第154話 間話後編 淫魔侯爵エイロス・ド・ケスべイは悩んでいた
前回の続きの終わりから。
私はカミラ嬢に魔力循環の修正を受け、あまりのキモチ良さに失神したのでした。
「……起きたかにゃー?」
「きゃんっ!?」
「女の子っぽくてとっても可愛い悲鳴にゃ」
「か、カミラ嬢……幼女体に戻られたのですね。ちょっと惜しいような気が……」
「鏡、見る? ほら、本当に16歳にしてあげたにゃ。自信あるにゃー♪」
「え……」
実は私、年齢は10万歳を超えた辺りから数えるのをやめていたのですが……。
カミラ嬢より手鏡を受け取る私。
「……女の子がいる。女の子っぽく化けた偽物じゃなくて本物の。……これ、私?」
「にゃあー。そうだよー。魔力循環を良くして、悪くなった部分は再生したにゃ」
「あ、あの……どうしてここまで良くしていただけるのでしょうか?」
「そりゃー
「あう……」
わがケスベイ家の悩み。
別に家に騒動があるわけではない。平穏無事だから。だけど……カミラ嬢はそれを知った上で、私に接触してきた。つまり、私の悩みを知っている。
「エイロス侯爵の口から聞きたいにゃ」
「……うう」
「大丈夫にゃ。
「たしかに
「だったら教えるにゃー」
私は目を閉じて秒の間に数千回悩みました。そして結論に至りました。
「じ、実は種族としての娼館事業に、このところ不振が……淫魔なのに……」
「誰だってスランプはあるにゃー」
「そうかもしれません。が、私たち淫魔はエロが身体なのです。スケベこそすべて」
「それで新しいえっちを模索していたと」
「はい……ない知恵を絞ってはいるのですが、打開の策はちっとも思いつかず」
私は吐露していた。淫魔にとって最大の恥辱を。エロの塊の種族がエロに行き詰まるなど有り得ない。それを他種族に漏らすだなんて……これはこれで絶頂しそう。
「昭和テイストで攻めようかにゃー?」
「はい?」
「まず確認だけど、帝国各地でエイロス侯爵が経営する娼館は、基本的にサキュバス嬢やインキュバスくんたちが詰めているんだよね? 人材として、薄い身体に薄い胸のロリっ娘やショタっ子、ボン・キュッ・ボンな娘さんや、締まった体つきの青年タイプなどなど。一部ではロマンスグレーなおじさまタイプも揃えている感じ」
「はい、そうですね。幅広いサキュバス・インキュバスを取り揃えています」
「食事のためだしね」
「はい」
「お店自体は、一応、宿の形態を取っているのかにゃ? それとも料理屋系?」
「行為が行為ですので宿形態ですね。複数人合作の寝技と申しますか……各部屋には大ベッドを設置しています。あと、サービスで
「ふみゅふみゅ。で……なんで、環境には手を加えないのかにゃ?」
「えっと……意味が、ちょっと」
「部屋を総鏡張りにして回転ベッドでも置いたらだいぶ雰囲気も変わりそうなのに」
「鏡張り? 回転ベッド!?」
「昭和の名物、ラブホテルベッドにゃ」
「し、しょーわ?」
「あとはねー、ソープランド方式でお風呂場でソープとローションで空気マットヌルヌルプレイかにゃ? スケベイスも忘れちゃだめよ。介護施設では万能イスとか名前を変えてるけど。事後はサキュバス嬢やインキュバスくんがお客さんの全身を丁寧に洗ってくれる……身体を使ってね。それで発情したら再びレッツプレイ」
「あわわ……」
なんということでしょう(本日二度目)。
あまりの衝撃的で斬新なアイデアに私は言葉を失いました。しかもまだ続くっぽいのです。どうなってるのこの御令嬢!? 神ですか? スケベ神の降臨ですか!?
「色んな人材がいるのなら、色んなコスチュームを取り揃えるのもありかにゃ。どーせ、いかにもサキュバスっぽいキワドいエロ衣装しか使ってないんでしょ?」
「と、申されますと?」
「つまり……はにゃにゃ!?」
「どうされました!?」
「眷族のミーナちゃんが助けを求めてる。うーん……異世界の自称神に攫われそう、タスケテ、タスケテ……? 推定レベル2000万強。ボスケテ……?」
「異世界の神!? レベル2000万!?」
私のレベルは1000万程度です。その2倍のレベルの異世界神がカミラ令嬢の眷族を攫おうとする? どうしましょう。正直、どう考えても無理筋です。
魔帝陛下や三大公爵閣下が凄すぎるだけで、侯爵以下は私の1000万レベルが最高なのでした。侯爵によっては数万レベルの方もいますし。……誰ですか、長生きババァだからレベルだけ高いとか暴言を吐いた人は。童貞、奪いにいきますよ!?
