第24話 この世界での画期的な探索法?

 ※素人の考えたクリアリング描写に対して、真剣に受け止めないよう願います。



 感嘆、いや、半分呆れも若干入っているかもしれない。私は冷静に立ち返る。


 何がというと平城氏当主、平城為朝ならためともの取ったダンジョン攻略法についてだった。


 この人、実は前世記憶持ちの転生者だったりして。そんな勘ぐりさえも浮かんでくるほどだった。が、私の鑑定スキルでは一言もそのような節は記載されていない。


 なるほど、彼は天才なのかもしれない。


 と、ここまで引っ張ったのですが。様子をダイジェストで見ていただこう。


 現在の彼らの位置、地下二階、土の相区域に入ったばかり。



「カミムラ風水士、現在の区域の相は何か」

「はっ。土の相でございます」

「うむ。先遣隊の情報では、地下二階より怪物に属性が盛り込まれるようになる。各自木属性か火属性付与のお守りを装備せよ。斥候は木属性と火属性の二種を装着」

「承知いたしました」

「よし。それでは状況を再開する。三部隊、探索を始めよ」



 ここまでは、まあ、ダンジョン探索としてはわりと普通ではないだろうか。

 区画の属性に相生相克――要は五行相剋に従った対応策をキチンと見せている。


 もちろん私は冒険者のダンジョン攻略など、転移から始まる今回の騒動でしか知るところではない。が、どうも前世の自分はFPSゲームを嗜んでいたようで、その繫がりで特殊部隊のルームクリアリング法を動画サイトなどで学んでいたのだった。


 まず、彼らのダンジョン探索は斥候を組み込んだ3部隊を中心に運用されていた。


 六人一組、つまりクソたわけ系ダンジョン探索ゲームウィザードリィでの一単位シックスマンセルではあるが、先頭は斥候、次いで弓武士、太刀武士、魔術師、神官と続く。殿には弓武士を配置。


 つまり陣形はこういう形となる。


 前方←『斥候』『弓武士』『太刀武士』『魔術士』『神官』『弓武士』→後方


 サイコロの六の目を横倒しにしたような陣形ではなく、一本線に並んで単縦陣行動する。


 特徴的なのは先頭の斥候だけが周囲を探るのではなく、耳目探知は必ず全員で当たり、その中でスキルを行使しつつ中心的に斥候が周囲に探りを入れていた。

 前後二名の弓武士は前方後方の先制攻撃の要である。隊長の太刀武士は魔術師と神官を守り、回復は神官が担当、範囲攻撃は魔術士に一任となる。

 なお、戦闘になれば斥候は後方へ下がり、太刀武士が最前面に上がる。


 そうして面白いのが斥候の動きだった。


 ダンジョン内の道の角に来るとそのまま真っ直ぐコーナーに出るのではなく、例えば右に折れ曲がる角の場合は、左へと迂回しつつ右の死角のクリアリングをする。

 この動きは軍などの特殊部隊が行なう『カッティングパイ』と呼ばれる動きに酷似していた。戦闘態勢のまま角から一歩ずつ離れてクリアリングするのだった。


 四辻は前面の斥候と弓武士が担当。左右の角へは互いに背を合わせて対応。カバーは後方の弓武士がこのときだけ受け持つ。全員即時攻撃の構えである。


 以上がダンジョン路での基本動作となる。


 で、次。


 玄室での突入方法。


 まずは斥候が玄室前の扉の罠確認をし、鍵がかかっていればこれを解除、いつでも突入できる準備をする。そうして弓武士が扉の両サイドに付く。なお、矢は即放てるようにつがえてある。突入、扉をあけ放ち、中へ凸する――と思ったらこの人たち、スタングレネードそっくりの魔術を魔術士に内部へぶっぱさせるのだった。 


