第37話 ボコスカウォーズ
進め進め者ども。邪悪な敵を蹴散らせ。進め敵の城へ。
なんてね。こっちが攻められるパティーンなのでちょっとアレだよね。
別に私たち(with 魔帝陛下。王女 2 in1)は邪悪でもなんでもないし。
さて、さて。
からっぽの彷徨う鎧を鹵獲し、生意気なメイドに制裁を加えて。
その後、謀反を起こした王族傍系派の面々がすぐに城制圧に来るかと思えば。
来ないね。慎重だね。兵は拙速を貴ぶと言うけれど。
略奪王――僭王は意外と慎重派であるらしい。
当たり前だけど、これは相当根深く、密やかに計画を練って下剋上したっぽい。
と、思っていたら120の兵と120の彷徨う鎧が迷宮城の正面門前に整列を始めた。
その様子をダンジョンコアを通して観察する、見た目十歳女児が一人。
彼女の存在は、私と魔帝陛下が肉体と精神を支配し、当の本人は精神を極限まで摩耗させている。身体は私の特性もあって元気だけど、彼女の精神体は風前の灯。
まあ、夢魔族の魔帝陛下が保護してくれているので、いずれは回復すると思う。
『……ふむふむ。弱いなら弱いなりになかなかの精鋭兵と言ったところかしら』
「にゃあ。鑑定したら平均で350レベル辺りなの」
『カミラ、あなたのレベルはたしか600を少し超えたくらいよね』
「そーなの。成長期だからもっともっと上がるよ!」
『そうね。最低でも人類の限界突破後最終到達点、1500は超えてもらわないと』
「陛下はどれくらいつおいのかなー?」
『
「4段階に変身して、そのたびに爆発的に強くなったりするのにゃ?」
仮にそうだとすると、推定レベルは1億5000万から2億くらいになるんだけど。
ソース元は、職場の上司として最高と噂される某ドラゴンなボールのフリーザ様。
もはや高位の神さまレベル。
ちなみにこの星のレベルは3兆で三つの月のレベルは平均して5000億ほどらしい。
『あら、よく知っているわね。そうよ、大当たり。でも、今は……』
「この身体の持ち主の精神と融合してヨワヨワ陛下?」
『そうなるわね。出力はほとんど無いも同然。この子、本当に身体から何から、すべてを召喚に捧げてしまっていた。でも
「悪夢ぱくぱく?」
『
陛下はホント幼女が好きだね。遠くの国とは親交を持ち、近くの国とはドンパチする遠交近攻路線を踏まえるならそれもいいかも。ほとんど星の裏側の国だし。
話しているうちにダンジョン討伐隊(仮)が私のダンジョン城に突入を開始した。
そして入り口でいきなりの大爆発。どごぉぉぉぉぉぉっ!!
「にゃはははっ。引っかかったっ。出入口は一番に警戒しなきゃダメなのー♪」
『子供ってこういうところが無邪気でエゲツないのよねぇ……』
私はイタズラの成功に喜んでぺちぺちと幼女ハンドで拍手する。
一体、何をしたのかというと。
突入した直後、第一の広間は指向性地雷原なのだった。
対人指向性地雷クレイモアをステルスでドーンと百個セッティング。
たった50レベル帯のトラップなので、怪我はしても死にはしないと思うけど。
当然、人間にやったら死屍累々大惨事。単純にセムテックスに釘箱でも大惨事。
それでも見事、討伐隊、出鼻をくじかれる。
大混乱。怪我人を引き連れていったん退却。死人はいない模様。
小一時間ほどかけて、回復魔法や癒しのポーションで怪我人の治癒を図る。
六人部隊の隊長たち20人と総隊長、そしてアレはゴーレム技術者の責任者だろうか、小柄な体躯の白衣の男が数人、寄り集まって何やら相談していた。
その結論が、スカウト能力を持つ斥候が先行し、その後に討伐隊が続く形となる。
ダンジョン探索では良くある、斥候先行型だった。
「レベルの差は開いているけど扶桑の兵たちの方がまだ優秀なの。彼らは冒険者としてもプロだった。ちゃんと最初から斥候を用いて慎重屋さんだったの」
『土地が変わればおのずとやり方も変わるわ。まず、士気の高さをダンジョン突入という形で示したかったのよ。
「うん」
『そこをちゃっかり狙っちゃうのが、カミラ。あなただった』
「にゃあっ。カミラよりレベルが低くても、相手の士気の高さは怖いのよー」
『……そうね。その通り。うん』
陛下は何か言いたげな様子。
だけど、こちらとしてはどうしてそこで言葉を止めたのかはわからない。
もしかして、戦いでは正しい行ないではあれど、見た目三歳児のお子ちゃまの私が行なうにはエグ過ぎるとか、そういうことだろうか。
しかし子供のエグさは承知済みだし、私が転生者なのは知っているはず。
はて、わけがわからないよ?
