第152話 波乱のデビュタント? 前編

 注意。むしろお願い。

 デビュタントについて、作者としては――

 女性向けの恋愛漫画程度の知識しかないので、ツッコミなしでお願いします。。



 皇室直々に私のデビュタントの打診が舞い込んで来て一ヶ月。


 私も晴れて、満1歳になった。


 まだそんな齢? これまでの6回の転移冒険が濃厚すぎてめちゃくちゃ時間が流れたように見せかけて……そうなのよ、まだそんな齢だったのよ!


 ゼロ歳児にして、ちょっと有り得ない体験をしているからねぇー。

 よく一年間生きてこられた――おっと、私、吸血鬼だったわ。アンデッドが『生きる』とか笑えない冗談。ともあれ神さまの試練冒険がしたいという前世最期の願いを切り抜けてきたわけで。


 暴食、憤怒、嫉妬、色欲、強欲、怠惰。

 あとは……傲慢を残すのみ。


 でもこれ、神さまの権能なんだけどさ……え? 大罪だから悪魔の権能だって?

 人が扱いかねるからこそ神の権能。人の尺度で計るなど不遜。そんな感じ。


 話の続きをすると、この七つの権能――私が勝手に『七つ』だと思っているだけなんだけど、全部集まったらどうなるのだろう。嫌な予感がするのは気のせい?


 某ド○ゴンボールみたいに神竜が降臨して何でも願いを叶えてくれるとかだったら気持ち的に助かるんだけど、絶対に違うよね? ギャルのパンティおくれとか。


 ……。


 ……。


 期待を込めて疑問符を浮かべてみたんだけど神さまからの反応がないね。


 うーむぅ……。


 それは、ともかく。話を元に戻そっか……。

 なんだったっけ。……ああ、私が1歳を無事迎えられたことだったね。


 お誕生会の概念はこの世界にもあるようで、盛大に祝ってもらった。


 来年も誕生日を祝って、次が7年目に、その次が13年目、17年目……もうおわかりの人も多いかもだけど、これってアレと同じ法則なのよねー。


 誕生日祝いの法則が、まさかの『年忌法要』とくる。なんとまあ……。

 さすがは吸血鬼。もとい、アンデッド。

 

 バチ当たりというか、ここまで行くと変な笑いが込み上げてくるわ……。


 で。


 魔帝スレイミーザ三世陛下より直々に私のデビュタントの要請が来たのだけど。


 パパ氏はものすごーく嫌がった。

 私だって、嫌だよ! とっても、嫌!


 スレイミーザ帝国ノスフェラトゥ公爵領領都にあるわが家――

 月光に照らされ神秘の蒼き薔薇の咲き誇る、ブルーローズガーデン城。



「カミラがデビュタントなんて早すぎるのである! 嫌なのだああああああっ!」

「にゃあーっ。カミラも嫌なのにゃーっ! まだ子どもでいたいのにゃあー!」

「カミラーっ!!」

「パパーっ!!」



 ひし、と抱き合う父娘。呆れて目を手で覆うママ氏。何がなんだか良くわからなくてぽかんとするカインお兄ちゃん。


 デビュタントは貴族子女の社交界への仲間入りを表している。

 いわんや、大人への第一歩。……もう少し突っ込んだ話をしようかにゃー。


 本来、デビュタントとは成人(この世界では15歳を基準とする)を迎えた貴族の子女が社交界へ『初めて出る』行為を指している。主に舞踏会である場合が多い。


 ドレスコードの遵守、礼儀作法に一部の欠けもなく。非常にフォーマル性が高い。


 そして……これは、結婚の相手を探す行為も含まれる。もちろん家同士で政略的に婚儀が進められる場合も多々あれど、相手探しの意味合いも深いものなのだった。


 なんというかさ……うん……。


 私、まだ1歳だよ!


 嫌だよ! 嫌、嫌嫌嫌、嫌!


 私もパパ氏と並んでイヤイヤした。

 まだ子どもでいたい。

 だって、何度も言うけど、私ってまだ1歳児なんだよ!


