第39話 女王宣言……の前に
「にゃあ。それじゃあ民衆のハートをがっちりキャッチの準備しないとね!」
『EL・DO・RA・DO』
想像魔法にて録画機を生成する。
すると、だった。
最大3500万画素、8K規格で録画ができる小型ハンディカムがポンッと作り出された。オマケに三脚も同梱されている。なお、動力は魔石。うーん、ファンタジー。
追記、音声は8.2chで録音できるらしい。なんだか物凄いものが出てきちゃった。
だって、前世の話、ひと昔前のプロ仕様写真
「録画してもお披露目できないと意味ないにゃーっ! そーぞーまほーっ!」
『EL・DO・RA・DO』
続いて出来上がったのは、いわゆる映写機めいたモノ。その正体は一見すればドローンのようで、実は空気中の塵を反射投影させる特殊な映写機だった。
作り出した映写機は十台。
一台一台が録画した映像を約300平方メートルの大きさで鮮明に再生する。
なお、アスペクト比はもちろん16対9。
平面投影とはいえ質感を追求したため思わず触りたくなるほどリアルだとか。
……思わず触りたくなる、かあ。8Kの画像ってそんなに鮮明なの?
ちょっと試してみよう。シュババッと準備に動くよ。
『何をするのかしら?』
「実際に使う前に試験してみるの」
『ああ。そうね、リハーサルもしておいた方がいいわ』
カチャカチャと今し方できたばかりの小型ハンディカムをセッティングする。
よし、録画スタート。
走ったり飛んだり、色んなポーズをとってみたり。変怪してみたり。
ちなみに私が操ってるこの子、ベリアル魔王国の王女ミーナちゃんはチャイナ風ドレス路線を外さず、深紅の生地に金糸の鳳凰が刺繍されたものを着ていた。
『人族で例えれば十歳女児なのに、まだ僅かな膨らみもなくぺったんこ胸よねぇ』
「陛下はぺたんこは嫌? ミーナちゃん、とっても可愛いよ」
『私の大好物よ?
「カミラもぺたんこなの」
『今すぐうちの子にしたいわぁ』
「にゃふふー♪」
そう、胸に貴賤はないのだった。
ママ氏の控え目おっぱいも、ミーナちゃんのぺたんこ胸も、セラーナのデカ胸も。
あまねくすべて良し。小さくて良し、大きくて良し。
私に良し、あなたに良し、みんなに良し。
夜(世)はなべてこともなし。
……あれ? えーと、なんだったっけ?
ああ、そうそう。
ついさっきテキトーに撮影した
今度はドローン型映写機を飛ばして――
ダンマスルームいっぱいに動画を再生させてみようと思う。
「にゃはっ。デっかい! ペタンコ胸が大映しに! デっかいのにチーさい!」
『再生サイズがルーム全体になってるからじゃないかしら……可愛い胸ね♪』
「にゃふふ。えーと、等倍に、と……」
随分と当人を前に(聞いてないと思うけど)失言をブッパしまくっている。
それはともかく、等倍に調節すると、だった。
「すっごい鮮明! 可愛いにゃー。お持ち帰りしたいにゃーっ」
『本当にね。でもこれ、中身が違うからそれで醸される表情の違いもありそう』
「うーん? どゆこと?」
『中の人が違えば、表に出る気配も違うということよ。カミラも可愛いってコト』
「にゃあ。可愛い大好き♪」
Kwaiiは正義。つまりはそういうコト。
とまれ、映像の私――ミーナちゃんの姿である。
……アレだね。お姫様だね。実際、王女なのでお姫様なんだけど。ついでに公爵家令嬢の私もお姫様なんだけどね。これはヤバいね。ヤバすぎる(語彙力)。
外出時は絶対に一人で行動させたらダメなタイプだね。
まず美人過ぎる。中に私が入っているのを無視しても、儚いというか美人薄命みたいな気配が凄い。思わず護ってあげたくなる。あと、ちょっといぢめたくなる。護ってあげたいけど泣き顔も見たくなる美人さんってたまにいるでしょ。あんな感じ。
そして可愛い。Kawaiiのである。頭部のメリノー種風二本悪魔角もチャーミング。
