第4話 出待ち

コンサートも佳境に入り、

阿久津が俺に突然話しかけてきた。


『よお?美玲姫の出待ちしねぇ?!』

『…………?!』



確かに、一理あるかもな。と

何となく阿久津の提案に俺は納得した。



出待ちの時に、美玲姫に


俺は顔がにやけてきた。

《おっと…………こんな鼻を伸ばした顔じゃ、美玲姫に失礼だな?》



コンサートはクライマックス!!


会場全体が叫び声で

とてつもなく盛り上がっていた。


『美玲ーーーーー!!』


『美玲姫ーーーー!!

   またなーーー!!』


『美玲!!愛してるよーーー!!』

会場がわれんばかりの声援で

コンサートは……幕を閉じた。



客は皆、美玲姫の出待ちを

狙っていた。

何せ、来月には美玲姫は、

海外に留学しながら拠点を


ニューヨークに移すそうだ。


最初で最後の美玲姫の日本での

コンサートは……大成功を

収めたのだった。



阿久津と俺は、出待ちの為に

美玲姫が出てくるであろう


関係者の出入口を見張っていた。



阿久津はホントに、いい男だ。

男の俺から見ても


やはり学園NO.1のカッコよさを

漂わせる。美玲姫のコンサートを見に来た女性グループも


阿久津と写真を撮りたがっていた。俺もさしてモテは、するけど


阿久津とはまた違ったモテ方

だった。



その時!!

叫び声がした!!


『きゃーーーー美玲ーーー!!』


『うおぉぉぉーーー!!』



出待ちのファンが美玲を取り囲む。俺は咄嗟に、美玲姫を

守りたくなった。



皆に負けない様に、俺はまた

大きな声を張り上げる!!


美玲姫が、こちらをチラリと

また見た。



俺と美玲姫の間には、瞬間的な

時が止まる感覚があった。



俺が再度、美玲さんに向かって

叫ぶ。



美玲さんは……その時!!



と笑った!



美玲姫は……滑り込む様に

SP数名に守られて、


黒いロールスロイスに

消えていった。



車が出発しようとしても、ファンがビッシリとマークしていた。



ガードマンが笛を鳴らしながら


『はい!!危ないから。

どいて下さい!!皆さん危ないですよ!!』



美玲姫は……ロールスロイスの

後部座席から、窓を開け



ファンの皆に、手を振っていた。





歓声が、凄い中で美玲姫は

軽く会釈をした。



美玲さんは……その時



チラリと誰かを探していたかの様に見えた。




僕は咄嗟に叫んだ!




美玲姫は……とっておきの笑顔を

俺に見せた。




気がした…………。






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