大河ドラマ「徳川慶喜」感想(10)

第46話「小御所会議」

大政奉還の書面を御所に届けたのは京都所司代松平定敬。

不満でもちゃんと届けたんだね偉いね。

でも、幕府側の人間が倒幕の密勅の存在だけでなく、伝聞とはいえ「二条摂政の署名がなかった」なんてことまで知ってるのはおかしくない?


ここでの慶喜の発想は象徴天皇制といっていいものでかなり衝撃。

岩倉が神武天皇の名前まで持ち出して唱える王政復古とはまさに対極。

象徴天皇制の理性的な封建体制と天皇を最高権力者とする精神主義的な中央集権国家……結局後者が勝つわけだが、実際後者でないと、廃藩置県や四民平等を含むあれだけ急速な近代化はできなかっただろうしなあ。

GHQによる象徴天皇制は、日本を徳川時代に戻すある種の復古だったのか。

今だって総理大臣の任命(将軍宣下!)は天皇が行うわけだしね。


大政奉還から王政復古政変まで2か月近くあるのにあっちゅー間に時間がワープ。

龍馬暗殺はナレ死以下の完全スルー\(^ ^)/

幕末史を全く知らない人がこのドラマを観たら「2度も思わせぶりに名前が出てきたサカモトリョウマって何だったの?」と思うよな。


討幕派が慶喜をしつこく一橋呼ばわりするのは敵意の表れの表現としてまだわかるが、慶喜に融和的な土佐までもが一橋呼ばわりはおかしくない?

あと大久保一蔵がこの時期になっても月代姿なのにも違和感。


「慶喜は王政復古の政変の情報を事前に知り、防ぐことが可能でありながらそれを握りつぶした」ということをきちんと書いた大河は、これだけかもしれないな。

それは史実だからいいんだけど、大政奉還から2か月間の間、諸侯が上洛して諸侯会議を開かないといけないのに誰もやってこないという事情をきちんとかいていないから慶喜が無私の人である反面、きれいごと並べる無責任に見えてしまうんだよな。


「なぜ慶喜は王政復古の政変の決行を黙認したのか」

「なぜ尾張と越前は政変に加わったのか」

ということ、歴史学界で集中的に論じられたことってあるのかな?

尾張の徳川慶勝に至っては、御三家というにとどまらず松平容保と定敬の実兄なのに。

慶喜としては

「薩摩(というより西郷と大久保)の起こす政変なんてうさん臭すぎ怖すぎだけど、新政体樹立のためにだれも動かない以上、事態打開のための起爆剤になってもらうしかない」

春嶽と慶勝の思考もそれに近いものだった、と推察。


今更白々しいが、すべては叡慮でござる!って16やそこらの子供が一人でここまでのことができるなら30歳ぐらいで世界征服できるよな

オーホホホ恐ろしい子(棒


てかこの期に及んで土佐までが一橋呼ばわりいい加減にやめてほしいわ

オオヤケ中のオオヤケたる小御所会議でまでその言いざま…茂栄に何の罪があんねん


春嶽「あの岩倉という男は神がかりにて」

神がかり…随天…いやなんでもない

岩倉のイっちゃってる大熱弁は必見モノなんだけど、これで今後どのツラ下げて慶喜に寄付を申し込むんだろうというのはある


板倉「この場でお二方を斬ってもよろしいのでござるぞ!」

新政府から慶喜を追い出し辞官納地を要求しておきながら、面倒な外国関係は今後もあんたがやってね!

春嶽と慶勝の伝えるあまりにも勝手な言い草に逆上する板倉。

この板倉の演技も凄くて、徳川260年の誇りと無念がこのセリフ一つに凝縮されて爆発していると思える。

板倉の激昂を止めた慶喜の眉間にしわを寄せた表情が辛すぎて、画面を正視していられない。

この時期の徳川慶喜がリアルに味わっていた苦渋、憤懣、焦慮、孤独がそのまま画面から吹き上がってくるようで。

この時期の慶喜は確実に、日本史史上最も孤独な男だった。

ただ何分にも、大政奉還から王政復古政変まで2か月もあったのに、諸大名はどこも上洛してこなかったという事情を描いていないからなあ

この時期の日本は統一政府のないカオナシだった。

旧幕府が政治外交を担当するのはあくまで中継ぎの暫定措置、長く続けていいことじゃない。

王政復古政変は確かに旧幕府を排除した政権をつくるためのものだったけど、やはり日本の新たな顔を造るという意義も確かにあった……これは諸大名の日和見が招いた事態。


このドラマは薩摩の動向をほぼ西郷一人に集約させていて大久保はただの付き添い、小松と分ける必要ある?

合体させて小久保でよくない?なんてな。

これが翔ぶが如くでは人格者の英雄二人として描かれるんでしょ。

黒サツマと白サツマ……「葵徳川三代」と「徳川家康」の違いみたいな


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