第102話 異世界難民サキュバス 後編
「失礼。ちょっと空気の読めない子が一人いたようです。……それよりも」
『満月の夜』
私は想像魔法を行使する。
真昼間に疑似的な夜を構築。中天に現れる仮想の月は周辺空間から魔力をかき集め、範囲内のすべての存在に魔力を分け与える。
「ああ……満たされます……」
ミニ凱旋門のゲートから次々とサキュバスたちが現れる。そりゃあ移民だもの。あるいは数は百や千では済まないかもしれない。
「サロメ嬢。あなたたちの同胞は全部で何人くらいいるのかしら?」
「私が最終的に連れてこれたのは三千人です。この世界のサキュバスクィーン陛下」
「私は純血のバンパイアよ」
「……!? そんな、この雰囲気はサキュバスとしか。クィーンではないと!?」
「クィーンは正解ね。太祖の吸血鬼だし。……そんなに淫らに見える?」
「見えます。美男子下僕を常に何人も侍らせる敬意を払うべき
「ちょ」
「毎日毎夜、穴という穴を使って乱交を」
「してない。してないから」
「そんなはずは。だってクィーンですし!」
「違うから、私、普通にバンパイアだから。不死族の一種族だから」
「(´・ω・`)ショボーン……」
「なんでそんなに残念そうなの……」
ともあれ。
人さえいれば生きていられるサキュバスがなぜ飢えるのか聞いてみる。
しばらく聞いていて、うげぇとなった。
あまりにも人間らしい、業深い所業から端を発していたのだった。
「原因は、全感覚投入型セクサロイドシステムですって……?」
「はい、わたしたちの世界の人間は性的関係の相手を人工知能に作らせて仮想空間に接続し、全感覚投入の上で脳内セックスをするようになりました。脳内なのでどんな望みも思いのままです。快楽に制限はなく、どんなプレイも対応します。通常なら禁忌とされる関係であっても、脳内なら。……わたしたちはそんなシステムに敗北を」
「でも、しょせんは仮想のものでしょう?」
「それが、全感覚投入するためリアルな経験として残り、あとでわかったことに脳内に快感に対する新たな神経回路を構築し現実での性交では満足できない身体に」
「その世界の人間は、どのようにして繁殖するのかしら?」
「血縁はなく、数十億の精子と卵子から才能と姿と人種を選んでファクトリーで生産します。過去、人間が増えすぎて水と食料を求めて戦争を起こした影響ですね」
「人類抑制のデザイナー・チャイルド。しかも遺伝子上と育ての親しかいない」
「さすが、ご理解が早い。生みの親はファクトリーで統一されていますので……」
「なるほどね。これではあなたたちも飢えるわけだわ」
「わたしたちはクィーンに出会ったことで助かりそうですが、ここへ来るまでにも既に3分の2が飢えで死にました。特に男性型のインキュバスが真っ先に……」
「代謝の影響かしらね。女は体質上、脂肪と同じで魔力を貯めておきやすいけれど」
「はい、よくご存知で。さすがはサキュバスクィーン陛下です」
「だから私はバンパイアだってば。ほら、犬歯が伸び縮みするでしょ?」
「そんな。この匂い立つようなメスの芳香、男性なら絶対に逆らえませんよ」
「サキュバス的には褒めてくれているのよね、それ。でも私の体臭は男だけでなく女も引き寄せるから。みんな腋とかヘソとかお股とか嗅ぎたがるのよね……」
「男女お構いなし。やはりクィーン以外にありえません」
「もー。違うってばー」
話が脱線してきた。
しかし酷いものだった。
かくいう私だって、未だに実は私自身は病院のベッドに寝かされていて、今際の瞬間の夢を見ているかもしれないと思うときがある。曰く、胡蝶の夢だった。
ともあれもはやこれでは訓練などできそうにない。彼女らを殺して経験稼ぎなんて絶対に無理。ゲームでは知らなかったとはいえ、ホントすまないことをした。
「ラピス王国への連絡はアーカードちゃんに任せるとして、返事がくるまでは私のダンジョンで待機してもらう。ちょっと改装して仮住居の街を作るわ。魔力はダンジョン産の食べ物で補う。二十万人規模のダンジョン地下都市を作ったこともあるし、大船に乗った気持でいていいわ。で、許可が下り次第、隣国へと転送しましょう」
「もし、移民の許可が下りなかった場合は……」
「そのときはダンジョンに本格的な都市を作ってあげる。自立支援もしてあげる」
「感謝します。われらがクィーンよ」
「違うってばー」
「今夜、私をご賞味いたしますか?」
「いらない、いらない。えっちは間に合ってるから」
「はい……(´・ω・`)ショボーン」
「どうしてそんなに残念そうなのよ……」
なんだかすべてにおいて上手く行かないなぁと思う。
当たり前なことに結局のところ本日の訓練はこれまでとなってしまった。
自邸へ帰還し、私の権限でダンジョンをいじって一時的に王都外にダンジョン入り口を構築、低層階に安全区域を作り、仮の街をクリエイトする。
そこに約三千人の異世界移民サキュバスを収容する。一応健康診断はしたが、基本的に飢えていただけなので魔力を与えてやれば元のエロい姿に戻っていた。
ロリっ娘はロリロリしく、熟女は溢れんばかりの色香をムンムンさせて。
ためしに彼女たちの乳を揉んでみたら素晴らしく良い反応を見せた。
全員が目をはぁとマークにして身の危険を感じたのですぐにやめたけれど……。
数少ないけどインキュバスたちも男独自の筋肉由来なエロい気配を発露させる。
しかもおちんちんがデカくてびっくり。アレは竿一本でジゴロ生活できますわ。
そうして数日後。
アーカードちゃんに送らせたラピス王国移民申請の返事がやってきた。
ついでにドーンフレアの王城からの連絡も。リキ王子についてだというが。
アーカードちゃんからの返事は良いとして、面倒事が次々と。リキ王子の部隊員が国王に報告をしたのだろう。まあ、これも当然と言えば当然の成り行きだけれども。
さて、いつになったらまともにアリサたちを鍛えられるのやら……。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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