No.2
うぁ~、体がようやく正常になってきた気がする。体を伸ばし、軽くストレッチを行い体を調整する。階段を降りたり上ったりしたり瞑想して落ち着いて整理が出来た。ふぅ、11時50分か開始までゲーム内1時間か。......一旦ホームページみてみようか。......お、新着でお知らせが。......あ、はい。そうですよね。お知らせの内容は人外種のためにリハビリルームを設置してログアウトの前に必ずそこで調整することとのことだった。よかったよかった。というか運営さんよ。この申請が今まで来ていなかったと言うことは人外種って超絶に人気が無い?!ひぇ。どれだけ人間種がいるんだろ?1000人の内1人とかだとイヤなんだけどなぁ。
さて、やろうか!まだ春休み中だもんね!がっつりやるよぉ!
「お帰りなさい。アイスノンさん」
「ただいまです。」
「今から運営者の一人がここにやって来るという連絡を受けましたがどうされますか?」
「えっと?......運営の人?」
「はい。どうなさいますか?」
「あっと......じゃ、じゃあ会います」
「分かりました。ソファに座りお待ちください。」
ダイアさんはお辞儀して消えていった。......私ソファーに座るどころか体がコウモリなんですが?ま、まぁソファーに身を任せるとしましょうか。もう羽ばたく操作が意識せずにやり始めていることに驚愕すればいいのか自分で自分を引けばいいのか分からないよ。
ソファに座りちょっとだけぼーっとしているとピカリと正面が光り、光が収まると土下座をしたスーツを着た男性とそれを冷たい目で見ているダイアさんが出現した。いったいどういうことなのか説明していただきたいんですが大丈夫なんですかね?
「このたびは申し訳ありませんでした!私(わたくし)!【The Fantasy】人外種族設定担当!「日下(くさか) 隼夫(はやお)と申します!」
「え、えっと【島根(しまね) 雪(ゆき)】です。」
「このたびは人外種のログアウト時による違和感を放置しており、今回の事態となりましたことを深くお詫び申し上げます。このようなことが今後起こらないように致します。それでですね今回の事態を起こして死また謝罪としてこちらから一つお選びください。」
そう言われると私の目の前にパネルがポップアップしてくる。表示されているのは
________
【初級HPポーション×5】
【初級MPポーション×5】
【初級生産用素材詰め合わせ(細工)(鍛冶)(料理)(木工)(服飾)】
【種族解放用血液パック詰め合わせ(ワイバーン)(エルフ)(ギガンテス)(ブラックアウル)(ハイドホーク)】
【経験値増加ポーション1時間×1】
________
ふ~~~む......どうしようかなぁ。種族的に考えれば血液パックがいいのは確定的に明らか何だよねぇ。ふ~む、どうしたものかなぁ。でもまぁ選んでほしそうにある種族限定を選びますかね。
「えっと、種族解放用血液パック詰め合わせでお願いします」
「はい。分かりました。お選びいただいたものは正式サービス開始後、メールに添付させていただきます。このたびは本当に申し訳ありませんでした。今後も何か不具合等がございましたらGMコールまたはお問い合わせにてお願いいたします。それでは失礼いたします。」
そういうと運営の日下さんは消えていった。......そういえば今まで出ていなかったと言うことは人外種がいないまたは動けない状況になっているのかな?......あれ?人外種の方が圧倒的に多いのに人外種を選ばないことなんてある?......あるのかぁ。
「お疲れ様でした。それでここから開始時間までこちらで30分となりますが。」
「そうですね......それまで練習したいのでチュートリアルの場所に移動してもいいですか?」
「畏まりました。ではこちらへどうぞ」
ダイアさんの後ろをパタパタと羽ばたきながらついて行く。ふっふっふ私もこのコウモリの操作になれたのだよ!たまに落っこちそうになるけどね!普段使わないというか現実じゃ絶対使わないと思われる動きをしてるんだもんなぁ。ゲームすげぇ!