こんなのその手のフェチがこの子を見つけてしまったら絶対に攫うね。チャイルドマレスターしちゃうね。これは将来が楽しみ。私がこのまま攫っちゃおうかしら。
『念の為に口出しするけど、攫っちゃダメよ?』
「みゅっ。心、読まれちゃった!? わかったのっ、攫わないっ!」
『素直でよろしい。うふふ』
映像の私――ミーナちゃんはロングの黒髪を軽く手櫛を入れて、まるで今撮影に気づいたように口元だけ笑みを作るアルカイックスマイルを浮かべている。
あれ、こんな動きしたっけ、と思ったがまあ良しとする
「さて、試験録画と映写も確認したので、女王宣言の声明文を作らないとなの」
『
「はい、陛下!」
机に紙とペンを用意して、下書きを始める私。
ダンジョンでは、とうとうリタイア者が出ていた。
まだ地下三階である。
耐爆極振りの囮の警備モンスターごと粉塵爆破トラップに引っかかって1パーティが全滅した。具体的にはピタゴラスイッチの如く、爆風で吹っ飛んでその先に用意していた槍衾に剣山に刺された生け花みたいになってリタイアしたのだが。
即死モノではあれど、死の瞬間は訪れない。その前に収容所にぶち込むから。
前回の扶桑大和のクニ平城氏のダンジョンでの処理と同じ。自分としては収容所と聞くと某第三帝国的な連想をなぜかしてしまうが、実際は救命回復所だった。
ダンジョンマスター権限により、ここに入れられた者は、その収容所にいる限りはどんな致命傷を受けても死ねなくなる。むしろ修復、治癒、回復させられる。
まあ、回癒したらペナルティーで裸に剥いて発電所でひたすらギアを回すぐるぐる地獄が待っているのだけど。ちゃんと看守スタッフも置いているので雰囲気は満点である。モヒカンマッチョ、鞭はビシバシ、火炎放射器はごおぉっ、なのである。
精々、私のアトラクションを愉しんでいただきたい。うふふ……。
悪人めいた微笑みを浮かべ、そうこうするうちに魔帝陛下の監修のおかげもあって、女王宣言声明文も仕上がっていた。
この文章を頭の中に叩き込み、幾度かリハーサルをして、いざ本番である。
魔王都の上空に突如現れる、十基の巨大映像。ミーナ・イシュター・ベリアル。
威風堂々として(演出)、高らかに女王宣言を発す。そして裏切者を告発、挑戦状を叩き込む。王都民には人類との戦いの現状と、対策、民への対応を語る。
要は、裏切者の傍系のアイツより私の方が強いから従え。そうすれば助かる。
これを宣言するわけで。
この世界に於いての教養分布や政治状況を鑑みれば、国家元首とは最強でなければならないのだった。弱き者に人は従わない。弱者の言葉に耳なんか傾けない。
武力で、知力で、財力で、美しさで、その他色々。
他者より圧倒する強烈な何かがないと、人は従わない。
程度に差はあれど、これはどの世界でも同じ。
ある程度文明が熟成された前世世界でも根底は同じ。
もちろん、社会的弱者の一形態、無敵の人ともなれば少し違うのだが。
『社会が自分に厳しくあるのなら、自分も社会に対して厳しくあっても良い。
お前(社会)が俺を蔑ろにするのなら、俺もお前を相応の対応しても文句ないよな』
これが無敵の人が最終的に行なう凶行の根底となる。
就職氷河期のあおりを一番キツく受けた、40代50代が結構危険かもね。
50・80問題。50歳の無職、80歳の年金生活の親に依存する。
企業の人材不足は20代30代だけを見据えていて、氷河期世代は見ていない。
ヤバいよね。ホント、ヤバい。語彙力ってふざけてる場合じゃない。
こうなればどんな力であっても制限を受けつけず、無敵の人は社会に牙を剥く。
しかし、基本は。
世界は焼肉定食――定番のボケをかましつつ、とまれ、弱肉強食なのだった。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます