第79話 エクストラゲーム?

 私こと、カミラはマイ棺の中でくうくうと眠っていた――はずだった。


 それが、現在、私は……。

 自分の眠る棺の傍で、全裸で立っている。


 またZE・N・RA! すっぽんぽん! 幼児だからって気軽に裸に剥くなYO!


 ただしその姿は半透明。どうやら自己認識では半透明ではあれど、セラーナを始めとするメイド隊には完全に透明の『認識外』にあるようで。


 つまり、アレですよ。寝ていたらたまに起こるとか起こらないとかのアレ。


 幽体離脱。


 まさか分離しちゃうとは、このリハクの目をもってしても思わなかった。


 ……誰なのよリハクって。咬むよ!?


 それで今の私って、一体どうなっているのだろう。棺の中の本体(?)が見たいけれど、見るのがちょっと怖い。というのも、吸血鬼の生態は魔力にこそあるから。


 吸血鬼の肉体は魔力そのものなのだ。実体なき実体。ゆえに鏡には映らない。


 しかして『そこに』私はいるのだった。


 別に哲学的な存在への問いかけではなく、本人的にも第三者的にも『私という個』が『そこにいる』という単純な認識についてであって。

 それが幽体離脱で自分だけがそこにいるという認識を得る羽目になったと。


 うん、理屈っぽいのでこの辺でやめるけど、そういうコトで。


 余談だが、神の肉体は神気である。こっちはどういうわけか鏡にも映る。


 さて、さて。


 ちっちゃい子供は、別に裸でも平気。羞恥心がまだ芽生えていないから。


 私には羞恥心は、ちゃんとある。でもその上で、誰も見えていないなら裸でも別に構わないやという気持ちもある。ああ、この解放感。タマランチ会長。


 とりあえずソファーで崩れた骨格標本みたいに眠っている死神のサンズの前で、旧き良き時代のヌードピンナップ女性っぽいポーズを取ってみたりする。うふふ。


 露出狂というのは都市伝説かと思っていたけれど、わりとそうでもないかも。


 でもまあ、一応服っぽいものは着よう。


 うーん、そうね。


 キャミとショーツに半そで体操服にブルマ、白ソックス&スニーカーでいいや。

 なんでそんなの着るのって?

 チビッ子体操服 with ブルマスタイル。ロマンですよロマン。


 前世での記憶。


 いつの間にか成人向け動画か二次元世界でしか存在を許されなくなったブルマ。


 諸君、私は半そで体操服&ブルマの女の子が好きだ。


 園児の見た目だけに首周りのエンジ色がポイントの半そで体操服(名札にカミラ)とブルマ。もちろん初期ハイカット。カボチャパンツ風のブルマは好みではない。


 知ってる? 後期のハイカットはカットが若干緩いのよ。なので履くなら初期に限る。ブルマは足が長く見える初期のハイカットこそ至高。もちろん異論は認める。



『にゃあ。幽体スタイルでお散歩なのよ』



 とりあえず寝ずの番のセラーナに声をかける。もちろん反応はない。何か書き物をしているようだ。せっかくなのでそーっと横から覗き見てみる。


『ハァハァ。カミラお嬢様の歌唱ショーは最高でした。朝からダンジョンに放り込まれてとにかくお嬢様のことだけを想って合流しようと彷徨いましたが、結局は問題解決のお手伝いも出来ずに自分を責めるばかりでした。しかし寛容なお嬢様はワタクシを赦してくださり、そしていつものようにお仕えしても良いと許可を下しりました』


 ほうほう、まあアレはどうにもならないよ。セラーナたちメイド隊は悪くない。


『しかし、われらがお嬢様の歌。アレはどこでお学びになられたのでしょうか。知らない言語、知らない歌詞、知らない楽器。そして、聞いたこともない曲。大音量での曲に心身が痺れ、凄まじい歌唱力にて心が虜に。気がつけばちょっとお漏らししていました。興奮で失禁したようです。おそらくはこの学院の少女たちも漏らしているでしょう。気持ちの高揚で気づかないほど刺激的かつ素晴らしかったので』


 異世界の歌が受け入れられてこちらとしても何より。お漏らしは考えものだけど。


『ああ、お嬢様の恥ずかしい局部のニオイが嗅ぎたい。心からの愛を込めてぺろぺろしたい。そうして幼女吸いがしたい。愛してます、お嬢様。ハァハァ♪』


 ……なんで突然そうなるの。恥ずかしい局部ってドコよ。もしかして……いや、そんなところ嗅がせないしぺろぺろもさせないよ。それは眷属のミーナちゃんの献身で十分すぎるほど堪能している。普通に幼女吸いで我慢しなさい。


 それはともかくとして。

 私はセラーナが社会的にアレな性質なのにはもう諦めがついている。


 この幽体で、どこにいこうかなー?