 と、抵抗してはみたんだけど……。


 あえなく敗北。


『悪いようにはせんからオレの舞踏会に娘を来させろ! とっとと来させろ! そなたの娘は強すぎる! いずれ星をも呑み込む! 魔帝スレイミーザ三世より』


 駄々をこねてパパ氏の執務室で父娘二人籠城するも、陛下が直々に執務室のドアを蹴破って突入、舞踏会の招待状をパパ氏にグリグリと突きつけたのだった……。


 で。


 色々と陛下と一家総出で話し合って。


 私としては何はともあれ兄の顔を立てたいのよね。だって当家の世継だし。


 条件をつける。

 私を性急にデビュタントさせたいなら、兄が主催で開くパーティーに陛下が強烈にバックアップ、兄の存在性を高めるように動いてくれること。


 陛下も、うむむと呻りつつ私の提案を受け入れる。


 ええーっ!? と素っ頓狂な声を上げるカインお兄ちゃん。


 私のお兄ちゃんは……知っての通り、ちょっと人見知りの気があるので……。

 でもだからと言って、世継がいつまでもそんな奥手でいていいわけがない。


 ちなみに現在の見た目は7歳女児のロリ陛下である。


 明らかに何かしらの考えで私を大人扱いにしたいのだろうけれども、だからと言って三大公爵家のノスフェラトゥ家の世継をないがしろにしていいわけではない。


 警戒度マックス on パパ氏の膝の上の私。



「そんなに警戒するでないわ。一時期は一つの身体にオレと同居していたではないか」

「にゃあたちの宿主となったミーナちゃんは、今は、にゃあの眷属にゃー」

「王級吸血鬼とかいう、一種のイレギュラークラスであったな」

「みゅー」

「まったく、ゼロ歳児時点でコレじゃから。ベリアル王家直系最後の一人は実は吸血鬼の眷属になっていて、国の真の支配者はここにいるカミラとか誰が思うだろう」

「完全委任しているから、その辺りはだいじょーぶだよー」

「いやいや……カミラよ、オレは知っているぞ。ミーナがまつりごとで悩んだときにサポートしてやっていることを。特に彼女が王として君臨した当初などは毎夜の如く」



 まあ、バレてるよね。帝国に住まう者すべての心の安寧のため、また、趣味と実益のため、夢魔である陛下は臣民の悪夢という悪夢を食べまくっているのだから。夢とは記憶の整理作用の側面を持つ。要するに脳の活動を手に取れるわけで。


 陛下は、理論上、帝国で知らないことなどないのだった。



「……パパ」

「何かな、カミラ」

「やっぱり、デビュタント、スグしないとだめにゃ?」

「ワシとしては、まだまだ早すぎるんだがなぁー。でも陛下が招待状をグリグリと」

「そなたら、まーだ言っているのか。もう決定したであろ? 代わりにカインのパーティを、オレ自らバックアップしてやるというに」

「にゃあー」

「悪いようにはせん。約束する!」

「パパ……」

「うむむ」

「……分かったの、陛下の舞踏会に行く」

「よし、もう蒸し返すなよ? ともあれ、オレはもうそのつもりだからな!?」

「カ、カミラ……!」

「パパー!」



 ヒシと抱き合う父娘。もとい私たち。お互いのほっぺとか、べろべろ舐め合う。


 

「いや、どれだけ仲良しなのじゃ……お○っちゃまくんの親子かというに……」



 半眼になる陛下。陛下は今日もロリで可愛い。後でペタ胸をさわさわしようかな。


 呆れてため息をつくママ氏に、突然降り掛かった自分主催のパーティに顔を真っ青にしてママ氏に抱きつくカインお兄ちゃん。がんばれお兄ちゃん。これは巡り巡ればお兄ちゃんの良き糧となるはずなのよ! 陛下も協力してくれるし!


 まあ。何にせよ……。


 どう考えても波乱を呼ぶだろう突発イベントに、私は複雑な気持ちだった。




【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。



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