「場所はどうしますか?草原、洞窟、カタコンベ、砂漠、海から選べますが」
「えっと、初期地点はどこですか?」
「選択式になってまして、一つが他の皆様と同じく街からスタートする方法、もう一つがバットの初期地点【ダイ洞窟】となっています。種族的にはどちらでも大丈夫だと思いますよ。」
「おすすめとしては?」
「圧倒的に洞窟ですね。なんせ選んだのはアイスノンさんだけですから、同種族に一方的に襲いかかれるのは強いと思いますよ。」
「え、同種族って襲われないんですか?!」
な、なんてこったぁ。レベル上げがはかどるけどそれって一部のスキルはレベル上がるだろうけど......う~ん、どうなんだろう?スキルレベルがまんべんなく上がればいいわけでもないしなぁ、だとすると最初からある程度育ててからにしようかなぁ。
「そうですね。人間が人間を襲わないように同じ種族の場合攻撃されないです。まぁ例外はありますが人外種ではその心配はほとんどいりませんよ。人外種はただでさえ狩られる側だというのにそんな鬼畜なことには致していないはずです」
「はぇ~~、そうなんですね。あ、洞窟でお願いします」
「分かりました。」
ダイアさんがパネルをいじると景色が変わり、洞窟に様変わりした。うわぁ、すごい。岩のゴツゴツ感とか湿り気感が見事に再現されているように感じる。私が行ったことあるのは鍾乳洞だったけどそれでもなかなかにジメジメしてた気がする。夏に行ったから涼しかったんだけどね。
洞窟内をパタパタと飛ぶとなんだか草原よりも飛びやすい気がする。それに周囲を確認しやすい気がするんだよね。なんでだろう?洞窟内を飛び回ると飛びやすさに驚く。しかしその理由がさっぱり分からない!こういうときは聞くに限るね!
「あの、ダイアさん。」
「はい。何でしょうか?」
「あの、洞窟内だと飛びやすいのですが何でか分かりますか?」
「はい。洞窟はコウモリ種にとっては家とも言える場所です。ある意味適応という言葉が正しいと思います。」
「えっと?」
「えっとですね。補正という方がわかりやすいかもしれません。」
「あぁ~......コウモリ種だと洞窟で過ごすとステータスにプラス補正がつくと言うことですか?」
「ちょっと違いますが大体はそうですね。けど間違えないでほしいのはステータスには一切補正は乗っておりません。スキルに補正が乗る。というのが正しいかもしれませんね」
「なるほど......ありがとうございます。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。......っとこちらで開始5分前となりました。ここで開始を待ちますか?それとも先ほどのロビーにて待機しますか?」
そろそろかぁ。一応あらゆる行動の確認は出来たし始まるのかぁ......楽しみだなぁ。おっと、ロビーの方に戻ろうっと。
「ロビーの方で」
「分かりました。ログインログアウト時には毎回ここに来ますのでよろしくお願いします。」
「分かりました。」
人外種は少ないだろうけどまだ1000人だもんね。いやぁ、だとしても少ない気もするけどね。どう考えても1000分の1は可笑しいもんね。絶対に100人近くはいるよね!うんうん!普通より絶対に面白いじゃん!......まぁ、操作はね。ちょっときついんですけどね。独自すぎてね。それでもすごい操作しやすいというかなんというか分からないけどとにかくすごい!!
