愛されたかったんやね

誰よりも、父親に愛されたかったのがわかった。


「ごめん。重いやろ?忘れて。みっくんも、俺を捨ててええから。俺、ビックリするぐらい重いねん。自分で、わかってんねん。」


「重くたって、それがゆっくんやろ?」


傷痕は、新しいものもあった。


「いつまで、しとったん?」


「若が、病気なるまで。なった日からやめた。生きたくても生きれんのにって。毎日、神様に祈った。俺の寿命、全部若にあげるから。俺をつれてってくれって。祈り続けたのに、聞いてくれんかった」


ポロポロと竹君の涙が頬を流れてくる。


「若い子で、だから遊んでたんか?お母さんに愛されてた時の記憶、探してたんか?」


「わからん。でも、俺みたいに愛されてない子と話すと気持ちが楽になったから…。」


「楽になったら、誰でもよかったん?自分の人生なんか捨ててよかったん?」


「みっくんが何で泣くん?俺、犯罪者なって逮捕されてもよかったんやで。若は、守ってくれたけど。昴ん時、そう思った。だってな、逮捕されたらあの人、俺を捨ててくれるやん。しゃーないからって、置いとかんでもええやん」


竹君は、ずっとお父さんの事を考えて生きてきたのに…。


「もう、やめてや。自分の人生、諦めるんやめてや。俺が、ずっと傍にいたるから。だから、やめてや」


俺は、竹君を抱き締めた。


「ちゃんと好きなるから。たつくんより、好きになるから。そやから、もう自分の事傷つけんといて」


「別に、ええよ。俺の事なんか無理に好きにならんで」


「無理なんかしてないわ。俺は、ゆっくんやから一緒にいたいって思ったんやで。だから、無理なんかしてへん。」


「若のかわりで、充分やで。さっきもゆうたけど、俺重いねん。だから、二番目でええから」


「ホンマの事ゆえよ。一番がええくせに嘘つくな。重いからなんやねん。全部受け止めたるわ。たつくんのかわりなんか、ホンマは嫌やろ?なあー。ちゃんとゆうてや」


俺は、竹君の顔を見つめた。


消えそうな顔で、泣いてるくせに笑ってる。


「ええよ。みっくんが、必要に思ってくれるんやったら、別に玩具でもええし。飽きたら捨ててくれていいし。若より好きにもならんでいいし。好きなようにしてくれていいよ。ホンマやから」


何で、自分を傷つけんの?


足に、傷つけれんなったら心を傷つけるん?


「その痛みは、幸せやないで。幸せの意味間違ってるで。」


涙が流れてきた。


「みっくん、泣かんでええよ。俺なんかの為に、勿体ないで」


胸が押し潰されそうや。


「傷つけんなや。心も体も、もう傷つけんなや。玩具なんか嫌やろ?飽きて捨てられて、どないして生きてくんや?そしたら、犯罪者になるか、死ぬんやろ?」


「みっくん、泣かんでええねん。罪悪感なんか、感じんでええねん。俺なんかの事、気にせんでええねん」


空っぽの目をしてる。


たつくんも、死期が近づいてきて大丈夫って言われる度にそんな目してた。


俺も、たつくん失ってからしてた目や…。


バチンって、竹君の頬を叩いた。


「ホンマの事、なんでゆわんの?俺は、必要ないん?自分の事、傷つけてるつもりで、ゆっくんは俺をさっきから傷つけてるんやで。それ、わかってないやろ?」


竹君は、俺をちゃんと見つめた。


「みっくんが、必要やで。でも、このままで好きになってもらえる自信ない。俺は、みっくんを傷つけてるって思わんかった。」


「自分から、俺を求めてくれや」


竹君は、俺を引き寄せてきた。


「俺、めちゃくちゃ重いで。お母さんから、もらった愛情忘れてしもたから…。みっくんから、全部もらおうとするで。それでも、ええの?」


「ええに決まってるやん。そのかわり、俺以外に絶対、さわらすなよ。ほんで俺以外から、愛をもらうのやめてや。あの子みたいなんに会わんでくれ。ゆっくんは、じじぃになっても俺だけみとけ。わかったか?」


竹君から、離れて目を見つめる。


この綺麗な顔を、俺だけのものにしたかった。


「わかった」


「俺の方が、重いな」


竹君は、首を横にふった。


「よしよしして」


俺の手を自分の頭に持っていく。


「よしよし」


頭を撫でてあげたら、竹君は泣いてる。


「嘘でいいから、愛してるってゆって。頭撫でながら…」


俺は、頭を撫でながら竹君の耳元で「愛してる」ってゆった。


「嬉しい、嬉しいよ。」


竹君は、俺にしがみついて子供みたいに泣いていた。



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