出会い





当時、私 藤井ましろ は19歳の専門学生。


昼間は学校で製菓を学び、

夜はイタリアンレストランの

キッチンでアルバイト。


まだかなり寒い季節の頃、

学校は冬休みに入ったばかり。


私は3ヶ月前に彼氏と別れ、

暇を持て余していた。


せっかくの19歳の女盛りの長期休みなのにデートもできなくてつまんないな…。


部屋でゴロゴロ過ごしていると以前、

友達が「このサイト彼氏見つかるよ」と教えてくれていたことを思い出した。


暇だしやってみよう!

と普段なら使わないそのサイトを開き

気まぐれに軽く自分のスペックを簡単に書き早速投稿した。


私『カフェや料理、洋服が大好きです。

趣味合う方お話しましょう!!!』


すると次々と男性から友達申請が来た。


ちょっと驚きつつ、

とにかく気になった人たちとチャットを始めた。


そのサイトでは女性の人気が高いらしく

1つ投稿すると、

20〜100件くらいの多くの男性から友達申請がきた。

ちょっとモテモテな気分が味わえて気分が良かったけど期待した以上に自分の好みに合う人は少なく、すぐに飽きてきた。


やっぱりネットで探していい人なんてなかなかいないよね…。


そんな諦めかけた時に

1つの友達申請を見て

手が止まった。






『カフェで働いている料理好き大学生。

よろしく。』


私と趣味がめちゃくちゃ合いそうな自己紹介に

嵐の相葉くんとシドのマオを足して割ったような顔の(私にはそう思えた)

すごくタイプなイケメンな自撮り写メ。



今までにはない、胸の高鳴りを感じた。



こんな素敵な人が

こういうサイトにいるなんて信じられない。


これは…、なんとしてでも絶対仲良くなりたい!!!



友達申請を許可し、すぐに返事をうった。



私『趣味合いそうですね!

よろしくお願いします。』




こんな私の何気ない行動からの出会いで

私の人生が180度変わるような

事態になるのは想像もしなかった。


この瞬間この場所であなたと出会わなければ

こんな毎日辛い思いをしなくてよかったかもしれない。




***




彼からはすぐに返事が来た。



彼『俺ゆうた、よろしくね。』


私『ゆうたさんよろしくです!』


ゆうた『ゆうくんってよんでよ!

敬語じゃなくていいよ。』


私『わかった…!!わたしはましろだよ。

なんとでも呼んで!笑』


ゆうた『じゃあましろね!』


かなりフレンドリーだな!

なかなか最初から呼び捨てな人って少ないのに。


私『ゆうくんはどこ住んでるの?』


もし彼がすごく遠いとこに住んでたら終わりだ…!!

会ったりとか付き合ったりは出来ないな…

と思いドキドキと震えて返事を待つ。




……




ゆうた『千葉で一人暮らしだよ、ましろは?』


ああああ!よかった!第一関門突破!

ちょっとだけ遠いけど、会えなくはない!


私『私は神奈川の実家なの。一人暮らし羨ましい。』


ゆうた『いいじゃん実家。一人暮らしさみしいぞ。』


私『でも親のいないところで伸び伸びしたい…!!』


ゆうた『そう〜?一人暮らしだとこんな寒い日でももったいなくて風呂のお湯溜めたりできないよ。

しかも脱衣所ないから廊下クッソ寒い修羅場。』


私『修羅場www

たしかにそれはそうかもしれない…!』


ゆうくんは気さくで話しやすい印象で、とても好感がもてた。


ぽんぽんと返事が返ってきてチャットしているだけなのに、他の人とはない噛み合うような会話の軽快さを感じてとても楽しい…!



私『家出たさはあるけど、

うちには大好きなわんちゃんがいるから家出れないんだなぁ〜』


ゆうた『へー!

確かにわんちゃんいたら離れられないな』


それから今まで飼ったペットの話、バイトの話や好きな服のブランドのお話をしたりだいぶ会話が続いた。


ゆうた『ましろの洋服どんなか見てみたいなー!』


私『えーっ、恥ずかしいからゆうくん先に見せてくれたらいいよ。』


ゆうた『いいよ!送るね!!』


するとすぐに画像が届いた。

そこには全身を鏡で撮影した彼が写っていた。


!!!

細くて小柄で服も古着系で可愛すぎるんですけど……


てか送るの早過ぎない?

見せたくて見たいって言ったんじゃないの?


やばくない?可愛すぎない?


 ……もう好き!!!!!!



早すぎるけどチャットして数十分で

大好きになっちゃっていました。


ああ、どうしよ私も何か送らなくちゃ…!


焦ってクローゼットを漁り考えて考えて

渾身の一枚を撮った。


キメすぎるのも恥ずかしかったので

普段着てる自分的に好きな格好を送った。


今見てみるとクソダサくて普通に辛いくらいなコーディネイト

(ピンクのセーターに茶色チェックのロングスカート)



彼からはすぐ返事がきた。


ゆうた『ましろの格好めっちゃすきだわー!

かわいい!』


私『嬉しい、ありがとー。

わたしもゆうくんの服すき!』


すきとかわいいのコンボに例えお世辞でも嬉しくてニヤニヤしながら、画面をスクショした。


ゆうた『俺の服ましろが着れそうなのも多いよ!

ユニセックスの服とかあるし。』


私『そうなの?ゆうくんの服、着たいわ!

わたしもゆうくんが着れそうなの持ってる。』


ゆうた『じゃあ服交換したりしようw』


私『それはめちゃ楽しそう!!』


もしかしたら今日で返事こなくなっちゃうかも…

と心配したけどそんなことはなく、

それからはほとんど毎日、

洋服の自撮り交換と

たわいのない会話が続いた。



バイトの通勤中や、暇な時はずっと彼とやりとりしていて彼から連絡がくるのがすごく楽しみになっていた。


明日はどんな服着て写メ送ろうかな。

褒めてくれるかな。


前よりももっとお洋服が好きになって、

朝は毎日ものすごく服に悩んでクローゼットから服を取り出しては投げてを繰り返していた。



***



チャットが続いて1週間が経ち、

そろそろ声くらい聞きたいなと私は考えていた。


ゆうくんはあんまりぐいぐい

誘ってくるようなタイプじゃなかった。

それもなんだか心地よかったけど、

電話したり会ったりとかは興味ないのかな?


でも、、これ以上待てない!!!

今日の夜こそお話ししてみたい!

よしすんごく緊張するけど…、自分から誘ってみよう…!!


こういうことで自分から誘ったことがなかったので、

かなり勇気を振り絞ってラインを打った。


私『もしよかったらなんだけど…、

電話してみたいな!』



断られたらどうしよう…。

ドキドキする…。


スマホとにらめっこして私は返事を待った。

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