『……カミラ』
「はい、陛下」
『あなた、絶っっっ対に
「にゃあ?」
『国の元首たるもの、政治感覚も大事だけどまずは戦争に強くないといけないわ」
「にゃあー」
『そのお返事は肯定と受け取るわね?』
「みゅう。でもパパとママとお兄ちゃんともずっと一緒にいたいの」
『数千年くらいは余裕で待てるから、安心なさい』
「うんっ」
『うふふ、良い子ね』
なんだかトントン拍子に私の将来が形成されていく。まあ、数千年のモラトリアム期間をくれるというので後はどうにでもなるだろう。野となれ山となれなのだった。
さあて、来週のサザゑさ――もとい、次の罠は。
テレポーターでした!
ダンジョン城外、地上四階相当の高さへ纏めてポイ捨ての刑ナリ。
下手したら死亡するけど、レベル350平均なら骨折程度で済ませられるだろう。
そして彼らはふりだしに戻る。
「むぷぷーっ! あの広間はレビテーションで入らないと一分後に転移罠が発動しちゃうのっ。はーい、おつかれさまー♪ もう一度入り口からやり直してねっ」
『あまりにも初見殺しすぎてこれには苦笑しかないわ』
「にゃはははっ」
『生かさず殺さず、的確に士気を低下させるのが目的なのね?』
「最終はぐるぐる発電ペナルティーを負ってもらわないとだから、死なせないの」
『手段を選ばないところがホント支配者向きの性格よ。うふふ、こんな稀有な宝石みたいな子と出会えて
その後、ダンジョン踏破隊(皮肉交じりに命名)はマジックブラスターを受けて片っ端から魔法使いを石化麻痺毒恐慌化させたり粉塵爆発で踏破隊を半壊させたり。
再びテレポーター、金属だけ溶かすスライムプール、猛烈にエッチな気分になるラブ&ピースな毒ガス(それはもうスゴイことに!)と、散々な目に合わせてやった。
いやあ、ここの兵士たちって種族の違いはあっても意外と激しいご様子で。
ランパの光景は、陛下によってほとんど見られなかったけれど。
あ、でも【┌(┌^o^)┐ホモォ...】のAAは置いておきますね。
不思議と慣れた感じに同性同士で『アッー』していたとのことなので……。
――さて、それはそれとしてと区切りをつけて。
斥候の警戒をすり抜けて、どうしてバンバン罠にかけられるのかを解説したい。
実はダンジョン踏破隊の斥候たちは能力をフルに、意外と善戦していた。
言葉の通り、平均350レベル帯にしては、よく頑張っていた。
ただ、彼らの処理能力をぶっちぎる罠の数があったこと。二重罠、三重罠は当たり前。お邪魔虫な警備モンスターたちの大襲来。要するに物量に押し潰されていた。
私の中で立案している計画は、着々と進む。
これらはすべて必要あっての遅滞戦術。かれこれ三日が過ぎた。
第一段階、ボコスカウォーズをボコスカさせない。
時間は私を味方する。時間とともにダンジョンは強化されていくのだから。
第二段階の開幕はもうすぐ。
『カミラ、それであなたの考えるこの騒動の着地点を教えてくれないかしら』
「はーい、陛下。えっとねー」
私は計画の全容を魔帝陛下に開帳した。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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