第96話 シナリオ『5−2』魔国の王子は男の娘

 あやうく他人の身体を傷モノにするところだった昨日。


 どうせここでの経験も、クリアしてしまえば元の身体の持ち主が目を覚ますはずなのだ。それなのに私が好き放題して初モノを奪っては色々と問題があるだろう。


 貴族としても、最後の貞淑は守っておいた方がいい。


 AやBは良くてもCはしない。つまりそういうコト。……表現が古いかもだけど。


 注意。

 生殖目的以外はコンドームなどの避妊具使用を忘れずに。私との約束だよ。

 同性異性に関わらずメイク・ラブするなら、性知識もちゃんと学んでおきませう。


 うーむ、前世でもきっとこういう経験はしていると思うのだけど。


 思い返せば前世の記憶でもゲーム上の聖女と魔女トリュファイナの絡みはお互いに蕩けるほど良さそうだった。ムラッときてこちらも思わず自家発電するほどに。


 フォーリタインと聖女の絡みもまた、コイツら一体何回イクねんと思うほどキモチよさそうだった。アレで妊娠しないとかホントご都合主義よね。


 ふーむ。まあ、ソレはソレ。コレはコレってコトで。


 さて、さて。



「今日は聖女となったアリサの慣らしと、フォーリタインの力の使い方の指導をするにゃ! 模擬戦闘ダンジョンはちょっと深めの階層に設定にゃー!」


「はーい」

「はい、御主人様」



 良い返事だね。でもね二人共さあ……。



「にゃあを抱き上げるのはやめるにゃー!」


「だって、お姉さまがちっちゃくて可愛くて、もう抱き上げるしか……♡」


「小さい御主人様の触り心地も幸せなのです。もちろん大人モード御主人様もナイスバディで神掛かって良いものですが。わたしは小さい子推しで、ひとつ」


「知ってるけど、さらっと特殊性癖を御開帳するにゃ! 世間の目は白いにゃ!」


「御主人様だけです。このような甘い気持ちになるのは。ああ……いい匂い」


「みゅうー! だからってわざわざ腋のニオイを嗅ごうとするにゃー!」



 なんだかしょっぱなから暴走気味です。昨晩は良く寝たし、そりゃ元気よねぇ。


 私、この(ダメな)子たちをちゃんと制御できるのかしら……。



 そんなこんなで私のダンジョンへ。


 深度は26階層。1−1〜1−5。2−1〜2−5。などと、各話は5話ワンクールで進むので26階層は『5−2』になるはずだった。


 別に『5−1』でもよかった。が『5−2』には無限稼ぎ隠しポイントがある。

 つまり某クソたわけダンジョンゲームでのハマン使用グレーターデーモン増殖狩りの如く、湧き出し『モンスター』を狩って狩って狩りまくるわけで。


 そこは、制作者側がわざと残したデバッグポイントであり、救済策でもあった。


 と言うのもそこに出現する『モンスター』はやたら回避が高い代わりにHPが低くて経験値が多い、逃走しない某はぐれメタルみたいな性質を持っていた。

 たしか記憶に残る設定では異世界から侵略してきたサキュバス軍団だったか。そう、私がなぜ『ビースト』ではなく『モンスター』と称したかの回答がコレ。


 いわんや、イケメンを強奪する女の敵である。この世界のサキュバスならまあ仕方なし。だが異世界からの侵略者なら。ヒャッハー、殺せ殺せー!


 ここで稼ぎをするかしないかで、今後の難易度に大きな違いが出てくるのはいうまでもなく。もちろんここで稼ぎをあえてしない剛のプレイヤーもいるが。


 しかしこちとらゲームではなく現実なので、打てる手はしっかり打ちたい。


 以上の理屈で『私のダンジョン、ユグドラシルギルティ、5−2』へ、私、アリサ、フォーリタイン、サンズ、護衛騎士一体で向かったのだけど……。


 なぜだろう。


 なぜ、キミたちがここにいるのかな?


