竹の気持ち

手際よく竹君は、ペペロンチーノを作ってくれた。


「うまっ」


「よかった」


嬉しそうにしてる。


竹君は、部屋で一人でご飯を食べていたんだ。


だったら俺は、もっと竹君に優しくしたかった。


ワインを開けてくれた、暫く飲むと竹君は酔いがすぐに回ったようだった。


「風邪かな?ごめんやけど、さん少し横になってええかな?」


「うん、ええよ」


竹君は、ソファーに横になった。


俺は、ワインをソファーに持っていって座る。


竹君は、すぐに眠ってうなされだした。


「わかってる、わかってるから。もう、ゆわんといてくれ」


何の夢を見ているんだろうか?


「うーん、うーん。聞きたくない」


脂汗をかいている。


俺は、洗面所でタオルを絞りにいった。


冷たかったせいで、竹君は起きてしまった。


「ごめん」


「三、起こしてくれてありがとう」


引き寄せて、俺を胸に抱き締める。


ドッドっドッドって、心臓が行進してるみたいな音をたててる。


「竹君?」


「その名前で呼ばんといてくれ」


竹君の体が、震えてる。


「何て、呼んだらええの?」


「お母さんがつけてくれた、行臣ゆきおみがいい。」


「わかった。行臣君やな」


「ゆっくんでええよ。お母さんがそう呼んでた。」


そう言って、竹君は俺の頬に手をあてる。


「じゃあ、俺もみっくんでええよ。おかんに呼ばれてる。お揃いやな」


「みっくん」


竹君は、涙を流してる。


「ゆっくん、泣かんで。俺が、ずっといたるから」


涙を拭ってあげる。


「俺ね、最近、親父にあったんや。そしたら、金が足りんって言われてん」


「金って?」


「今まで、育ててもらったお金をゆっくり返してるんやけど…。毎月10万ずつ。ほんなら、今回0が一個足りんってゆわれて」


「それって、100万ってこと?」


「うん。まだ、振り込めてないから明後日にはいれなアカンわ」


「そんなんしてたら、ゆっくんのお金がなくなってしまうで。」


「みっくん、ええねん。今までだしてもうたから。しゃーないねん」


何かを諦めている竹君の顔を見ていると、あの日のたつくんと重なった。


「しゃーなくないで。でも、返さなアカンのやったら俺も手伝ってあげるから…。早めに返そう」


「ええよ、別に…。一人で返せるから」


「一人で抱えんとってや、俺ら、もう付き合ってるやん?」


「みっくん」


竹君は、俺のカッターのボタンをはずしてくる。


「したいん?」


首を横にふってる。


「何がしたいん?」


「直に、みっくんの心臓の音を聞きたい」


俺の胸に手を当ててきた。


ドックンより、バックンって感じなのが自分でもわかる。


「何か、恥ずかしいわ」


「みっくんの音、感じるで。俺の手、押してる。心臓が…」


「嬉しい?」


俺は、竹君の髪の毛を撫でる。


「めっちゃ、嬉しい。愛されてるん感じる。俺、生きててもいいんやな?」  


「当たり前やん。アカンわけないやん。生きててええに決まってるやん」 


涙が、一筋流れてくるのがわかって拭ってあげる。


「親父に、消えろってゆわれた。お母さんが、死んだ日。お前なんか、あの女が勝手に産むゆうただけのやつや。だから、いらんかったんや。お前みたいなもんが産まれてきたから俺は、不幸やってゆわれた。それ、誰にもゆえんかった。ずっと、ゆわんつもりやった。」


「たつくんにも、ゆってないん?俺が、初めてなん?」


「初めてや。若にゆうたら心配するし。親父に怒りにいく。若は、優しいから。やから、誰にもゆわん。って、親父にこんなんゆわれたん。恥ずかしいから。ゆわんって決めてた。毎日、産まれんかったらよかったって、お前が死ねばよかったって、ゆわれても。親父、ううん。あの人の元しか帰る場所がなかった。もう1つ秘密教えたろか?」


竹君は、そう言った。


「なに?」


「若とせんくなったから、俺な。」


そう言って立ち上がってズボンを脱いだ。


「腕やと、若にばれるやん。この内側やったらばれんかな?って。ほんで、いつか死ねたらええかって」


足の太ももの内側に、傷がたくさんあった。


「これ、全部。自分でやったん」


「せやで」


両足の太ももの内側に、竹君の苦しみがあった。


「これ、一番深かったな。死ねる思ったのに、朝目が覚めて自分の生命力呪ったわ。」


淡々と話すのは、竹君が心を捨てようとしたからなのがわかった。


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