第172話 ダンジョンコア乗っ取り
「にゃー↑、にゃー↓、にゃー↑♪」
「がう↑、がう↓、がうー↑♪」
仲良し父娘は行く。見た目はコストコで売ってそうな巨大クマさん縫いぐるみ。見た目は3歳児幼女。巨大クマさん縫いぐるみに幼女は抱かれている。
私は巨大クマさん縫いぐるみのパパ氏に抱っこされて、王都旧ダンジョン地下100階層を歩いて回っていた。後ろにレイランとダーシャ先生と下僕のカルドが続く。
突発的に転移したので少し考えをまとめたかったのだ。
特に、これからのことを。
私たちはダンジョンを登るのではなく、逆に最下層へ降るつもりでいるのだから。
「にゃあっ。きーめた!」
「にゃあって……」
レイランが不安を隠しもせずつぶやく。
そりゃあね、こんな幼女にいきなりダンジョン攻略を持ちかけられてもね。
わかるよ、気持ちは。わかり味が深い。
でも、ぐっとこらえて信じてほしい。私、これでも優秀なダンマスだからね!
「このダンジョンはねー、なんだっけ、深き石壁の迷宮って名前だったっけ? 王都の旧ダンジョン。総階層は1000階層。最終攻略推奨レベルはたったの2万」
「総階層地下1000階、攻略推奨レベル2万!?」
「グレートレイクサイドはもっと熟成されていて、総階層地下2500階。最終推奨レベルは300万レベルだったよ。王都の旧ダンジョンは階層はそこそこ深いけど、最終推奨レベルが低くてマッタリしてるにゃー。ダンジョンコアの性向違いだねー」
「私としては、どちらも全然マッタリしていないように思えますが……」
「ダーシャ先生的にはそう思うにゅ?」
「いえ、人類の誰もがそう思うかと」
「レイランも?」
「そんなダンジョン、怖すぎておしっこ漏れちゃう……」
「オムツ?」
「わ、私、もうお姉さんだもんっ」
「でも当ててもらったときの、股間を覆うふわっと感は結構好きでしょー?」
「むぐぐ……」
「にゃー。……ちなみに王都の新ダンジョンは、総階層150階で最終推奨レベルは5000レベルだよっ。にゃあがね、作ってあげたのっ!」
「待って、待って。つ……作ったって、ダンジョンを新たに作ったのですか!?」
「にゃあ」
「そ、それって……もはや……」
「にゃあ?」
「マスターは魔王でもありましたか!」
「愚王に与えたらどういう反応が見れるかなと思ったら、案の定で笑っちゃうの」
「「「……」」」
無駄話をしているようで、そうでもない。
想像魔法『空の雫』でダンジョン全体を走査していたのだった。それも完了した。
つまり時間稼ぎである。
ダンジョンコアルームの所在も把握済み。
私は手持ちのダンジョンコアの力でワープゲートを開いた。最終フロアボス前広場に連結する。……どうしてコアルームに繋がないのかって? やっぱり礼儀として最終フロアボスくらいはね、ワープゲートのズルはしても倒してあげないと。
「行くにゃ!」
「神使さま。このゲートの先は?」
「一気に潜って地下1000階層、最終フロアボス前にゃしーっ!」
「ラスボス前!? む、無理いっ!?」
「どこへでも付いていきます、マスター!」
「覚悟完了するにゃ。おしっこしたいなら今のうち。レイラン、オムツする?」
「……するぅ」
「はにゃー。こういうときは『絶対にしないわ!』って、意地っぱるところなのよ。せっかくの黒髪ツンデレツーテールが泣いてるにゃー。可愛いけどさー」
「だってえ……」
「まあ大丈夫だから。秒で終わるからー」
「秒で死ぬから!?」
「なんでそうなるの。この子はしようのない子にゃー。ほら、こっちにおいで」
「あっ……何を……ん……唇を……? 女の子同士で、そんな……でも……ん……」
「舌を出して、にゃあの犬歯を舐めてごらん。ほらー、鋭いでしょー? でも、安心してね。にゃあは求めて咬まれたい子しか、口では絶対に咬まないから」
幼女同士で抱き合って、手と手の指を絡ませてチュッチュする。唾液が滴る。
どういう状況かって?
