第103話 ドーンフレア国王の召喚に応じよう

 まず、アーカードちゃんに頼んだラピス王国への異世界サキュバス難民入植申請は条件つきで通った。全員、段階を踏みながら受け入れてくれるという。


 ただその条件とは。


 魔女であり、この世界における吸血鬼の太祖という立場の私に、ラピス王国まで出向いてほしいとのこと。もちろんアーカードちゃんの眷属問題も踏まえてだった。


 移民もアーカードちゃんについても国際問題だからね。特に他国の王子を眷属にするのは、いくら本人は了承したと言っても国としての体面がある。


 いつ、なぜ、どのようにしてそのような結果に至ったか。

 向こうとしてはせめて詳しく知っておきたい。


 ……と、いう建前。


 本音は、ただ単に私に会いたいだけ。これだろう。何せ、この世界に転移してから私のステータスが吸血鬼たちの太祖――厳密には星の太祖となっているためだ。


 なので後回しにして問題ない。下位の吸血鬼など待たせておけば良い。


 それよりも。


 リキ王子の眷属化問題の方が重要だ。


 知っての通り彼は当国ドーンフレア王国の第二王子だった。


 第二とはいえ一国の王子を侯爵家の、しかも養女の下僕にしてしまう。余人の目線ではこうなるわけで。降嫁したと建前をつければ良いという単純な話ではない。


 彼らは吸血鬼の階位の重要性は頭では理解すれど、人は人である以上、血脈の重さは理解できない。人間は歴史からは何も学ばないバカは経験に学び、賢者は歴史に学ぶので、ためしに一度レッサーバンパイアになってみる? アンデッドなので二度と人には戻れない一方通行だけど。



「にゃー。面倒だけどこの国の住人としては国の召喚には応じるべきなのよね。でもここの馬車って空飛べたっけ。無理なら一直線に空を飛んでいきたいにゃー」


「あはは。私としては一直線も面白いと思いますよ。みんなびっくりしてくれます。ですが、おそらくは蒸気自動車での送迎でしょうねぇ。王国自慢の車両ですし」


「……またスチームでパンキーな代物だにゃー。繊細な操作が難しそう」



 ソファーに座す三歳児姿の私の傍にはべるリキは無邪気に笑っている。

 ちなみにアリサもアーカードちゃんもフォーリタインも私の傍にはべっている。


「あー。ろくに舗装されていない道を走るのって、揺れるしイイこと全然ないのに」

「主さま。そのときは私のお膝にお座りになられては……」


「リキのお膝なんて、なんだか座るだけで妊娠させられそうで絶対に嫌にゃ!」


「うっ……ふう」


「ほらそういうとこ! そういうとこにゃ! もーっ!!」

「わんわん。そういうところが堪らなく興奮するのです。素敵です、わが主さま♪」


「リキばかりズルい。お姉さま、私のお膝にどうぞ」

「アリサのお膝。大丈夫? 三歳児の姿とはいえアリサには重いかも?」


「そんなことありませんよ。私、これでも15歳で成人してますから!」


「ママ、ボクのお膝に来て。ママを抱きしめたいよぉ」

「にゃあはモテモテにゃ……そしてフォーリタインはホトケみたいな優しい目つきで見て楽しまないように。どうせパンツの中はアレでしょ?」


「実は既に三度ばかり。ロリも良し、ペドも良し。大人も良し俺に良し、お前に良し、みんなに良し。うふふ……」


「とびきりのイケメンなのにどうしてここまで残念に……」



 そうやってアリサや眷属たちとじゃれ合って親交を深めていると、思いの外早くに王城より迎えの蒸気自動車がやって来た。


 私たちは一応公的な場でも失礼にならないよう正装をする。


 アリサは王立士官養成校の制服を、フォーリタイン、リキはそれぞれの元の立場に沿ったフォーマルスーツを。私とアーカードちゃんは揃いの深紅のドレスを。


 乗り込んだ蒸気自動車は胴長のリムジンに結構似ていた。


 扉を開けて、乗り込む。


 立場の高い順に奥へと座っていく……のだが、私の眷属には上下関係はない。


 なので、先頭は私、そしてアリサ、フォーリタイン、アーカードちゃん、トリにリキと仲間になった順に乗り込んでいた。そして最後に案内兼使者殿が乗る。



「……謁見までの手続きはすべて省略。当事者に絶対に会う意思を感じるにゃ」

「そこまでして会いたいというのは、お姉さま、やはりリキとの婚約関係……?」


「にゃあは結婚する気ないのよー」

「きゅーん……」


「そうだよ、ママと結婚したらリキがボクの義理の父になっちゃうよ」


「わんわん♪」

「こらーっ、抱きついてお股の匂いを嗅ごうとするな! もー、おバカ犬!」


「すんすん、くんくん。主さまいい匂い」

「お姉さま、私も嗅ぎたいですー」

「ママの香りに包まれると安心できるよ」


「なんでみんなにゃあの体臭を嗅ぎたがるかな……」


「うふふ。捨てられた子犬を見るようで滾りますよね、ご主人様」

「フォーリタインの一切ブレないところがほとんど尊敬レベルなのよ……」



 迎えの蒸気自動車の中でも変わらずにじゃれ合っていたら、案内係兼使者殿(法衣伯爵だそう)が信じられないものを見る目で顔色を青くしていた……。




【不思議】

 後で気づいたことに、300文字ほど消えていた件。どういうことなの……。


【連絡】

 書き溜めがなくなりました。

 なるべく数日に一度は更新したいと思います。アップはこれまで通り16時です。


【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る