兄の苦しみ

兄と竹君が、もうすぐ終わりを迎えるページを見つけた。


【父親に、また酷いことを言われたと言った。俺は、■■を守ってやりたくてまたしてしまった。■■は、嘘でもいいから愛してるって言ってと言った。俺は、そう言ってした。終わった後、■■が好きな子に告白されたと言った。もうそろそろ終わらせなアカンかな?俺も告白されたから。それを言ったら、いつも優しい■■が怒って俺に馬乗りになった。何で、それ今言うん?ってポロポロ泣いた。何で泣いてんのかわからへん】


最後の文字が、滲んでいた。


次の日を見る。


【あの後、■■はすぐに帰った。まだ、返事はしてなかった。モヤモヤしてたから、学校の使ってない教室に連れてきた。昨日の何なん?って聞いた。ごめんとだけ言う。■■は、好きな子おるやん。俺は、友達やろ?だったら、もうやめたらいいやんって言った。珍しく■■からキスをしてきた。何なん?って言ったら、またごめん。いい加減、イライラする】


すれ違いが、起こり始めたのがわかる。


【普通に過ごすつもりやった。■■が家の人がおらんからって俺を誘った。昨日は、キスだけやったから。もう、せんかったら終わると思った。やのに、■■から■してきた。何でって聞いたら、色んな事忘れられるって言った。俺は、またしてもうた。】


ページを先に進める。


【■■が、好きな人と付き合ったって聞いたから。俺も、付き合った。もう、これで親友に戻れる。なのに、家で過ごした■■が言った。もう、れんの?当たり前やろって笑って言ったら、■■にキスされた。意味がわからない】


はちとの恋に破れた兄は、竹君に慰めてもらい。


竹君を振り回し、竹君とすれ違った。


【■■が親友に戻るのは、無理だと言った。けど俺は、できるって言った。■■が、キスをしてきそうになったけど、俺は、かわした。ごめん。もう受け止められない】


日記は、ここで最後かな…


兄は、日記を書くのが趣味だったのではないか?


僕は、兄の部屋に入った。


電気をつけた。


机を探した。


兄の部屋の本棚を探す。


あった。


鍵つきの青い日記帳。


鍵がない…。


机の引き出しを開けると、それはあった。


ページを開くとやはりあの日記からの続きも書かれている。


ペラペラ捲って、気になったページでとめた。


【竹が九你臣くにおみにキスをしたのを見てしまった。多分、これは俺のせいだ。九你臣は、多分ファーストキスだ。キスは、どんな感じだと言っていたから】


えっ…。僕のファーストキスは、竹君…


【竹が、男子中学生と会ってる話を知った。俺のせいだ。俺が竹に男を教えた。】


ペラペラと捲る。


【竹をあの子から引き離した。死んだみたいな目をしてる。多分、竹はベロベロで覚えていない。また、俺達はあの関係に戻ったんだ。】


また…。


二十歳の時に、また…


【竹は、何も覚えていない。ベロベロで俺を求めた。俺は、それに答えた。あの日の竹みたいに、竹が立ち直るまでそうするつもりだ。】


兄が、この家をでるまでの日記だ。


23歳で、この家をでた。


二十歳から、三年間。


竹君は、知らなかったのかな…


本当に…。


僕には、そうは思えなかった。


竹君は、知っていたのではないだろうか?


それでも、兄と繋がりたかったのは…。


何もかも忘れたかったからではなかったのだろうか?


【俺は、竹を利用している。俺にとって、それはもう捌け口だった。仕事の苛立ち、自分への苛立ち。竹とそうすると、あの頃みたいに満たされた。欲望が叶っていく感覚、支配する感覚。俺は、優しい人間ではない事を実感する。こんなに、支配したくなる人間だと言うことを実感する。】


八が、僕に言った言葉を思い出した。


きゅう、俺のおかんはね。弱い人間やった。小さな俺を支配する事が幸せやった。人間ってな、やっぱり動物なんやで。誰かを支配する事で満たされるんやで』


極論だと思った。


でも、兄の日記を見ると、八の言葉はあながち間違ってはいないという事がわかった。


僕も、また八を支配したいだけに過ぎないのかもしれない。



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