に。リアスプロケの丁数をいくつか減らしたものを使用。
タイヤもレーサー仕様に。タイヤウォーマーをつけてタイヤを温めている。
低回転域性能を捨て去った超々高回転設定、変態が変態を産んだKATANA爆誕。
……ちょっとガチ過ぎない? 余裕のない変態とか興ざめよ?
余談ですが、作者はSR400から新型XSR900に乗り換えたヤマハ派です。
とまあ――
各自お気に入りカスタムを施した250ccマルチエンジンのバイクを用意して。
「コースはにゃあが作ってあげるにゅ」
「む……ワタシの作ったレースコースでは不満か?」
「それだとお前がコース慣れしてるからダメ。中空に独自のコースを作ってあげる」
「参考じゃが、何をベースに考えておるのかの?」
「鈴鹿サーキットをベースに、三次元立体コースで行くよ」
「ほう、ほう! それは面白そうじゃのう!」
「まあ……ワタシもそれには同意する」
というわけでレースに入る。世界樹は分身としてエルフ族の最長老を連れてきた。
ぴっちりしたプラグスーツみたいなものを着た、緑髪の可愛い幼女エルフである。
……また幼女かYO。お祖母ちゃんと同じくらいの、10歳女児にしか見えない。
うーむ、これ、私も幼女で参戦しないとダメかな?
でも3歳児ボディだと、そもそもステップに足が届かないのよね……。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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