第21話 またまた侵入者!!

 ※前回ダイジェスト

 ダンジョン運営を始めてすぐ、私のダンジョンは武士っぽい少年の侵入を受けた。


 後で知る話。彼は修行のみぎり、運悪く具足大鎧装備での遠足とおあし(マラソンのこと)中にこのダンジョンを発見し、好奇心に負けて一人で中に入ってしまったという。


 迂闊すぎる。少なくとも単身でダンジョンに入っちゃダメよ。命は大事に。


 あえなくも、侵入者の少年武士は、私のウルフたちに囲まれて倒されてしまった。


 その後、彼を安全区域の収容所へ転送、そこで回復をする。

 ペナルティとして血とエナジーレベルを頂き、ついでに身ぐるみを剥ぐ。


 そうして回復後にパンイチで、厳密には褌一丁で外に放り出した。


 一応、このダンジョンへの恐怖心を擦り込んでおいたのでもう来ないだろう。


 え? ひどい? うーん、そんなことないと思うなぁ。


 実際のダンジョンだと死は絶対であり、遺体はダンジョンの肥やしとなる運命。

 私みたいに甘っちょろくペナルティーだけで済ますなんてまずあり得ない。

 某ドラゴンなクエストのように死んだら教会まで自動転送とか、ないからね。



 さて、数日後。私はダンマスとして龍脈からの気を汲み上げを管理し、ダンジョン内で外気と混合、練り合わせて精錬し、ダンジョンコアへと収集させていた。


 にしても、思いの外この地に流れる龍脈は上質らしく、たった三日でダンジョンの地下二階を建造することが出来た。これにて螺旋精錬が発動し、より高純度に力を貯め込めるだろう。まさにダンジョンマスター冥利に尽きる。嬉しいなあ。


 と、まあ。以上の出来事をGPS魔道具指輪を使って自宅に連絡を送っていたら。


 新しくセットしていた某宇宙戦争暗黒卿のテーマがダンジョンコアより流れた。


 てーんてーんてーん、ててぇてーん、ててぇてーん。の、あのメロディだった。


 私はため息をつく。またもや侵入者が現れた。それも4人パーティの。



「お次はどなたー?」

「どうやら、現地の冒険者たちのようです」


「どうして冒険者とわかるの?」

「土地の貴族が派遣した兵にしては、個々の装備が貧相に見受けましたので……」

「そう言われて見てみると、前回のあの子の大鎧に比べるとみんな貧乏くさいかも」



 なるほど、それで冒険者と予想を。

 いずれにせよ。

 偶然見つけたのか、それとも以前の少年の証言を受けてやって来たのか。


 ダンジョンを護る警備モンスターと遭遇した際にどう反応をするか見てみよう。


 パーティ構成は、簡易胴丸――腹巻の太刀武士、次いで軽装弓武士、いや、具足を着けていないので弓術士か。あとは神官と魔術師といった感じ。


 若い四人組だった。前回の少年よりは歳を重ねているが、二十歳未満であろう。


 種族は順に、ヒューマン男、ハーフエルフ男、ノーム女、フェアリー中性と、ダンジョンコア越しの鑑定で判明した。平均レベル40。強いか弱いかというと弱い。



「人類の観点では、あの青年たちは中堅辺りの実力を持つパーティでございますよ」

「そうなの?」

「人類の一応のレベル限界は150ですが、大抵の場合は一生を掛けても80レベルもいけば良い方でございます。もっとも、扶桑では違うかもしれませんが」

「首狩り族の国だものねー」

「はい……」



 私たちはダンジョンコアを通して警備状況をリアルタイムで観戦する。


 どうやら低レベルは低レベルなりに上手く連携を使ってダイアーウルフのパックを撃退し、また、次に遭遇したゴブリン小隊も危なげなく蹴散らしていた。


 が、最初の玄室のオーク軍団にて、あっさりとやられてしまっていた。



「やっぱり、よわーい」

「左様にございますねぇ……」



 参考程度に、吸血鬼は基本的に長い長い夜の生を受けているため、レベルは100を下回ることなどない。そして私はパパ氏とママ氏の血統と魔力を受け継いでいるため少しだけレベルは高い。現在、レベルは350ほど。セラーナは200ほどだった。


