大河ドラマ「徳川慶喜」感想(12)
第48話「恭順謹慎」
徳川幕府260年の腐敗と頽廃の総決算を一身に負わされた男、倒れるたびにさらに強くなって起き上がり、そして今完全に復活の機会を、今度は自らの意志で封じた、すべてを獲得しすべてを喪った男の物語の最終局面。
お仕事の金言「小さなミスは部下の責任、大きなミスは上司の責任、巨大すぎるミスは経営者の責任」
今回のサブタイは「引責辞任」がふさわしい。
社員がどいつもこいつも無能揃いだった責任を取って会社をたたむCEO慶喜。
今後の展開は信長大河で本能寺の変を2話にわたってみっちり書くようなものだから正直見たくない……寅之介のワンコなキャラは好き。
慶喜にとっても癒しだったんだろうな…と察せられる。
何となく、「フランスに行かずに慶喜おそばに仕え続けた渋沢栄一」のイメージが投影されている気もする。
慶喜「余の考えていた新政府でも、譜代旗本の禄を奪うことになるぞ!」
抗戦を懇願する板倉に対し、幕臣の腐敗と修復不可能性を諄々と説く慶喜。
夕日がさして茜色の中というのが、滅びを象徴しているかのようで…意図しての演出なんだろうけど切ない。
実際の当時の慶喜は逡巡や憤懣に苛まれ、ここまで家臣に丁寧に説明しはしなかったんじゃないかとは思う。
それでも早いうちから恭順謹慎を宣言し、それを死ぬまで45年間貫き通したのは事実。
色々言う人はいるが、本当の意味で賢明で、強い人だったと思う。
美賀子「万が一の時は先にお知らせ下され。お供仕ります」
美賀子と慶喜の夫婦愛><。。。
じっくり尺をとって二人の絆を描いてきたのがここで生きてくる。
慶喜「よかった……水戸が朝敵にならずにすんで」
冷静に考えれば水戸が朝敵になる理由なんて「慶喜の出身藩」という以外何もない……んだけど、良い慶喜は死んだ慶喜だけ!といわんばかりの
ほんと、情勢なんてどう転んだかわかりゃしない。
斉昭の尊王活動を朝廷が評価して、慶喜助命を決める。
これは史実だけど、斉昭は慶喜に散々苦労を掛けたけどその斉昭の尊王活動が慶喜助命の一端を担ったというのも、巡り合わせだなあ。
あと板倉勝静は松平定信の孫ひいては吉宗の玄孫なので幕府への思い入れはことのほか強いという背景はできれば入れてほしかった。
ロッシュの吹き替えの声、ニュース番組みたいで歴史時代劇には明らかにそぐわないのだがそのおかげで絶妙なうさん臭さが生まれている。
ロッシュの援助の申し入れを毅然と拒む、モックン慶喜の美しさも最高潮。
西郷「幕府の使者? 追い返せんなもん!……いやちょっとまて、山岡鉄太郎、なんか聞いたことあるような……(原市之進暗殺の黒幕か! 倒幕の最大功労者じゃん!)よし、会おう」
……なーんて意地の悪いエスプリをきかせることもなく、西郷と山岡のやりとりは余計な演出もなく淡々と史実上の掛け合いに終始して、重厚かつ男性的で好印象。
益満休之助も高橋伊勢守もカット……そもそも髙橋は登場した大河はおろか、映像作品自体皆無に近いと思うが。
ちなみにこのドラマでは昭武は名前だけ登場、原作者の一人と言っていい渋沢栄一はカット。
原作者が作中に登場してメタ的な感じを与えることを嫌ったのか?と思うが、このドラマ、おみよの旦那の弟が再登場するシーンでおれんが
「皆さん、この人覚えてますか?」
と視聴者に話しかけるというおそらく大河史上例のないメタ演出をやっている。
思えば「武田信玄」の「今宵は、ここまでにいたしとうござりまする」も視聴者に話しかける前衛的な手法だったし。
渋沢は翔ぶが如くでも登場しないようなので(益満も翔ぶには出てこない)、登場した大河は今のところ、青天だけなのかな…と思ってたが、獅子の時代で登場するらしい。
吉子「斉昭公も、そなたを誇りに思っていることでありましょう…」
ええ~一番いいシーンを予告でネタばらししちゃわないでよ……と思うものの、いいシーンだから本編だけで流すにはもったいないと思ったのか。
山岡と西郷の問答を未解決のまま、ドラマは最終回へ。
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