第2話 転生したら友達と再会しました
『ハロー☆マジック』から外にでる。
始めて見る異世界の空は、高く、そして蒼かった。
鳥が群れを作って飛んでいる。
「あー、晴れたねー。
昨日はあんなにもの凄い暴風雨だったのに。
台風一過ってやつかねー」
カレンも青空を見上げていた。
本当に雲一つない。
「空はどの世界でも変わらないんですね……」
「おおー詩人だねぇ、マコトちゃんは。
あとね……」
見上げていた顔をこちらに向けるカレン。
魅惑的な顔とはこういうのを言うのだろか。
「?」
「マコトちゃんは、これからこの世界で生きていくんだ」
「はい」
「キミにわたしの店『ハロー☆マジック』を偶に手伝ってほしいんだ。
魔導具ショップのカワイイ看板娘って奴さ」
どうやら転生して無職とはならずに、職にはありつけたようだ。
「あ、はい」
「そこでだ、
わたしはキミをわたしの妹ととして、周りに紹介しようと思う。
こんな精巧な機械人形がいることを知られると、いろいろと面倒だからねぇ。
王宮の連中とか……」
指を立ててにししと笑うカレン。
「……わかりました」
マコトはこの世界のことを何も知らない。
なにをどうすれば判らないから、この人だけが情報源た。
それに、この人なら従ってもいいかなと思い始めていた。
「偽造は完璧でないといけないからねー、
これからキミはわたしのことを『
「姉様?」
この人を信じる判断は早かったかなと後悔した。
「そう、『姉様』。
人格素晴らしく尊敬できる同性の年上女性を無条件で慕う感じがでている素晴らしい響きとは思わないかい?」
「は、はぁ……」
ぐいぐいとカレンに迫られるマコト。
「まずは練習だ。マコトちゃん。
レッツスピーキング!」
両肩をぐいぐいと掴まれて追い詰められるマコト。
「……あ、姉様」
それを聞いてカレンが大きく仰け反る。
通行人がぎょっとしている。
「んーっ、グッジョブゥー」
そう叫んだ後、ぐいっと上半身を戻す。
「大通りで何をしているんですか?
カレンさん」
通行人の一人がつかつかとカレンに近づいてきた。それはまだ少女になりたての雰囲気を漂わせる黒髪のすっきりとした顔立ちの少女だった。美少女というよりは美女のミニチュアといった感じだ。
その少女の後ろには艶やかな服装と化粧をした美女が三人控えていた。
「ミツキちゃんではないかっ!
見てくれよ、マコトちゃんだよ。
わたしが身体を作って、マコトちゃんの魂を呼び寄せたんだ」
あれ秘密するんじゃ?とマコトは一瞬戸惑ったが、カレンが呼んだ名前に大きく目を見開いた。
「えっ!」
その黒髪の少女はそう言ってまじまじとカレンの隣のマコトの顔を見た。
「い、委員長……?
クラス委員長の……ミツキさん?」
ボクも思わずミツキの顔をじっと見つめていた。今日の朝――自分が死んじゃう前――に顔を合わせた時に比べて、随分幼くなったけど……。
「うんっ……!」
ミツキはこくんと頷くと、そのままぎゅっとマコトを抱きしめた。そしてぎゅっぎゅっと何度も身体の存在を確かめるように何度も力を入れた。
耳元から聞こえるすすり泣く声。また会えた、また会えたよ……よかった。
お嬢……あたしら先に姐さんの所に行ってますんで……お嬢のことは姐さんに話しておきますんでどうぞごゆるりと。ミツキの後ろに控えててた三人はそう言って何度も振り返りながら離れていった。
――その間ミツキはマコトから身を離さなかった。
しばらくして、ミツキはゆっくりとマコトから身を離した。そしてまじまじとマコト身体全体を見た。
「マコトちゃん……女の子になっちゃたんだね……」
「……いろいろ事情がありまして」
「ううん……それよりもまた会えたことが嬉しいよ」
◆◆◆
「この街はねー、凄いユニークな所があるんだ」
先頭を歩くカレンは腕を観光ガイドのように差し出して説明している。
旧王宮の方に向かってマコトとミツキとカレンは歩いていた。カレンがマコトはついさっき目覚めたと伝えたら、ミツキはついていくと言ったからである。
「ねぇ、ミツキちゃん。
ここにいるっていうのは……そういうことなのかな……?」
「そ。あたしもあの時死んじゃったんだ……といってもわたしの中ではもう十年以上前の話だけど……」
ボクたちが通っていた高校は突然武装した集団に教われた。授業中に突然飛び込んで来た彼らに、ボクは撃たれてしまったのだ。
……今度から不用意な行動をするのは止めよう。死んじゃうから。
「おーい、聞いてるかい?
この街はね、なんと日本からの転生者が滅茶苦茶多いんだ」
「は?」
マコトは立ち止まり商店街を見渡した。
すると前世世界の有名店と微妙に名前が被っていない店名や、微妙にスペルが違う商品名の看板が目に入った。あと、微妙に音を外しているテーマソングも聞こえてくる。
ジャ○コ……?
「え、え?
何で?」
「何でって……、
ほら、海外では日本人は群れるというじゃないか。
ここも、そーなんじゃないかな」
カレンはすたすたと歩き出す。
マコトとミツキもその後ろを小走りでついていく。
「まぁ、みんながみんな転生者というわけでも無いんだけどねー。
ただいわゆる『ギフト持ち』にチート能力を授かった転生者が多いって話。
ギフト持ちのみんながみんなそういうわけでも無いけどさー」
しばらく黙って歩いていると、自分達が周りから注目されていることにマコトは気づいた。自分達をじっと見る視線を感じた方向に視線を向けると、わざとらしく視線を外した男女がいる。そういうことが何度もあった。
「な、なんか見られていますよ……姉様」
心配になりカレンに声をかけると、隣のミツキがぷっと吹き出した。あ、姉様って……肩を震わせることしばし。
「そりゃ、こんな見目麗しい女の子が並んで歩いていると、注目を集めるのは当たり前だよ。
……ほら」
カレンはそう言ってショーウィンドゥを指した。そこにはカレン、マコト、ミツキが反射して映っている。
至上の美少女カルテットがそこにはいた。
マコトは息をのんだ。
鏡の中の少女もグリーンの目を見開き口を少し開けていた。
このままどこぞのファッション雑誌の表紙になりそうである。
「そっか……ボクってカワイイんだぁ……」
――その時、マコトの中で何かが目覚めた。
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