第2話 よくある話
*
「それにしてもすごい歓声ですね。さすが勇者様です。」
堀について教えてくれた騎士がついでとばかりに話を振ってきた。
その顔には歓声をあげている人々と同じような恍惚とした表情が浮かんでいる。
この騎士の場合は勇者と共にいるという優越感というオプションも追加されているが。
(はぁ。)
ディグルは内心で本日何度目かわからないため息をつく。
もちろん顔には出さずに。
そして思う。
どうしてこうなった。
*
あれはそう、数週間前の出来事だった。
今日と同じような雲一つないさわやかな晴天の日。
ディグルは成人の義を迎えようとしていた。
これから待ち受ける運命など知らずに、、、、、。
この世界は大きく分けて3つの領土に分かれている。
天・地・深の3つだ。
それぞれは天界、地界、深界と呼ばれえいる。
もっとも天と深は神域と呼ばれ、天界は天使や神など神格を持つ者が統治しており地
界に住む者ではまず会う事すらない。
そしてその逆、深界には古代から存在する竜種のみが存在を許された神域が広がっている。
共通点はどちらも地界に住んでいる限り足を踏み入れることはない場所であることと地界に住むものから崇められ、信仰の対象となっていることだ。
そして残る地界。
この地界はさらに3つの国に分かれておりそれぞれ、人族、魔族、亜人族が統治している。
それぞれの国には人王、魔王、獣王と呼ばれる王がおり、「我こそは最も優れた王である。」という言葉と共に国家間で小さな戦争を繰り返していた。
そんな中、ディグルは15年前に人王の治めるここ【バードラント王国】と獣王の治める【サーベレスト王国】との国境近くにある小さな村で生まれた。
裕福とは言えないが優しい両親に恵まれこれから多くの愛情を受け幸せに育っていくはずだった。
12年前のあの日までは。
なんてことはない、ありふれた話である。
国境付近の小さな村はサーベレスト王国の進軍によってあっけなく焼き尽くされた。
ディグルの両親もろとも。
国境付近の村々ではよくある話だった。
ディグルは3歳にして一人になった。
その後ディグルは【リカン】という町にある教会に引き取られそこで成人を迎えることになる。
良くも悪くも何もない12年が過ぎた。
そして今日、成人の義を終えさえすればようやく一人前として認められ、独り立ちすることが許される。
つまりは大手を振って教会を出ていくことができる、ということだ。
この世界で言う成人の儀というのは
ほんとうのことは分かっていない、目下研究中らしい。
そして
ただし複数の
また、王や勇者などの特別な存在を除いて複数の
つまりこの世界では与えられる
比喩などではない、文字通り人生が決まるのだ。
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