第8話 赤髮を持つ貴女…②

……………………………………………………



「……一目惚れ…えぇー!!本当に?

ジンジャーさんに…」


彼女は恥ずかしそうに

顔を真っ赤に染めて

こくっと頷いた。


ジンジャーさんと初対面した際、

目を見開き、固まっていたから

最初はわからなかったけど…

なるほどね…


一目惚れなら、私も絶対

アッサムさんのように、

挙動不審になるだろうな


良かった 体調が悪いとかじゃなくて…


アッサム「………うん…まさか私

一目惚れするなんて…

しかも見た目だけで……

これじゃあ相手に失礼だよ」


うぅぅ…と彼女は唸り

顔を覆ってしまった…


表情を見せない様に顔を隠しているが、

耳が赤く染まっている


彼女は一大事なのに

その姿を見て私はなんだか可愛いなと

思ってしまった。


アッサム「オーロラさん…ごめんね

今日は色々見苦しい姿を見せて

しまって……」


「見苦しいだなんて そんな事ないよ!

もし、私も一目惚れしたら

アッサムさんと同じ状況になるよ

ありがとう話してくれて」


アッサム「こちらこそ、聞いてくれて

ありがとう」


えへへと笑い、

手を胸にたずさえて


アッサム「そっか…この感情が恋かぁ…」


嬉しそうにポツリと呟いた。



「……いいなあ、いつか私も恋したいな

好きな人ができるなんて素敵よね

ジンジャーさんとアッサムさん

美男美女同士 お似合いのカップルだね!」


アッサム「……やっやだなオーロラさん

美男美女だとか

たしかにジンジャー様は美男だけど

そそそれにお似合いカップルなんてっ

お世辞が上手いだから!」


やだぁ もう! 言いながら恥ずかしがり

ポンっと優しく背中を叩かれた


お世辞じゃなくて…本気でそう思ってるのに…よし……なら!!


ここは…親友の為、 この恋愛マスター(自称)

オーロラがひと肌脱ごうじゃないの!


「アッサムさん、私、協力するよ

何かできる事があれば……」


ジンジャーさんの好きなタイプや食べ物を

聞き出し、それにそって作戦を練り、

アピールすれば…


あっあれ……なんだか

表情が暗くなってる…っ

なんで?


アッサム「オーロラさん…

ありがとう…でもいいよ

見てるだけで充分…

気持ちだけ受け取るね」


……えっ?!どうしてっ

聞こえた言葉にびっくりして、

アッサムさんを見ると…


ふるふると首を横に振り


彼女は悲しそうに笑って…

こう言った。



アッサム「だって…相手は位の高い魔族よ

あと、シラトス城の従事者だっけ


なら…こんな ちっぽけな妖精…

ましてや、下働きの女なんて

相手なんかしないよ」


「アッサムさん……」


アッサム「……それに…あんなに綺麗な方だから もう…既に素敵な恋人だって…」


……たしかに…

この王国は魔族主体だから、

人間と妖精は位がとても低い


力の強さや寿命だって

はるかに魔族の方が上だ。


シラトス城の従事者となると

誰もがこぞって妻や愛人に

立候補するだろう…

魔族の金持ちご令嬢様とか

お姫様とか


…となると きっと中には

汚いやり方で相手を蹴落とす人だって

いるだろう…


アッサムさんには

あわせたくないな…

そう言ったドロドロ愛憎劇場…


「……………」


……考えれば考えるほど、

よくない方向になってしまう


彼女の言う通り、

この恋は見ているだけで

幸せかもしれない……


でも…


「アッサムさん! ならさ

恋愛とかは抜きにして

仕事だと思ってジンジャーさん

に接したらどうかな?」


やっぱり

親友の恋愛は応援したい!


アッサム「仕事だと思って……」


「そう! アッサムさんなら

仕事の切り替えが得意でしょ

その調子で接すれば、

変に固まったりしないと思うよ」


アッサム「……うん 仕事と思って

ジンジャー様に…

まずは挨拶から挑戦してみる」


「その調子だよ アッサムさん 頑張って !」



激励の意を込めて

アッサムさんの手を掴み

ぶんぶん振っていると


…とその時、



タッ タッ タッ(足音)



ルクシ「あっいたいた おねぇーちゃん!

坊っちゃまがお話が終わったから

アッサムさんつれて

お部屋に戻ってきてだってー」


ルクシ君が私めがけ 走り出して

ぽすんと腰あたりに抱きついた。


「ところで 2人の声が聞こえたけど

どんなお話してたの? 」


頭をこてんとさせ、

キラキラお目目を光らせる


可愛い!でも今回ばかりは

ルクシ君には話せない

少し大人な話だから…


「メイド同士の秘密のお話!