 私はこう言ったよ。


『私のダンジョン、ユグドラシルギルティ、5−2』


 ――ってね。



「……だから、狩り中はあちこち一人で動こうとしてはいけないって言ってるの!」


「うるさいなー! ママがこの世界のどこかにいるはずなんだよ。匂うもん。さっきからママの良い匂いがするもん。こんなへんてこな世界、ママに焼いてもらうし」


「言ってることが滅茶苦茶で、しかもアルカードのママというか、第二妃殿下はラピス王国にいるでしょ! まったく、男の子なのに女の子の恰好しちゃってフリーダム過ぎる。……可愛いけどね。こんな可愛い子が女の子なわけないじゃない」


「ママのための恰好だから、リキに褒められても嬉しくなーい」


「もー」



 ……あれは、えーと。いや、まさかこれは。またこのパティーンか。


 うわぁー、と嘆息しつつ私は上を見上げる。

 いつの間にか、気持ち悪い陽光がさんさんと照らす野外に出ていた。

 人間目線で言えば、本日は晴天なり、といったところ。


 さっきまで自分のダンジョンの26層にいたのに。世界の強制力はかくも……。


 私は少し先で延々と言い争うようで実は仲の良さそうな二人を見やる。

 まさか彼らが二人合わせて登場とは思わなかったよ。

 本来なら4-1で一人、5-1でもう一人と出てくるはずなのに。


 このリハクの目をもってしても見抜けなかったわ。

 って、誰なのよリハク。このネタ何回使いまわしてるのよ。咬むわよ!?


 されはともかくとして。


 なるほど、二分隊の合同行動中らしいが……。


 先の会話の二人。

 ドーンフレア王国第二王子『万能』リキ・ドーンフレア。14歳(18)。当国王子。

 ラピス王国第三王子アルカード・ラピス。10歳(18)。吸血鬼&兎人族、男の娘。


 諫めているのが当国ドーンフレアの王子。フリーダムなのがラピス王国の王子。


 ……このラピス王国というのは魔族の国である。王はもちろん魔王と呼ばれる。


 アルカード・ラピスはラピス王国第二妃の子であり、妃は兎人族だったはず。しかも父王は吸血鬼で、つまり彼はバンパイアハーフ(吸血鬼×兎人族)となる。

 最大の特徴は男の娘であって、兎人族の血筋の影響でバニーガールの恰好とか最高に可愛い。あと、おちんちんが意外とデカい。エロゲー要素盛り沢山であった。



「……もしかしなくても、うちの血族のアーカードくんかもしれない」

「アルカード王子ではないのですか? お姉さまー」


「ううん、アーカードでいいの。にゃあの世界の、パパの眷属のドラクロワ伯爵と人間女性ミナ・ハーカーとの子。ダンピールバンパイアハーフで、私をママと呼んで、最近男の娘化した子なの」


「癖が強すぎでびっくりです」


「くんくん、くんくん。大好きなママの香りが一段と強くなってるよ……っ」


「みゅー。見つかって良かったような、悪かったような……」


 男の娘でウサ耳のバンパイアハーフとか、狙いすぎでしょ。

 兎人族は兎だけに発情するとスゴイ激しいらしいよ。それで男の娘とか……。


 注。動物界の兎の雄は、条件次第で年中発情が可能です。


 確か作中では射精管理器具をつけたプレイをしたような。これで愛撫しまくってせつなさみだれうちにする。エロゲーならではの展開で変な笑いが出そう。



「……もしかして、ママ? カミラママ?」

「ママじゃないけど、そうにゃ。ウサ耳のアーカードくん」

「闇の神様、この奇跡に感謝します! ……ママぁ! ママぁ!」

「はいはい」



 ロケットみたいにすっ飛んできて私に抱きついてくる。こちらの胸元にグリグリ顔を擦り込んで腋のニオイを嗅いでくる。キミたち、なんでそうピンポイントなの。



「一緒の棺で眠ったから、きっと転移しているだろうにゃーとは思ってた」

「起きたらびっくりしたんだよぉ。知らない国の王子様になってるし」

「そっかー」



 三歳児ボディの私は、抱き着く10才児ウサ耳男の娘の背をポンポン叩いてやる。



「ママ」

「ママじゃないけど、よくにゃあがカミラってわかったよねー」


「ママから、魔気と神気の混じる途方もなくいい匂いがするもん」

「はにゃー」


「ねえ、ママ」

「んー?」


「ボクを咬んで眷属替えをして。本当のママになって欲しいの!」

「国際問題になりそうなお願いをさらっと無茶振りするものじゃないにゃー」



 相変らずこの子はぶっ飛んでるね。歩く爆弾発言だわ。ボンバーマンかな?


 私は、キラキラした目で甘えてくる年上の『自称息子』を見つめた。




【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

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