「ちょっと助けてくるにゃ」
「えっと……相手は2000万レベル越えですよね? そんなのとどうやって」
「エイロス侯爵も来る? にゃあのびっくり技を見せてあげるよ!」
「わかりました、素晴らしい案を中座するのは我慢できません。ついていきます」
「オッケーにゃー!」
カミラ嬢は笑顔で応え、両手をペチリと叩くのでした。するとどうなるか。
眼の前にアーチ状の門が現れたではないですか。しかもアーチの先の風景は明らかにこの部屋とは違うものが見えます。……覗いた感じではどこかの執務室のような。
転移ゲートなど、こんなに簡単に出せるものではないのですが……。
「ミーナちゃん、助けに来たよー!」
「マ、マスター!? マスター! 助けてー! 助けてー! 攫われるー!!」
ぷりんとした少女の可愛いお尻が助けを求めています。
ああ、違う。
空間に裂け目が。
その中に埋まるように尻と足だけ残った状態の少女が助けを求めていたのでした。
『強欲の権能。範囲、丸ごと』
カミラ令嬢、何かを唱えます。
ドゴ、と重い音が。
1つの胴。顔が8つ、腕が16、足も16。
ひと目見てわかる異形体。革の鎧らしきものを身につけてはいますが……。
どこかの神話では『異形は神である』と語っていたのを思い出します。
まあ……こんなのでも正しく祀れば神になるのかもしれません。
なんにせよ。
そいつが10歳くらいのメリノー種系悪魔族少女をタワラ抱きにしていました。
一人と一体は、すげなくカミラ嬢の足元に転がっています。
異形体はすべての顔が何が起きたのかわかってない表情をしていました。まあそうですよね。そんな彼の様相を冷たく、虫でも見る目で御令嬢は眺めています。
『暴食の権能。この異形体を丸ごと』
カミラ嬢が、またなにかを唱えました。
すると今度は。
圧倒的な闇が、床部分から、噴出して。
「――!? あぎゃあああああぁあああぁーーーっ!?」
異形はまるで足からゆっくりと踏み潰されるような絶叫を上げます。
そして、次の瞬間にはそいつは。
圧倒的勢いで有無を言わさず、ずるずるずるっと、闇に呑み込まれました……。
……しかしこれほどの騒ぎを起こしても周囲が気づかないとは。
ちょっと調べてみよう。魔力でサーチ!
ふむ、これは防音性の高い特殊壁加工をされた部屋……ですかね?
なんとも、エロいことに応用が利きそうな部屋ですね……?
「……もう安心にゃ」
「グス……こ、怖かったよぉ。神を名乗る怪物がお前を嫁にするとか言って」
「ミーナちゃん、もうだいじょーぶだから」
「……あい、マスター」
「ベッドに入って、肌の温かみで恐怖を緩和してあげる」
「私を、慰めてくれるのですね……? まずは……キスしてください」
「もちろんにゃ。ん……ん……ちゅ……ん……」
「ちゅ……ん……マスター大好き……♪」
「……今回はね、先生と生徒設定でイイコイイコしてあげるね」
「セーラー服が良いですか?」
「ワイズロード女学院ブレザーがいいにゃ」
「はい……っ」
「にゃあは女教師風で行こうっと」
何のことだかわからない私は、黙って彼女たちの行動を見守ります。
そして、ややもしないうちに。
行為が始まりました。
設定、というのでしょうか。
女生徒が憧れの同性教師に恋の告白をするというような、そんな感じの。
ハッ、としました。
これは……。
私のために見せてくれているのだと。
『そう、これをコスチュームイメージプレイというにゃ。いろんな設定を決めて、演じつつ、えっちを愉しむ。そういう環境プレイもあるということにゃー』
なんと……目からウロコです。
となれば。
例えばお兄ちゃんと妹プレイとか絶倫オークと姫騎士プレイとか、医者と患者プレイとか、甘やかし母親と息子プレイとか……つまりそういうことですねっ!?
『気づいたみたいにゃ? 環境を整える大切さに。可能性は無限大になることに』
「はい、カミラ嬢……いえ、お師匠さま!」
以後、たっぷり1時間えっちを堪能されるわがお師匠さま。どうやら、眷族の少女を慰めてあげると同時に力を与えるためプレイをしていたようです。
というのも。
暴食、でしたか。それで奪ったであろう力を、お師匠さまは少女に与えだしたからでした。約2000万レベルです。代わりに1万レベルだけお師匠さまは手間賃として取っていたようですが、ここまで眷族を大事にするとは、なんとお優しい……!
しかも。
わざと着衣を残して睦まじくプレイをなさるだなんて、見ている方がむしろ滾るではないですか! こういうのは全裸より着衣アリの方が断然エロいのです!
しかも、女の子同士でも、これはこれで結構なお点前でございまして。ああ……あの可愛いお尻の山にキスしたい。私、穴も好きだけどお山部分も大好きなのです。
そんなこんなで、ミーナ嬢を性的に満足させ眠りにつかせて、その帰り。
私はかつてない斬新なアイデアをこれでもかとカミラ嬢より伝授を受けて。
「あの……対価は、いかように……?」
「にゃあのお兄ちゃんはノスフェラトゥ公爵家の後継ぎにゃ。つまり、将来いつになるか知らにゃいけど、お兄ちゃんが家を継いだら必ず味方になって欲しいの」
「それは、もちろんです。しかし……なぜ」
「いつかお兄ちゃんに厳しく当たらないといけない日が来るかもしれないから」
「お師匠さまにそのような日が来ると……?」
「まだわかんないけど、そんな日が来てもいいように、なのにゃ」
「なるほど」
「味方は、多いほうがいいにゃ……」
お師匠さまは笑みを浮かべつつ、なのに寂しそうに目を伏せるのでした。
ちなみにカイン・ノスフェラトゥ小公爵の夜会はスレイミーザ三世陛下のおかげもあって大成功のうちに終わり、参加者はみんな満足して帰られました。
私はといえば、お師匠さまの爆発しそうなほどの新アイデアに鼻血が出る想いで秘密の書物に書き写し、それを一個一個噛み締めて今後のエロ計画を立てるのでした。
このアイデア、絶対にイケる。
革新的なサービス産業がここから始まる。
我が一門が飢えることのない世界。そう、これは淫魔の食糧問題でもあるのです!
カミラ・ノスフェラトゥお師匠さま。エロ神の恩寵を受けし御令嬢。
私、心から、敬愛いたします! このご恩、どうすれば返せるでしょうか!?
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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