第5話 帰りたくない夜

阿久津と俺は、まだ興奮冷めやらぬ状態だった。


俺達は、美玲姫のファンであり

そして惚れ込んでいる。

阿久津とその夜……


『なんかさ、このまま帰るの

勿体なくね……?』



俺は、フと言葉が出た。

阿久津も俺の意見に喜んで賛成していた。



『明日の学校は……昼から

行こうぜ!』


『ああ、そうだよな?せっかくの感動をこのまま味わいたいよな?』


『お前、金幾らあんの?』

俺が問うと……阿久津は、


最高の笑顔を見せて


『ははッ!全くねぇし。笑』


『仕方ねぇな~~俺がとりあえず立て替えるから。』


阿久津は……すまねぇな。と

一言いった。



俺達は……深夜まで、遊び歩いた。途中、逆ナンされたが


俺達には、美玲姫が居るから。

逆ナンしてきた相手に断った。



『さてと、遊び疲れたな?』


『マン喫でも……行くか?

俺、緊張して美玲さんのグッズ

買い損ねたわ。笑』


『ありがち、ありがち。あはは』

『俺も勇気出した程だからな』



阿久津と俺とでマン喫へ入った。



中へ案内されると

どでかいベッドが部屋を占領していた。

『へぇ~割と楽しめそうじゃんか。』



『未成年だけど。祝杯しねぇ?』

阿久津は言う。


俺も、阿久津の意見に右にならえだった。



酒の知識が全く無い俺らは

とりあえず、名前で美味しそうなモノを選んだ。



部屋に、届けられた酒を手に

阿久津と俺は乾杯した。



『美玲さんに乾杯ーー!』

『だっはははは……』



俺達の飲んだのは

というカクテルだった。



一気に飲み干すと……フワンと

酔いが回る。


そのままベッドに横たわると

阿久津と……たわいもない話を

し出した。



家では、阿久津の妹が美玲のファンであることに

ヤキモチを焼く。だとか……



阿久津の妹は、再婚相手の娘

だとか……

俺は、阿久津の話を黙って聞いていた。



コイツなりに苦労あんだな?



俺はその時、美玲姫と目が合った事を思い出し、枕を抱き締めていた。



阿久津と俺は、いつの間にか

眠りこけてしまっていた。






『阿久津くんとは……何も無いから。大丈夫。』





美玲さん……美玲さんと

付き合えるなんて!!!俺は

超ラッキー!!




甘い空気の流れる中で、俺は

美玲さんをリードして



顎クイをしながらキスをした。



妙な唇が触れた感覚がして

目を覚ますと…………



『ーーーー???!』


阿久津の頬にキスをしていた。





阿久津は、阿久津で

まだ寝ぼけていて、俺を抱き寄せていた。



このえらいこっちゃの図……



学校のヤツには話せねぇな。笑




俺が阿久津を起こすと、

『うーーん。美玲ちゃん❤』


と……また抱き付いてきた。



俺は内心思う。




『しょーもねぇな阿久津は。』



思わずトントンと背中を

叩いて、阿久津を起こすと……


阿久津は我に返って、



俺が会計を済ませると


阿久津と2人で、朝焼けを眺めていた。




『夢みたいな日だったな?』



『あぁ、そうだな。』




この時、俺に今後巻き起こるであろう美玲さんとの



複雑な恋愛事情が起きようとは



世界中、誰も予想していなかったのだ。






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