大河ドラマ「徳川慶喜」感想(11)

第47話「朝敵」

このドラマの大久保は影薄めだけど決めるときゃ決めるというか、舞台メインの役者さんだけに発声が凄く良い。

国際法規をクールにかたるコヒさん西周もかっこよ!


新政府の混乱に乗じて外国公使を謁見し、自分の値を吊り上げる政治屋慶喜と見るべきか。

これ以上の混乱を招くわけにはいかないという君主としての使命感から公使との折衝を引き受ける大政治家慶喜と見るべきか。

このドラマは青天ほどではないけど慶喜ageなので、後者。

しかしやはり、新政府にゆさぶりをかけるためという意図もあったと思う。

新政府がグダグダで外国相手の布告もおざなりだったのは事実で放置しておけば日本国の信用にもかかわる事態だし。

功利と使命感、人間はその両方が常にあるもんでしょ。


徳川慶喜人生最大のハイライト、鳥羽伏見遁走(嫌なハイライトだな…)。

ドラマにおけるこの部分の描写の評価は難しい。

「余は朝敵になりとうないのじゃ~」という手垢表現は論外だけど、本作は本作で、ケイキさんを理性的で立派な人に書くために理屈こね回してる感。


容保役の畠中洋の演技は凄い。

汗みずくで正義と誇りを叫び、容姿がそっくりなことも相まって、開戦直前の時の松平容保は本当にこんな風に叫んでたんじゃないかな…と思わせられる。

長州征伐に関して正義を振りかざして、慶喜に一喝される一幕はこのシーンのための伏線だったのかな。

他の役者陣も迫真の名演技で開戦直前の大坂城の熱くなった空気を表現し多分大河史上最高の鳥羽伏見開戦直前の大坂城…なんだけど、やっぱり、昔夢会筆記から想像される実際の当時の状況はこんなもんじゃないと思う。

ほんと暴動寸前のフーリガンみたいな感じで、将軍刺殺を叫ぶ輩もいたらしい。


慶喜と板倉の勝も小栗も存在全否定会話

「我が方に西郷大久保に匹敵する者はおるか」

「いませんよ! 一人も!」

もなかったしね。

代わりにねじ込まれるのはオリキャラの黄昏流星群、意味不明。


鳥羽伏見の戦いは幕府のポンコツぶりを示すために本来1話は使ってみっちり描くべきところだけど、反動で震える砲口という使いまわし感ありありな映像をいくつか並べてのナレ戦。

こういう映像って本当に旧式の大砲を用意して発射してるのかな。


慶喜「正義と誇りのために戦ったんだろ? だったら文句言うなよな」

確かに実際の容保はそういう感情回路で突っ走ったんだろうけど、このドラマのやりとりはなんかいやらしいな…

絶対この当時の慶喜はここまで超然とはしていなかったと思う。


慶喜「余を呆れかえった卑怯者と思わせるのじゃ」

出奔前に兵士たちを煽りまくったのは、慶喜への敬意をなくさせ戦意喪失させるための芝居でした!

さすがに持ち上げすぎでちょっとねえ。


慶喜「余が朝敵になれば済むことじゃ」

この台詞の評価は難しい。

このドラマの慶喜は明らかに幕府中心主義者、途中から廃幕論者になるものの尊皇意識は明らかに薄い。

恐らくそれは史実だったろうし↑の台詞はそれを反映してのものだろうけどやはりここまで言い切るのには違和感。


しかし軍艦で東帰するときの演出は哀切だった。

横浜の沖を通る時に、うめのピアノ演奏映像が交じり合う

慶喜の耳に聴こえるはずはないのだが、誰よりも明晰な知性を持ちながら旧時代の象徴として滅ぼされねばならない男と、西洋音楽を学んで新時代に飛び出す娘の対比


新門辰五郎って結局京都で何やってたの?

京都の市井の情報収集と天狗党に慶喜の伝言を届けるお使いだけ……これじゃただ父親として娘の付き添いやってただけだよね。

いや描かれていないだけで、上記の仕事でも配下の火消したちが手伝っていたのかも入れないけど。

これだけ辰五郎をプッシュしながら軍艦で一緒に帰ってきた設定で、慶喜が忘れてきた家康公の金扇馬印を掲げて東海道を駈け下った話をスルーするとは…

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