 と、ここまでは。

 ここまでは……良かったわけですよ。


 ……なんだろう。いやーな予感。ちょっと違う。いやーな気配、か。


 大罪の気配を感じる。なんどもやり合ったので察知できるようになっていた。


 意識して気を向けると、とたんに物凄い存在感が押し寄せて私を圧倒する。

 そして、むせ返るような、色香? え、色香ってどういうコト?


 方向は、大公家邸宅? いわゆるルナマリア嬢のおうち?


 まさかこの状態で、ダンジョンも構築せずに迎え撃たねばならないと……?

 お兄ちゃんの場合は、身内で、そして原因を吐露してくれたので戦わずに済んだ。


 が、今回は違うだろう。


 おそらくルナマリア嬢が大罪に憑りつかれたと見る。

 しかもこの気配。エロの気配。今回は七つあるうちの『色欲』だと推測する。


 どうするのこれ。百合百合ではなくレズセックスでもしろと? 幽体なのに?


 うーん……。


 ともあれマリーと合流して、ついでにアモル侯爵とも合流をするかな。

 幽体なのでこちらに気づいてもらえるかどうか不安だけど。

 いざとなったら魔力でコーティングして無理やり認識できるようにしよう。


 幽体でふわふわと移動する。ノックせずに壁抜けでマリーのお部屋にご案内。



「……んっ、カミラ、カミラ……んんっ。はぁはぁ……大好き……っ」

『Oh……』



 えーと、見なかったことにしよう。私は何も見ていない。見ていないったら。

 詳しくは言わない。

 彼女はベッドに寝そべって、ちょっと忙しそうにしていますね。


 私のことが大好きで、そういう目で見ているということは、うん、大人への階段を順々に登って行ってるね。成長したらいずれ同性ではなく異性に興味が移るよ。


 でも、異性の良さを知る前につまみ食いもしたいなぁ。性的ではなく、血をね。

 たまに忘れられそうなのであえて宣言するに、私って吸血鬼なのですよ。


 それ以上のコトは、子どもだから、難しくてわっかんなーい。


 とかなんとか思っていたら、なんと、他の部屋の少女たちも全員忙しそうだった。


 ああ、と理解する。

 大罪『色欲』の影響らしかった。


 なるほどねー、と思う。


 そりゃあね、私は平気だけど、幽体でもむせるような色香がルナマリア嬢の部屋より一帯へ無制限に噴出、それにアテられては若さも伴って自家発電もするわね。


 念のため一旦自室へ戻る。

 色欲の影響を受けたセラーナ以下メイド隊も、個々の発電事業に忙しそうだった。



『ダーメだこりゃー』



 というわけでアモル侯爵がいるだろう理事長室へ。

 まさか侯爵の身でありながら自家発電なんてしていないでしょうね。



『いないにゃー』



 うーん? アモル侯爵は不在……と。はて、どこに行ったのやら。


 しようがない。ここは想像魔法で解決させよう。


『空の雫』


 えーと、えーと。アモル・アモール侯爵はどこにいますか、と。

 あ、いた。

 大公邸のルナマリア嬢のお部屋?


 嫌な予感がする。彼女たち二人の仲は、特別なのだった。

 アモル侯爵が主でルナマリア嬢が従。眷属であり、それと同時に恋人関係。


 互いを理解し合い、愛しあう二人。

 そして色欲。悶々ムラムラハァハァが止まらない現状。


 つまりはそういうこと。ヤってるでしょ。子どもだからよくわかんないけど。



『にゃあー。お楽しみの邪魔をして馬に蹴飛ばされたくはないんだけどー』



 しかし、私の問題でもあるので、現場に行くしかないかな……。




【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

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