初めての電話








ゆうた『いいよー かけてもいいー?』



案外さらっとと待ち望んだ返信がきた。


しかも かけてもいい?って!!


私から言ったとはいえ

心の準備が全然できてない。



あーーー


あーーーーー


何度かちょっと声出してみて

から『いいよ!!』と返信した。

するとすぐに電話がかかってきた。


緊張しながら通話に出る。


私「も、もしもし…」


やばい声裏返った…!!


ゆうた「おー」


わあああ、本物のゆうくんだ…!!

私の想像とはちょっと違う感じのこもった高めの声で可愛い!!


私「なんだか照れるね…!」


ゆうた「ふふ…なんでよ、ずっと話してたじゃん。」


私「いや、チャットと通話じゃ違うでしょ…!」


ゆうた「そうかな〜?」


私「思ったより可愛い声。」


ゆうた「思ったより低めな声だね!」


私「ごめん…。」


ゆうた「何謝ってんの!褒めてんの!」


私「あ、あ、あ、ありがとう。」


ゆうた「どもりすぎ。」


ゆうくんは楽しそうに笑いながら言った。

彼の声は、私にはすごく心地よく感じた。



私「そういえば、

ゆうくんは大学でサークル入ってる?」


ゆうた「軽音サークルだよ。

バンドではボーカルやってる」


私「なにそれ!じゃあ歌上手いんだね!

どんなの歌うの?」


ゆうた「なんでも歌うよ。最近はホルモンとかラルクが多いかなぁ。」


私「めっちゃ聴いてみたい。」


ゆうた「俺のラインに歌った動画のってるよ。」


私「え!!…」


これはライン聞いていいってことなの?!


でも聞きたいと思ってたし…、

このタイミングでしかない!


私「じゃあライン教えて!!!」


ゆうた「はいよー」


誘導するのうますぎないか?!

嬉しいけど!!



IDを教えてもらい、ラインの友達登録をさせてもらった。


これがゆうくんのライン…!

なんだか一気に距離が縮まった気がする、嬉しいいいい!!!


ラインの画像自撮りなのもナルシストで可愛いなふふふ。



舐め回すようにじっくり彼のライン画面を見て喜びをかみしめた後、

早速投稿を見ると動画がアップされていたので再生した。


“サーカスナイト”という曲だった。



【ゆうた「Tight rope dancing…」】



儚く切ない曲を、

綺麗に透き通るように歌い上げていて

本当に心を打たれる歌声だった。



私「なにこれ…めちゃめちゃ上手じゃんね…!

うますぎて本当に感動したんだけど…。」


ゆうくんは満足そうに笑った。


ゆうた「ましろの歌も聞いてみたいなー。」


私「私ジャイアンよりも下手くそよ…。」


音程て何ってくらい音痴だからやばい。

もし一緒にカラオケ行くってなったら死ぬからカラオケ行って練習しよ…。


ゆうた「ましろはなんか得意なことある?」


私「うーん、強いて言うなら料理と絵かなあ。」


ゆうた「絵も描くんだ!俺も描くよ!部屋に自分が描いた絵飾ってる。」


私「なにそれすごそう!

私は描くの好きだけど上手いわけじゃないよ〜。

ゆうくんはなんでもできるね!」


ゆうた「何でもできる人になりたくて頑張ってる。

ねえねえ、俺のこと描いて!」


私「んー…ちょっと待ってて!」


可愛くお願いされたら仕方ない。

髪とペンとクーピーを使って写メを元に少しデフォルメしたゆうくんを適当に描いた。

その写メを撮って彼に送る。


ゆうた「え!うま!めっちゃかわいい。

ありがとう!!」


私「雑でごめんね。」


ゆうた「嬉しいよ!やったあ。」


喜んでくれたみたいでよかった…!



***



1時間くらい話すとゆうくんはそろそろお風呂に入るよ、

と言いお開きになった。


わたしは寝落ち通話したかったな…

て思ったけどわがままを言っても仕方ない。



私「じゃあまたね!また通話しようね」


ゆうた「おう、またなー」


私「…」


ゆうた「…」


ゆうた「なに!切らないの!」


私「な、なんか切るの惜しくて…!!」


ゆうた「なんだよ!またな!」


2人で笑い合って通話を切った。


すんごく楽しかったな、落ち着く声だったなとか話したことを思い出して

抱き枕を抱きしめてしばらく余韻に浸った。


チャットで思ったよりもクールな印象だったな。


通話で話して分かったことは、

彼は学年は同じだけど2歳年上

バーで働いていてブランド古着が好き。


その後も毎日のようにラインをした。


授業終わったらライン来てるかな!

バイト終わったらライン来てるかな!

と毎日ゆうくんのことばかり考えて一喜一憂。


バーに来た変なお客さんのお話だったり、

私は学校の話をしたりちょっとしたやりとりもすごく楽しかった。


ゆうくんは本当に歌うのが好きらしくて

よく友達とも一人でもカラオケに行っていて、歌ったのを録音して私に送ってくれた。

それがいつもものすごく上手で度々聴いてはにやにやしていた。




***



ある日、朝からラインしていたけど突然返事が返ってこなくなった。


バイトが終わって夜中になっても返事がない。


いつもなら学校、バイト終わったーと一言でもくるはずなのにな。


事故にあってたらどうしよう。

電話かけたほうがいいんじゃないかな…

彼女でもない分際で迷惑かな…

それとも飽きちゃったかな…


何も出来ない苦しい気持ちの中、ゆうくんのことを待った。


ずっと心配で心配でしかたなくて、

ラインの通知がくるたびに

ゆうくんではないか?!

と思って飛びついて確認したけど

彼からのラインはなかった。




ー 日付を回った頃、

ラインの通知がきた。




ゆうた

『ましろーーー』


ゆうくんだ!!!!生きてた!!

安堵しすぐに返事を返した。


私『ゆうくん!!心配したよ。どうしたの?』


とりあえず無事で本当によかった…!!

その後、ゆっくり返事が来た。


ゆうた『ごめんなぁ。

寒すぎて学校で不整脈が起きて動けなかった』


ましろ『えっ、大丈夫なの?まだ学校?』


ゆうた『うん、今から帰るとこ。家つくまで電話してもいい?』


ましろ『うん!』


不整脈という病気を当時は知らなくて、

すぐネットで“不整脈”と調べた。


不整脈は脈拍のリズムが狂うこと、

心臓の病気の可能性もあると書かれていた。


この後からゆうくんからの連絡が遅いとまさか倒れてるんじゃないかと思って毎回心配で私の心臓の方が潰れそうだった。



ゆうくんから通話がかかってきたの出ると、

やっぱり少し具合が悪そうな声。


体の心配の話や今日何してたか少し話し、

彼が無事に家に着くと電話を切った。


こういう弱ってる時に私に電話してくれるなんてすごく嬉しい。


すごく心配だったけれど、次の日朝からバイトだったので『身体お大事にね』とラインを送り早めに眠りについた。


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