ごめんねルクシ君には内緒!」


アッサム「ごめんねルクシ君!」


アッサムさんと顔を見合わせて

2人でルクシ君に手を合わせて謝った。


……………………………………………………


………………………………………


…………………………


ルクシ君の今後についての話が終わり、


ジンジャーさんがシラトス城に戻るまで

お茶を交えながら、みんなで談笑した。


アッサムさんは…


アッサム「ジンジャー様は

魔法が得意なのですね

私はそう言った能力はひとカケラも

ないので羨ましいです 」


アッサム「へぇ…シルク魔王のストッパー…

これまた、責任重大のお仕事を…

まだ…お若いのに凄いです!」


持ち前の明るい性格で

ジンジャーさんと話すのは

仕事 だと認識しているので、

いつも通りに応対している。


さすが、アッサムさん切り替えが早い

たった1時間で元に戻るなんて、

まさしくプロのメイドだ…


ジンジャー「あっ…ありがとうございます///」


ルクシ「……………………」

(ちょっと…ジンジャー、なに固まってるの

折角アッサムさんが話しているのに

このままだと無愛想男の印象になっちゃうよ)


ちらっ(ルクシがジンジャーを見る)


ジンジャー「…………!!……」

(魔王様! なな何故知っているのですか?!

いや…それより……魔王様の言う通り

このままだとアッサムさんに

無愛想男と思われてしまう!

それだけは何としても阻止しないと!

そうだ…この紅茶は たしか…)


ジンジャーさんの方は

優雅に紅茶に口を付け…


ジンジャー「この紅茶…アッサムさんが

入れたものですよね とても美味しいです

俺にはこんな深い味わい出せないので

今度、是非入れ方を教えて下さい」


…と言って 穏やかな笑みをこぼした。



「…………ヒュッ…」

思わず息を飲み込んでしまった…

ここっこれは…イケメンすぎる!!


どんな女性でも見惚れてしまうよ

私も少し今、ドギマギしているもの…


ルクシ「……お姉ちゃん……」(ムスッ)



いくら仕事と認識しても

好きな相手の笑顔を間近で見たら…

アッサムさん…大丈夫かな…



アッサム「……………」ピシッ!


大丈夫じゃなかった…

顔を真っ赤に染め、

ポットを持ったまま固まってしまった。


まっ…まずい

このままだと…また挙動不審になって

紅茶を溢すパターンに!!


「アッ…アッサムさーん!!

しっかりー戻ってきてー」


慌てて肩をゆすり、意識が戻るように

彼女に声を掛けた。


アッサム「……!! 私で良ければ

是非…よろしくお願い致します」にこっ

(ありがとうオーロラちゃん…

これは仕事…これは仕事!)


ジンジャー「えぇ、また後日

こちらへ伺いますので、その時に

お願いします 約束ですよ?」


アッサム「はっ…はい///」


ジンジャーさんからのお誘いに対して

嬉しそうにアッサムさんは はにかんだ。


良かったね アッサムさん!

もしかしたら脈があるかも…


ジンジャーさんが彼女に対して

どう思っているかは分からないけど…


もしも叶うなら、

彼女の恋が実りますように…


彼女の恋が上手くいきますようにと

心の中で祈った。


そして、幸せそうに笑みを浮かべる

彼女を見て…なんだか…


「いいな……いつか私も

誰かに恋したいな……(小声)」


私もいつか誰かを好きになって、

恋愛をしたいなと本気で思った。


ルクシ「…お姉ちゃんも恋したいの?」


「…!あ…声に出ちゃってたね

うん…いつかは…

はっ恥ずかしいから内緒ね」


ルクシ「わかった でも安心して

お姉ちゃんも近いうちに恋できるよ」


「慰めてくれるの?優しいね

ルクシ君 ありがとう」


うぅ…こんな小さな子に気を使わせるとは

ごめんねルクシ君…


申し訳ない気持ちになり、

ルクシ君の頭を撫でた。


ルクシ「…………………」

(…だって…その相手は僕なんだし

ああ、早く元に戻ってオーロラと

恋愛……いや…一緒に甘い生活を送りたいな

ふふっ楽しみだ)



………………………………………………………………



坊っちゃま「…………」


2人だけの世界に入っている

ジンジャーとアッサム…


一方はオーロラに頭を撫でて貰いながら、

愛おしそうに彼女を見つめるルクシ…


3人の甘い雰囲気に

坊っちゃま はこう思った。


坊っちゃま(俺は今、居ない方がいいな…

一旦空気になった方が良いな これは…)




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