第100話 異世界侵略者の真相?

 話を戻して。いやあ、目的にたどり着くまで色々あったね(遠い目)。


 紆余曲折はあったけれども、当初の目的の異世界侵略サキュバス狩りをしよう。


 目的のポイントを探す。


 異世界からこの世界に接続するのだ。絶対に濃い魔力溜まりがあるはず。

 想像魔法『空の雫』を使って走査する。


 ……あった。


 うん、なるほど。たぶんここだね。ゲーム内の地形にも似ているし。


 アーカードちゃんとリキと出会った場所から北北西へ約2キロ。


 丘と丘の窪地のような小さな広場。


 ストーンサークルみたいな岩の並び。直径で20メートルくらいの円形だった。

 中央には朽ちた鳥居を思わせる木製の何かが、斜めにかしいだ状態で建っている。



「アリサ」

「はい、お姉さま」

「魔力溜まりと地形から、私はここが目的の場所と見るけど、あなたはどう思う?」

「私も同じく、ここだと思います」

「うん」



 私はフィンガースナップする。パチン。ゲーム作中ではフランス凱旋門をミニ化したみたいなシンボリックな『ゲート』が、異世界へ通じる門となっていた。


 どういう理論なのかはさっぱりである。それはそういうものなのだ、としか。


 しかし、魔力溜まりならそれを一か所に集中させてみれば、あるいは『向こう』から『ゲート』を構築するのではないかと勝手な予想を立ててみる。


 ……予想は、当たりだった。


 私がやったのは神気による空間操作、魔力圧縮だった。


 見た目だけは立派な、ミニ凱旋門型ゲートが魔力溜まりから仮の形を作っていく。

 縦三メートル、横二メートル。人が横に並んで五人くらいは通れそう。



「はい、みなさん。狩りのお時間ですよぉ」


「はい、お姉さま」

「はい、ご主人様」

「はい、ママ」

「わんわん」

「イェス」



 何やら一匹、わんこが混じっているようだけどスルー推奨で。



「アリサ、今回だけは私が指揮を執るからそのつもりでいてね。……では、フォーリタイン、リキ。アーカードちゃんはよく知ってると思うけど初心に帰るつもりでつき合って欲しいのだけど、まずは基礎中の基礎、呼吸法から始めるわ」



 私は吸血鬼の力の使い方の解説を始めた。


 そもそも私たち吸血鬼は呼吸を必要としない。だってアンデッドだし。しかし呼吸して体内の血管を想像しつつ魔力循環させると、自らの魔力をより強化させることが出来るのだった。なぜなら、魔力や魔気は吸血鬼の身体そのものでもあるから。


 何度も触れたように――今回はもう少しだけ突っ込んだ内容で。


 魔力または魔気=吸血鬼ではない。それだと魔力が全部吸血鬼になってしまう。 

 吸血鬼=魔力または魔気。魔力というエネルギーの一形態が吸血鬼という考え方。


 似たものだと「神族=神気」という考えもあると以前にも語った通りで。


 つまり私たちの存在自体が『純粋なエネルギーの塊』なのだった。



「これは、人体模型の血管を参考にしつつ魔力循環をすると良いのでしょうか」


「それでもいいわよ。もしくは全身の血管の見取り図でもいいけどね。ちなみに人の血管はすべて繋いで一本にするとこの星を二周するほどの長さになるわ」


「なんと……」


「なので隅々まで魔力を浸透させ、循環させると、そのフィードバックで恐ろしく魔力を高められる。なお、血管の見取り図は仮装立体で見せるとこーんな感じ」



 私は想像魔法『星の雫』で適当に見繕った人間の血管『マップ』を出してやる。

 全身くまなく血管が張り巡らされていて、ちょっとグロい。



「アーカードちゃんも、わんこのリキもちゃんと覚えなさいよ」

「はい、ママ」

「わんこのリキをお認めになられた。素晴らしい。わんわん、わーん♪」


「あー、いけない。思わずわんこ設定を口にしてしまった」


「どうかこの犬畜生めに引き綱をっ」

「そういうプレイは後でね」

「興奮でどうかなっちゃいそうです……うっ……ふう。ミルク出ちゃいました」


「……自ら首を絞めていくスタイルを私自身がやってしまった気がする」



 ともあれ。もうね、話が進まないから。



「循環を意識しつつ、手と指で拳銃をイメージした形を作って。そして練り上げた魔力を指先に持っていく感じで。これが魔力弾の基本ね。慣れたら指を差して撃つまでコンマ秒で出来るようになる。なお、撃つときは心で発射を念じればいい」


「お姉さま、それって幽遊〇書の霊ガンとコ〇ラのサイコガンですよね」


「懐かしいわ。言われてみればその通りね」



 想像魔法で作っちゃおうかしら。気持ちが乗れば星ですら砕く左腕専用銃を。


 一瞬、本気で考える。


 眼前では魔力溜まりから作られたミニ凱旋門『ゲート』が、より明瞭にその形状を固着し始めている。大きさは先ほどのまま、縦三メートル、横が二メートル。


 異世界から異世界へ繋ぐのである。安定に時間がかかるのは当たり前であった。



「そろそろ敵がゲートアウトしてくるわ。先制攻撃したいところだけど門を壊すと増殖狩りができなくなるので、絶対に門を撃たないようある程度モンスターが出てきてから射殺するように。魔力の扱い方を覚えたら次は変怪の仕方を教える予定よ」


「お姉さま、私は?」


「手を繋ぎましょうね。それと増幅を意識してみて。仲間の魔力にバフがかかるわ」


「はーい、バンド効果、あるかなー?」


「前も言ったようにアレは異性だけの効果だと思うわよ。説明書きに『聖女が愛した男たちの能力を更に倍加させるハイリスクハイリターンの特殊効果』とあったし」


「うーん、ざんねーん」


「ママと手を繋ぐのズルい。ボクも手を繋ぐもん」


「はいはい。魔力循環の意識は手放さないなら繋いであげる」


「わぁい」



 感覚ではまもなくゲートアウトしてくるはず。私のゴーストが囁く以下略。


 異世界のサキュバス。イケメンを(性的に)喰う全世界の女の敵。


 当世界のサキュバスならまだしも、よその世界のサキュバスとか殺すしかないわ。


 ……そう思っていた時期も、ありました。



「――!? これはっ? みんな、射撃は中止! どうしても撃ちたい場合は空に向けて魔力を放って! 彼女たちを撃つのはダメ! 絶対に撃つな!」



 なんてことだ。ゲートを通って現れたサキュバスたちは――


 幼女から熟女まで一様に――


 痩せこけて、今にも死にそうにボロボロの姿をしていたのだった……。




 【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

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