第13話 帝国の巫女 4
「帝国の巫女?」
ミツキは、ぐずぐずと涙ぐんでるアンナとそれを抱きしめているエリザベートを見て首をかしげた。エリザベートの顔が青い。
「帝国の王家って
希に予言能力をもった巫女が生まれる家系なのよ……」
「へー」
エリザベートの答えにソファに座ったままのマコトは正面からみた
マコトから王女に対するはばかりが消えてしまっていた。悦楽でぶっ壊れた表情を晒した後だ、もう何も怖くない。
「その存在は帝国王宮に秘され、帝国の至宝とされ
王宮からは外に出ることは無かったはず……」
ぽんぽんとアンナの背中を軽く叩きながら、エリザベートはソファに座っているエレナのほうを見やる。エレナは不思議そうに首をかしげている。
「そんなことはない……よく二人で王宮から抜け出した買い食いしたことがある。
あと、わたしとエリナ姉のセットで帝国民に最近顔出しパレードとかやってる。
結構人気……」
エリザベートの腕の中からアンナが呟く。
「……帝国は結構、いやかなり……いいかげん?」
「帝国王宮でエレナ姉様が巫女の予知能力を持ってることを知っている人はほとんどいない。
お父様やお母様、それに侍従長ぐらいじゃ……」
鼻をぐずぐず鳴らしながらアンナはエリザベートの抱擁から外れた。
「未来を予知できる能力があることを兄王子達に知られると
間違いなく、エレナ姉様は巫女として自由の無い部屋に閉じ込められてしまう……。
だから関係者以外がもし知ったなら……多少無理しても王宮は秘密を守る」
袖で涙を拭うアンナ。
「あの……それ、わたしたちも知っちゃったんだけど……」
エリザベートが言う「わたしたち」とは、エリザベート、ミツキ、マコトを指す。
「わらわを騙した仕返しじゃ……王女エリザベート。
付き合ってもらうぞ、そなた達にも関わりのあることじゃからな」
アンナは目を真っ赤にしながら勝ち誇ったように笑う。
こういう勝ち気なところが大帝国の姫らしい。
そしてミツキとマコトは巻き込まれ事故である。
こういうナチュラルに庶民を勘定から除くところが大帝国の姫らしい。なんてこったい。
「なんか、ごめん……」
「「?」」
呆然自失という表情で庶民二人に謝る現在王家休業中の王女エリザベート。
ミツキとマコトは事の重大さをよくわかっていなかった。
「これ下手に他人にばらしたら……二人とも命がないかも。
だってこの子の予知能力の存在、帝国の最高機密だから……」
口元だけがあはーと笑い、そして冷や汗を垂らしたエリザベートは解説する。
「ちょっ!」
「なんですか! リズさん そんなの聞いてないですよ!」
頬をひくひくさせているエリザベートにマコトとミツキが詰め寄る。
「だからゴメンって……」
「元々はリズさんが幼い子をたぶらかしたのがイケナイんですよ!」
「ミツキちゃん、わたしだって好きで帝国王女を騙したわけじゃないわよー!}
「最初から王家のプライドなんか捨てればよかったんですよ!
そうすればこんなことにならかったのにー!」
「ばかばか、姫のバカー!」
「あああー、バカー! 昔のわたしのバカー!
よく考えたら今こんなんだし、頑張る必要なんてなかったんだー!
なんで王家のプライドなんて持っちゃたんかしらー、
これって14歳頃の少年少女がかかる心の暴走みたいなものかしらー!」
「……公正(笑)」
「言うなー! マコトちゃんSもいけるのー?!
……だったらちょっとリクエストあるんだけど」
「マコトちゃん注意して……サディストはインテリジェンスが求められる。
マゾヒストは自分の求める責めをしてくれない場合は激怒するらしいわ。
この休業中の王女様はそれにかこつけてマコトちゃんを滅茶苦茶にする魂胆よ」
「そ、そんなこと考えてませーん! でも……不可抗力はセーフよね? 滅茶苦茶してもいいよねー?
……ほら、わたし王女だし」
「都合の良い時だけ王女開店しないでぇー!」
そんな三人がわちゃわちゃしている姿を、アンナとエリナは見ていた。
二人の手がしっかりと握られいた。お互いを安心させるようにその手は互いの体温を巷間していた。
「あ、そっか……、
エリナ様とアンナ様は、エリナ様……帝国の巫女の予言を信じて
帝国からこのリリアリアまで来たのね?」
エリザベートが帝国王女二人がこの街に来た理由に気づいた時、何故か彼女がマコトとミツキを両腕で抱きしめる形になっていた。女の子抱きしめ能力の経験値の差である。
エリナはうんと頷いた。
「……流石です、エリザベート様。
わたし……夢をみたのです……未来の夢を」
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