 天を突くような爆音と凄まじい発光。まるで轟雷。どうやら極限まで魔力消費を落とし、一瞬の敵の隙を作るためだけに特化された例外的な特殊魔術であるらしい。


 その消費、基礎火炎魔術を一発撃つに対する二十分の一の消費でしかない。


 ならば戦闘中でも特定の合図を元に放つのもアリかと思えば、魔力消費を極限にまで落とした上で強力なスタン効果を得られる反面、無駄に長い詠唱が必要になるようだった。どうも周囲のマナを吸い取って増幅し、補助とするための詠唱らしい。


 とまれ、スタン効果の魔術を部屋に撃ち込んだら、扉の左右に待機していた弓武士が左右に互いにクロスしつつ内部に素早く侵入、制圧点を探す。


 これは簡単に言えば、敵を射撃しやすい位置取りを確保する行為。


 そうして予備部隊を残した他四部隊がなだれ込む。その勢いは某エルダースクロールオブリビオンDLCに出てくるナイツオブナイン状態である。叫んで凸である。


 ほぼバーサーカーみたいな感じで一気に玄室内部の私のモンスターを討滅する。

 さすがは首狩り族。キリ術が半端ない。次々と私のモンスターの首を落とす。

 もはやアレである。島津家原産の妖怪首おいてけ。あらまあ怖い。


 もちろん、これは低階層だからできる行為だと彼らも承知しているはずで。


 一気に叩くのは格下相手の戦闘時間を短縮、自分たちの体力の浪費を抑えるためだと推測する。戦闘は長引けば、それだけ体力も精神も消耗が大きくなるのだった。



「なかなか、やるのよー」

「まったくもって左様にございます」


「カミラの警備モンスターたちが翻弄されていて、ちょっともどかしいー」

「はい。大変にもどかしゅうございます……」


「でも、次の階からはそんなに甘くはないの。うふふー♪」

「悪役ムーブでございますね。うふふー♪」



 まあね、まだ地下二階だからねー、と余裕を保つ。


 だけど、これがまた。意外と平城為朝サイドも健闘するようで。


 たかがレベル100程度のオジサン武士集団と思うなかれ。

 彼らは最精鋭兵であり、優秀な冒険者でもあった。


 なんと、推奨レベル150以上の地下六階まで彼らはやって来たのだった。


 最下階まであと二つ。現在の私のダンジョンは地下八階構成となっている。


 ――と、ここまで彼らを持ち上げてみたのもわけがあって。


 惜しむらくに、彼らは地下六階最初の玄室であえなくエンドとなっていた。


 上げて落とすのは、話の基本の一つなのよ(無邪気な笑み)。


 予備兵もすべてを投入するも、一体のオーガキングと九体のハイオーガ、三体のロックドラゴンにはなすすべもなく逆鎧袖一触されてそのまま収容所へ。



「ボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!! 超! エキサイティン!!」

「バトルドォォォォォムッ!!!」



 あ、はい。座布団を投げるのはどうかご遠慮くださいませ。


 テンションが上がって事前に申し合わせていたセリフをぶん回しただけです。

 セラーナはもちろん某ツクダオリジナル謹製のバトルドームなんて知る由もなく。



「思った以上に頑張っていたねー」

「はい。大変良い観戦でございました」



 侵入者はダンマスとして避けられない試練のようなものだった。が、その結果には私はおおむね満足していた。この一帯では最強と目される人物を下したのだから。


 席を立ち、私たちは彼らを保護する収容所へと向かう。

 もちろん各種ペナルティーを与えるためであった。

 出来れば平城氏当主の為朝とは少しOHANASHIしたいところ。



「にゃあ。こーんなちっちゃい子がダンマスと知ったらどんな顔するだろうねー」

「危険ですので、私たちの固有スキル、魅了の使用を決してお忘れなきよう」

「うん、わかったー」



 おそらく重症重体のオジサンズで死屍累々になっているだろう収容所の扉にセラーナは手をかけて開け、私は一拍置いてから入室をした。




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 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

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