 ひとまずは収容所へ回収された4人の様子を見に行く。オークたちの無茶苦茶なパワーで粉砕された彼らは見るも無惨なスプラッター姿になっていた。


 寝台からジクジクと垂れる血液、体液、その他モロモロ。


 美味しそう、と思うのは私が吸血鬼だから。

 人類だと顔を背けるゴア表現で、モザイク必須となろうもの。


 そんな18禁Z指定残虐手当な様子ではあったが、この収容所の寝台に寝かされた以上は死神に熱烈求愛されようと絶対に死ねない。ドンドン回復させていく。



「にゃあ。それじゃ、ペナルティー!」

「はい、お嬢様っ!」



 彼らの身体に触れて、一人ずつズキュゥゥゥンと血を頂いていく。

 ついでにエナジードレインもする。私が4レベル。セラーナは1レベル。

 なお、フェアリーは種族的に小さいので血を吸うのは少量でやめておいた。



「さあ、しまっちゃいましょうねー。ドンドンしまっちゃいましょうねー」



 あまり具体的なのもアレだけど、ぼの○のに出てきたしまっちゃうおじさんみたいなセリフとともに、セラーナは彼らの装備を容赦なく剥いでいく。


 繰り返すに、厳しいようで、これでも甘々のペナルティーなのだった。本当ならばダンジョン内で無惨な屍を晒して、時間が経てばそのまま吸収消失だから。


 一応、男はパンツまたは褌だけ残して、女の方はタンクトップ的な下着も残す。

 ついでに彼らの所持金を半分にして、そして戻しておいてやる。冒険者を素寒貧にすると野垂れ死にしかねない。彼らは体の良い根無し草の便利屋だから。


 おお、〇〇よ。死んでしまう(死んだとは言ってない)とは情けない――なんてね。



「驚きなのは……」

「うん? どうしたのセラーナ」


「ハーフエルフの弓術士が、男性でありながら女性下着をつけていたことです」

「オトコのムスメと書いて、男の娘だったのかも?」


「そのようなセカイもあるのですね……」


「可愛かったら些細な問題なのよ。おちんちんのついた女の子だね」

「そ、そのようなものですか……?」



 私たちは寝台に横たわって回復中の男の娘(と思われる)ハーフエルフを見つめた。

 侵入時は注視していなかったけれど、男の娘として見てみるとナルホド趣深い。


 転生前の世界での戦国武将など、戦場に女性は連れていけなかったので小姓に化粧を施し、ときには女装までさせて『アッー』な行為に耽っていたという。


 関連しているかはともかく、武田信玄などは男の恋人への浮気言い訳恋文とか、なかなか酷いものを思い出してほくそ笑む。薄い本が分厚くなりそうな展開である。

 とまれ、こういう男の娘な文化も、この扶桑では当たり前に受け入れられているのかもしれない。まあ、知らないけどね。でも当たらずとも遠からずな気がする。



「いずれにせよ、回復が完了次第お外へポイなの。もう二度と来ちゃだめよ」

「ダンジョンを通しての、ある種の異文化交流は色々と考えさせられますね……」



 おっとと。そうだった。


 忘れてはいけない。前回の少年との関わり、または繋がりを調べないと。



 とりあえずリーダーっぽい太刀武士の青年の回復を急がせて、念には念を入れて吸血鬼の固有スキルである魅了を併用しつつ尋問を始める。


 ……え? 三歳幼女の魅了とか効くのかって? 性癖を歪めてでも効かせるよ!!



「起きなさーい」

「……う。お、俺は一体」


「あなたは負けたの。弱いのに無理してダンジョンなんて入るから」

「うぐ……申し訳ない……」


「よろしい。今後は命を大事にしなさい。いいですねー?」

「はい……」


「みゅっ。じゃあ単刀直入に訊くの。このダンジョンはどうやって知ったの?」


平城なら家の跡継ぎが具足を装備しての崖山遠足(マラソン)修行中にダンジョンを見つけ、念の為に調べに入るとそこは高レベルダンジョンだったとのことです……」


「にゃあ。絶壁みたいなここの崖山を、大鎧姿で登るのー?」


「修行ですので。崖山は急勾配ではありますが、登山できるよう整備がなされているとのこと。足腰を鍛え、同時に具足を身体に馴染ませるのでしょうね……」


「それでダンジョンに寄り道して命からがら帰還、話が大きくなったのかな?」


「武士は面子を一番に気にします……。が、それは彼が裸で逃げ戻った時点で潰えました……。しかし、本当に高レベルダンジョンであり、彼が裸で逃走せねばならないほどだと判明すれば、彼の名誉は最低限であったとしても取り戻せます……」


「ふむふむー。撤退する勇気の理論だね。それで、あなた達冒険者がここに派遣されたと」

「はい……」


「よくわかったの。ご苦労さま。この会話はすべて忘れてゆっくり寝ていいよ記 憶 消 去


「( ˘ω˘)スヤァ……」



 吸血鬼の固有スキル、魅了を引っ込める。そして、みにゃあーっ、と唸る。


 うわぁ、これは確実に面倒くさくなるパティーンだよ……。

 最初の少年を見逃そうと殺害しようと結局は同じというサムシングだわ。


 ともかく、次からはもっと強い、手練れの武装集団がやってくる、と。




【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る