第41話 家族と遠距離通信。あとレベルアップ。

「それでね、今日は裏切者の傍系王族に逆宣戦布告してやったの!」


『あ、あまり無茶をせぬようにな? パパは心配でドキドキであるぞ?』

『そうよ、カミラ。自分自身の安全をまず第一に考えるのよ?』

『突拍子もないところがいかにもカミラらしいけど……』


「にゃふふっ。パパとママの娘だもん。それにお兄ちゃんの妹だもん。これくらい平気にゃあ。焦らず、驕らず、慢心せず。きっちり勝ちへのマージンは確保なのっ」


『うむ……そ、それでもパパはものすごーく心配であるぞ?』

『元気な姿をこの目で見るまで、私も毎日不安よ……』

『カミラ。いざとなったら、すべてを捨ててでも逃げるんだよ?』


「うふふ、パパ、ママ、お兄ちゃん。心配してくれてありがとう」


『姿は別の娘ではあれど、ちゃんと中身はカミラであるなぁ……。ああっ、抱きしめて頬ずりしたいっ。ワシ、カミラ分が不足して具合悪くなりそうである!』

『そうだわ。今度、地獄の別荘へ休暇にいきましょう。親子四人で、水入らずよ』

『その姿も可愛いけど、カミラのいつもの姿も見たい……っ』


「みゅう。ごめんね、転移したら違う女の子の中に入っちゃって。初めて通信を送ったとき物凄く驚いてたもん。でも、魔帝陛下も一緒にいてくれるから安心なの」


『事実は小説より奇なり、であるかぁ。まさか陛下とカミラが一つの身体を精神と肉体に分かれて支配するとは。陛下、娘を保護してくださり感謝します』

『魔帝陛下。娘がお世話になっています。御配慮に感謝にたえません。どうか幼き娘でありますので、これからも多少の礼に失するは御寛恕くださいませ……』

『へ、陛下。妹を護ってくださってありがとうございます……』


「魔帝陛下は、気にしなくて良いよー、だって!」



 ええと。一体これは何をしているかというと、転移ゲートの機能を一部利用したワームホール通信で実家と連絡を取り合っているのだった。


 姿が一時的にであれ変わってしまってはいれど、やはり父母やお兄ちゃんが恋しい幼女なのだった。転生してからというもの、みるみる精神の幼児退行が進んで自分でも本当に驚いている。ホームシックになるとオネショまでしちゃうし。


 それで何日間かダンマスとしての役目の合間を縫って、新たな連絡手段を構築、実用に至っていた。本体の身体がどこかに封印されて、パパ氏から貰ったGPS指輪も一緒に封じられたのでどうしようか悩んだ末に捻り出したアイデアである。


 まあ、ゲートを半端にオープンさせ、ゲートを通して通信スクリーンを出すアイデアの実現までは順調ではあった。が、通信にはまるで海外へ電話を掛けたが如くお金の代わりに魔力消費が半端なかった。さすがは星の裏側近くの遠距離だった。


 あと、姿が変わってしまって、パパ氏やママ氏やお兄ちゃんに私がわからないかもと心配もした。何せ全然別人の姿である。これはさすがにハードルが高いだろう。


 が、これは杞憂だった。


 最初こそ驚かれたが、これまでの経緯を話すとすぐに理解してくれて、姿の違う私を娘や妹と認識してくれるようになっていた。なんて温かい家族なのだろうか。


 魔族だからって、愛に欠けることなどない。それは人類特有の偏見だった。


 たまに、この私を取り巻く『現在の世界』が、脳を委縮させ、ベッドに寝た切りになった『私』が見る今際の夢かもしれないと思うことがある。


 なればこそ、思う。

 もしこれが夢であるなら、決して覚めないで、と。


 そしてそのまま幸せな夢見のまま死にたい――なんてね。


 あはは、と笑っちゃう。

 そんなわけないよ。アレだよアレ。


 ところがどっこい……夢じゃありません……!

 現実です……! これが現実……!


 うん。そう、コレ。


 某イチジョーさんも御満悦だよ。これは、まごうことなき現実。伊達に赤子のときに父のチチと母のチチを吸ってない。赤子だから、オムツに当然粗相する。何度取り換えてもらったことか。ピーキーな性癖が目覚めそうになるくらい明らかな現実。


 まあそれはともかく。


 惜しみ、惜しまれつつ本日の実家への通信を終了する。

 その後は、ちょっと感傷的に、にゃー、にゃー、にゃーと呻る。


 どうもこの口癖は直りそうにもない。

 にゃあ、なのだった。



『カミラの家族を見ていると、不思議とホッコリしますね』

「陛下のパパとママは?」

わたしの父母は長い年月のうちに、その精神を星の意思と融合していきました』

「いなくなっちっゃた?」

『いいえ。わたしの父母は、いつだってわたしやカミラ、その他の人々の傍にいるのよ』

「おおー」

『うふふ、滅多にしないわたしの父母のお話をしてしまいました。ナイショですよ?』

「うん!」

『イイコですね。それでは次にすべきタスクを消化していきましょうか』

「はーい♪」



 魔帝陛下の気遣いにより寂しさから元気を取り戻した私は、収容所へと向かった。



「以前みたいに、すぐに収容所へは行かないように気を付けてるの」

『……と、いうと?』

「すぐにいくと、おなかからはみ出たウンチのニオイがもう、スッゴイの!」

『ああ……そういうこと……』

「収容所は回復施設。死神絶対お断りルーム。ここに担ぎ込まれたら、どんな傷でもどんな病気でも、腕が取れちゃっても、上下真っ二つになっていても、微かでも生きてさえいれば治癒し、回復し、平癒するの。カミラのダンマス特権なのよー」

『そうね、ダンジョンマスター特権ね』

「で、そろそろみんな治ってきていると思うので、ペナルティーを加えちゃう!」

『叩き起こして働かせるの?』

「えっとね、レベルを貰うの。エナジードレインしちゃうのよー!」

『おおぅ……』

「扶桑大和クニの兵士たちより三倍レベルが高いし、あと、裏切者の手勢だから」

『手勢だから……?』

「扶桑では一人当たり4だけ吸ってたけど、ここでは10倍の40ほど吸っちゃう」

『恐ろしいわねぇ……』

「それで十人いるから全部で400レベル貰っちゃうにゃあ!」

『この一件でカミラは随分強くなりそうね。うふふ』

「にゃっはーっ」



 ◆◇◇◆◇◇◆



 内訳。

 今回、リタイア兵から得たエナジードレインは400。

 加えて、先日の不敬メイドから吸い上げた28×2=56。


 カミラの転移当初はレベル600辺り。

 ちなみに大罪『暴食』を降してその影響で更にレベルが向上している。


 今回の加算によって、彼女のレベルは1000の大台を超えた。


 魔族は人類とは違ってレベル制限は途方もなく高い。ここだけの話、神族の成りそこねが魔族、という説があるほど。それくらい感覚的に無制限に近い。


 一方、人類は基本限界レベルは150で、人としての最終限界レベルは1500であった。つまりカミラは人類の最終限界にあと500まで迫っている。


 エナジードレインはチート。うん、わかんだね。


 一方、魔帝スレイミーザ三世は出力が上がらないだけでレベルだけは神レベル。




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 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

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