私は強欲の権能でレイランを瞬時に縫いぐるみパパの腕の中に強奪し、彼女の唇を奪ったのだ。別に考えなんて、ない。私が彼女の唇を欲しただけ。注目すべきは、私はレイランより圧倒的に強いこと。レイランはそんな私から何を感じ取るだろうね?
めっちゃ強いオスが、気に掛けるメスを守る行為の幼女百合バージョン。
相手が嫌がる心配? その辺はちゃんと見定めてるし、そもそも吸血鬼は決まって美形揃い。ただし
「心配ならにゃあの腕に抱かれていればいい。守ってあげる。対価は今貰ったの」
などと、男前ならぬ女前なセリフを言ってみたり。
結論から語れば――
最下層1000階の最終フロアボスは、私の暴食権能で美味しく討伐されました。
2万千5百レベル、ゲットにゃし!
ごく一部をカルドに与え、吸血鬼騎士クラス最終レベルの1000カンストにする。
レイランとダーシャ先生には私のレベル移譲は難しいのでちょっと考えて、想像魔法『EL・DO・RA・DO』でレベルアップの飴を作ってあげた。
一粒、10レベル。それを10粒、二人で5粒ずつ。
これに限っては、想像魔法をもってしても作製に『1レベルにつき約10レベル』ほどレベルコストがかかっちゃうのだった。
コスパ最悪。だけど人間でいきなりレベルをガン上げしたら爆発しそうだし……。
「ちゃんと自分を鍛えて、3ヶ月にひと粒ずつこの飴を舐めるとちょうどいいかも」
「「なんてチートな……」」
そんなことよりも、ダンジョンコアルームへ行こう。
実は最終フロアボスを倒すと入口まで転送されるワープゲートが数分間現れるのだった。私はそれをハッキングする。私のダンジョンコアを使って!
「コアルームご開帳にゃ!」
ワープゲートから異音が響き、真っ黒なゲートが現れる。プログラミングで言うところのデバッグ用のバックドアのようなものだった。みんなを呼んで、突入する。
バックドアを抜けた先。
天井が異様に高くがらんとした、タタミ百畳はありそうな広くて白い部屋。
その中央に、大理石風の謎素材で出来た台座と、無色透明の水晶のような宝玉が宙に浮いている。透明の珠なのに、発される光は透明度の高い赤色なのだった。
「コア発見っ。もーらいっと」
私は自らのダンジョンコアを、ルーム中央台座に浮くダンジョンコアに向ける。
轟、と一瞬。
音とも衝撃とも光とも似つかない何かが『叫び』を上げる。コア同士が覇を競い合っている。いわんや、戦いの絶叫だった。
私の経験から、ダンジョンの最終推奨レベルとコアのレベルはほぼ同じとわかっている。そしてダンジョンマスターの所有するコアは、マスターの最高レベルと同じくする。私の場合、2万レベルと先ほどの2万レベルで4万。大人モードで4億。
私のダンジョンコアレベルは、4億。
コア同士の覇権争いはすぐに収まった。
私のコアの勝利だった。
「にゃはっ。にゃあのコアが勝ったので、このダンジョンはにゃあのモノー♪」
「「「えぇ……」」」
「よーし、早速改造しちゃうぞー」
「「「一体何を……?」」」
「もちろん、罠オーブで飛ばされてそれでも地下100階層から奇跡的に生還したレイランを、念を入れて待ち伏せる暗殺者たちに」
「「「……暗殺者たちに?」」」
「いしのなかにいる! にしてやるにゃ!」
「「「いしのなかに!?」」」
名作ウィザードリィシリーズのあれをリアルでやってあげよう企画であった。
ちなみに暗殺者たちは本当に、念を入れて待ち伏せている。地下20階層の一本道の先、ちょっとした小部屋でキャンプをしている体で、奴らは待っている。
なので、みーんな『いしのなか』にご招待。
事実上の即死!
こんな可愛い黒髪ツーテール幼女を殺そうだなんて、私が許さない。まして吸血鬼を貶める暗殺吸血鬼なんて、存在自体を許容したくない。抹殺あるのみ!
幼女は世界の宝。異論は認めるけど、そういうコト!
ひと仕事を終えた私は、得意げに小さな身体をふんぞり返して満足感に浸った。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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