「それでは開始までもうしばらくお待ちください。」
「はい」
私とダイアさんはソファーに座り、そのときを待つ。その間も色々会話していたけどね。ダイアさんと話しているとねちょっと落ち着くんだよね。そんなこんなで始まる1分前。私?私はダイアさんが出してくれたクッキーと紅茶を飲んでました。勿論人間体で。いやぁすごいねリアルの体そっくりだよ。ログアウト前にこの体になって確認するんだって、確かに違和感を残すわけにはいかないもんね。それにここにいる間はログアウト時間になっても多少免除されるようで強制ログアウトでもここに飛ばされるようになっているらしい。
「そろそろですね。この人形もそろそろですよ」
「ほぇ~......かわいいですねこれ」
「ツクヨミ様をモデルに作ったとかなんとか」
私たちの目の前には一体の踊っている人形とその人形の上で激しく主張してくるカウントダウンがある。人形はね紺色の着物に月と星の模様が描かれている。この人形すごい可愛いというか美しいね。ダイアさんがツクヨミ様って言ってるけど誰だろう?そしてカウントダウンは残り20になり花火まで咲き始めた。それに比例してツクヨミ様のダンスも激しさも増していく。ブレイクダンスも締めに入り始めてブレイクダンスだけじゃなくてコサックダンスとかヒップホップダンスも混ざり始めているよ。
そしてついにカウントが0になるとカウントの数字がパァンと爆ぜて特大の花火になっていた。その花火を背景にツクヨミ様のダンスも終わり、心なしやり遂げた感じでうなずいていた。それを見届けるとダイヤさんはこちらを向き
「始まりましたよ。早速プレイしますか?」
「はい!......その前に一ついですか?」
「はい」
「ツクヨミ様にはいつか会えますか?」
私そう言うとダイヤさんはすこし驚いたように目を見開いたけどすぐに戻り
「そうですね。教会の礼拝堂にツクヨミ様を含めた11体の神様を奉っております。世界的には神様ですがメタイ事を言うなら【The Fantasy】世界の管理AIです。いつか教会で礼拝をするといいかもしれませんね」
「分かりました!......では行ってきます!」
「はい。場所は種族由来でよろしかったですね?」
「はい!」
「分かりました。では最期に私から一つ『この世界はAIの世界でもあります。ゲームと現実を混ぜたようなこの世界を存分に楽しみくださいませ。』ではいってらっしゃい」
ダイヤさんに見送られ、私はゲームの世界に入っていく。最初から入ってはいたけどそうじゃない。私の冒険がここから始まるんだ!ただし!始まるのは洞窟だけどね!
私の冒険は同族と洞窟に生息している様々な動物、魔物との共存生活から始まったのだった。まぁその前に運営からいただいた謝礼を飲み干してからですけどね!メニューを開き、『!』のあるプレゼントと書かれている場所をタップする。そうすると【種族解放用血液パック詰め合わせ】が表示されたのでそれをタップし、出現させる。このゲームインベントリというアイテム収納があるんだけど無限じゃなくて400枠で後は課金らしい。とは言っても1枠は無限に入るから400枠も埋まるのか分からないんだけどね。
そして血液パックは出てきたけど今吸うのが正しいのかな?忘れないうちに吸うのが正しいかな。だから私はワイバーンの血液を残し他の4つはインベントリにしまった。じゃ、いただきまーっす!!
カプリと吸血パックに吸い付き、チューチューと吸う。ワイバーンの血液は赤黒くどろっとした感触だった。味はブルーベリースムージーかな?それかブルーベリーシェイクかな。ふむ、おいしい。大体40秒ほど経った後血液パックが空になりポリゴンとなって無くなった。ふぅ、おいしかったぁ。
.....改めて周りを見渡す。いやぁ視界に入るのはコウモリ、コウモリ、たまにでかい蜘蛛そしてコウモリ。う~む、これ同族をころころしてレベル上げですかね?噛みつきで倒せばいいのかな?それとも魔法で?......とりあえず噛みついて倒してみようっと。手近に天井にぶら下がっているやつにしようっと。
なんとなく決めたやつの後ろに回り、羽?翼?の付け根の部分に噛みつき!噛みつくとさらっとしたうっすいメロン味の水が流れてきた。......うっっっっっす!!ジタバタと暴れるコウモリにしがみつきメロン水を吸い尽くす。......やっぱり薄いなぁ。コウモリ?あぁ、うんやっぱりHPは低いのかすぐにお亡くなりになったよ。
反撃してくるかと思ったけど全然そんなことなくなんかパニックになっていたようで羽ばたこうとしていたけど私を含めた重さに耐えきれず落下してその最中に命つきたんだよね。そしてレベルは上がらずってところ。鑑定してなかったんだけど弱かったのかな?次からは鑑定しようっと。
洞窟内を移動しつつ鑑定を行っていく。そうしているとマップが埋まっていきだんだんと全貌が見えてくる。しかし私の移動速度が遅いからなかなか埋まらない。しかし鑑定しているとここにはレベルが上の同族しかいない無いなぁ。だいたいレベルが5から13までで偶にハイバットのレベル3以下がいるくらい。
ハイバットはバットより大きく、強そうに見える。しかし敵対はしていないようで私が近づいても気にするような行動は起こさない。......ジャイアントキリングしてみようかなぁ。なんとなくそう思ってしまった。......スススと移動し、ハイバットの翼の付け根に思いっきり噛みつく。が、牙が全く入らない!ちょっとだけ入ったけどこれはやばい!!
