家族と手紙

竹君が帰った後、俺と母と父で酒を飲んでいた。


「僕、知らんかった。あんな家族やって」


「ゆっくんは、何も言わんかったもんな。でも、たっくんは知ってたんやな」


母は、そう言いながらビールを飲んだ。


「親やのにな。酷い人もいるんやな」


父は、そう言いながらビールを飲んでる。


「おかん、おとん、兄ちゃんの一生のお願い叶えたってくれてありがとうな」


「全然、お母ちゃんとお父ちゃんは、あの手紙見てから竹君をこの家の子にしようって決めてたから。なあ?お父ちゃん」


「せやな。竹君は、4歳の頃から知っとる。たつの双子みたいに思っとったな。さんもやけどな!」


「そうやな。竹君と三ちゃんだけは、4歳から知ってるもんなぁー。ホンマに、双子みたいな感覚やったわ」


そう言って、母と父は懐かしそうに笑っていた。


「竹君のお母さん亡くなって、再婚したん聞いた時、お母ちゃん大丈夫かなあ?ってずっと心配してたんや。」


「そうなんやな」


「早う聞いたげたらよかったわ。ほんなら、あんな辛い思いせんでよかったのにな。」


「僕は、竹君があんな父親に1ミリも似てへんくてホッとしたわ」


「わかるわ。お母ちゃんも思ったわ。あの綺麗な顔はお母さん譲りやったんやな」


「父親は、半魚人みたいな顔やったんか?」


父が、ぐたらないボケを言った。


「なんでやねん。まあ、意地の悪そうな顔やったわ」


「そやな。九你臣くにおみのゆうとおりやわ」


「僕、明日家の片付けしたいから寝るわ」


「引っ越し賃渡すから、引っ越しやさん頼みなさい。週末にでも」


「わかった。」


「後、これ九你臣にたっちゃんから手紙預かってたから。読んだって。お母ちゃん、中身知らんで」


「わかった、おやすみ」


「おやすみ」


僕は、二階の部屋に上がる。


もう、隣の部屋に兄ちゃんはいない。


それが、何とも言えないぐらい空しかった。


部屋に入って、兄ちゃんからの手紙を開いた。


九你臣くにおみへ】


この手紙を読んでも、三や竹から話してくるまで黙っていて欲しいです。


九、一生のお願いです。


「また、一生のお願いやんけ、何回使うねん。」


僕は、手紙に突っ込んだ。


そして、また読み出す。


九你臣は、もうめいから日記を受けとりましたか?


受け取っていないとしても…。


白状します。


俺の日記の黒塗りの名前は、竹です。バレんように平仮名二文字で書いて美に渡す時に塗りつぶしました。


なぜ、そうしたかと言うと、決して竹は男が好きな人間ではないからです。


竹に、男の味を教えたのは俺です。


日記を読めばわかりますが、俺は、酷いことをたくさんさせた。


まあ、他の黒塗りは竹の事を考えてネタバレはしません。


一枚目が、終わった。


竹君だったとは、驚いた。


後で、日記の他のページも読んでみるか…


九你臣には、内緒にしてましたが、俺は、三と付き合っていました。


三は、俺の最後の恋人です。


「三、兄ちゃん好きやったん!」


僕は、驚いてその文章を何度も呼んだ。


頭にきちんといれられたから、次に進む。


三に、俺を覚えておいてもらうために、俺は、色んな事をした。


最低なやつだと思います。


そして、死ぬ間際になると三を他所の人間に渡したくなくなった。


それなら、竹にと思って三に竹を託しました。


嫌、逆かな?


俺は、九你臣の知ってる優しい兄でも立派な兄でもありません。


自分勝手に竹を傷つけ、竹にだけ重い荷物を預けた。


そして、三の事も振り回した。


でもね、俺には竹と三が必要やった。


癌の痛みや辛さに耐えるために、二人が必要やった。


特に、竹は親友であり家族やった。


だから、最後まで竹が俺には必要やった。


この事を知っても二人に対する態度はかえんとって欲しい。


俺は、生まれ変わっても九你臣の兄になります。


          【たつ】


「ホンマにアホやな。わざわざゆわんくてもええのに」


俺は、そう呟いて日記帳を取り出した。


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