その予想は当たり、私の噛みつきをほとんど効かなかったハイバットが反撃に出た。しかもその攻撃方法は至って簡単で翼を天井に叩きつけられて私のHPはすぐになくなり初の死に戻りを体験した。......うっそぉ、えっ?翼に叩きつけられただけだよ?!それで死ぬの?!......え、えぇ~~~。
こ、これはどうしたものかとしか言い様がないなぁ......普通にバットで経験値稼ぎますかねぇ。バット自体倒すのは簡単だろうけど経験値ってどのくらい入ってくるんだろう?まぁ倒してけばいいよね。さぁ!狩りの時間じゃぁ!!
まずは手頃なレベルを探す。目安としては7レベルくらいかな。そのくらいだとちょうどいいかもしれない。鑑定して探すと結構そこら辺にいた。私はその内の一体に目をつけ飛んでいるそいつに上から覆い被さるようにしてついている足で胴体を鷲掴みにして、その勢いのままガブッと噛みついた。噛みつかれたバットは暴れるが後ろは私が取っているし振り下ろされないようにしがみついている私に何もすることが出来ず、そのまま私にミカン味のジュースを提供してくれた。......ふぅ、一回休憩しようかな。どうせ今日も休みなんだから朝からやった方がいい感じがする。
私は天井に張り付き、メニューを操作してログアウトした。ログアウトするとロビーに来た。ダイヤさんは早めに戻ってきた私に気づいてこちらに近づいてきた。
「アイスノンさんログアウトですか?」
「はい。朝からやろうかと思いまして、一回寝ようかと」
「分かりました。ではこちらへどうぞ」
「はい」
そうだった。リハビリっぽいのがあるんだったね。ダイヤさんについて行き、リハビリルームへと入る。リハビリルームに入ると私の体はコウモリではなく、リアルの体にそっくりのアバターへと変更された。その変化についていけずたたらを踏んでしまった。
「やはり、感覚に変化が起きますか?」
「はい。......ん?結構戻るのが早いですね」
「ふむ、大丈夫そうですかね。一応軽く動いてみてください。」
「はい」
部屋の中にはボールやベッドなどがあって様々なものに対応出来るんだなぁと思った。とりあえず近くのボールをつかんでみようとしたけどちょっと距離感を間違えてしまったり、力加減が上手く出来なかったりして苦戦してしまった。それでも40分ほどかな?で体を動かすことが苦ではなくなり、距離感も戻ってきた。そのタイミングで
「感覚は大丈夫ですか?」
「たぶん大丈夫です。......うん。平気だと思います」
「分かりました。ではそこにあるベッドに寝転んでもらってもよろしいですか?」
「え?はい」
「立ったままだと脳が誤作動を起こす可能性があるので出るときにはベッドに潜ってから返すようにしています。」
「はぇ~、そうなんですか」
ベッドまで行き、寝転ぶ。運営さんも警戒はしているんだねっと
「では、次回のご利用をお待ちしています」
「はい。また」
そして私は意識を失いすぐに意識が戻る。頭につけたバイザーを感じる。......うん。戻ってきたみたいだね。えっと今何時だろ?えーっと......0時17分かぁ。たくさん遊んだような気もするんだけどこっちじゃそんなに時間経ってないんだね。さて、トイレ行ってから寝ようっと!一応体の確認というか感覚のズレがないか確認してから起き上がる。手を握ったり開いたりして確認する。
......うん。大丈夫。起き上がってから部屋を出てトイレへと向かう。いやぁ寝る準備しておいて良かったよ。あれは絶対に嵌まる!しばらくは地図埋めとレベル上げかなぁ。下の方へ行ける可能性もあるし、まずはレベルを上げてスキルの方も上げて頑張ろう!
布団に潜り、ぬくぬくとしていると睡魔がいつの間にかやってきて私を夢の世界へと連れて行く。満足げな私はそれに身をゆだね夢の中へと沈み込んで行く。いい夢見られそうだ
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