第9話 素敵な人を紹介します…(残り11日)①

…………………………………………


ルクシ君と本当のお別れまで、

残り11日となった。





お別れまで、

ルクシ君に良い思い出を作ろうと、

私は仕事仲間達と坊っちゃまに

協力を得て、


一緒に料理をしたり、


ガーデニングをしたり、


ルクシ君のお願いも叶えたりした。


ルクシ君のお願いは、相変わらず

一緒に寝ようとか、抱っこしてとか

一緒にお風呂に入ろうなど…

あまり、欲がないお願い事で

いや…これはお願いごとじゃない!


「ルクシ君…良いんだよ遠慮しなくて

私の出来る事なら なんでも叶えるよ」


ルクシ「……なんでも?良いの?

お姉ちゃん?」


「うん、なんでもよ!じゃんじゃん言って!」


ルクシ君はうーん…と考えて

やがて、おもむろに口を開いた。


ルクシ「……じゃあ、願い事

最後の日に言うから

……楽しみにしてて」


「そっかあ、わかった

どんな願い事か

とても楽しみにしているね」


お楽しみは最後に

とっておきたいタイプかな?


今すぐにも叶えてあげたいけど、

ルクシ君の希望なら

私はいつでも待っている。


だからその間は…


「…お願い事を言うまでは

私、ルクシ君にいっぱい楽しい事を

させるね! いいかな?」


ルクシ「もちろん! お姉ちゃん

ありがとう…」


バフっと音を立て


可愛い笑顔で

私を抱きしめてくれた。


…この光景も残り11日か…


しみじみ思いながら、

ルクシ君の頭を撫でた。


その時…


ガチャ(ドアを開ける音)


坊っちゃまが私の部屋に入ってきた。


坊っちゃま「おーい!オーロラ

シラトス城のジンジャー様が……

…あっ…邪魔しちまった…一旦失礼…」


「はっはい、分かりました

すぐ向かいます !

あのジンジャーさんの場所は…」


坊っちゃま「1階のコンフィル客室にいるぞ

その餓鬼も連れていけ」

(魔王様の顔が少し不機嫌になってる

まさか、いちゃついていたとは……

…オーロラの部屋に入る際は、

一回ノックして様子を見た方がいいな)


坊っちゃまは苦笑いをして、

私達に顔を背けた。


一体どうしたんだろう?


「分かりました すぐ向かいます

坊っちゃまありがとうございます

ルクシ君、ジンジャーさんが来たって」


ルクシ「うん!ジンジャーお兄ちゃんに

会うの楽しみ!行こう!お姉ちゃん」


グイッとルクシ君に手を引っ張られ、

ジンジャーさんがいる客室へと

向かった。



………………………………………………


バタン!


バタ バタ バタ バタ


シーン…


ルクシとオーロラが出て行き

部屋の中で一人…坊っちゃまは



坊っちゃま「……今後あの2人…

どうなるんだろうな…

良い方向に行くといいな

幸せになれよオーロラ…」


穏やかな笑みを浮かべ

ポツリと呟いた。


……………………………………………………………




………………………………………




……………………………



コンフィル客室に着き、


ルクシ君は

コンコンとドアをノックした。


コン コン コン


ルクシ「ジンジャーお兄ちゃん

入るよー」


ジンジャー「はーいどうぞ!」


ジンジャーさんの声がしたので、

ドアを開けた。


部屋の中ではアッサムさんもいて、

テーブルに色んな紅茶やティーカップ等が

置かれていて…


もしかして…



アッサム「オーロラさん!ルクシ君!

あっ これね さっきジンジャー様に

紅茶の入れ方を教えていたの」


ジンジャー「とても勉強になりました

ありがとうございます」


アッサム「いえいえ、お役に立てて

光栄です」



成る程、詳細ありがとうございます

だから、複数ティーポットが

置かれていたんだね


アッサム「2人ともよかったら飲んで

今回はとっておきの茶葉を

用意したんだから!」


そう言って彼女らトポ トポと音を立て

紅茶をティーカップに注ぎ、


カタンと私とルクシの目の前に

淹れたての紅茶を置いた。


「ありがとう いただきます」



ティーカップに口につけると

口いっぱいに紅茶の香りと味が

ふわっと広がった。



ジンジャー「……やっぱり、アッサムさんの入れる紅茶は美味しいですね…

さてと…皆さん集まった事ですし…

皆さん、今日はお伝えしたい事がございます」


カチャッとティーカップを受け皿に乗せ、


ジンジャーさんは私達3人を一通り見て

話を始めた。


ジンジャー「…行方不明になったシルク魔王ですが…一昨日に見つかりました」


「……!!」


シルク魔王って…たしか…


たしかルクシ君とお洋服を買う際、

モジュール街のお洋服屋さんの

店員さんのやり取りで……


………………………………………………


店員女性『実は…数日前から

突然、姿を消して

行方不明になっているのですよ』


『………え……行方不明?!』


……………………………………………………


そうそう、突然姿を消して

行方不明になったんだっけ

やっと見つかったんだ

良かった…無事で…


アッサム「シルク魔王って…

あのシラトス王国を統治する

お偉い方…」


ジンジャー「はい、その方で合っています

実は…そのシルク魔王から…」


ゴソゴソ…


ジンジャーさんは懐から

2枚の封筒を取り出し

私とアッサムさんに手渡した。


ジンジャー「国民に迷惑かけたお詫びで

来月、シラトス城で舞踏会を

開催する事になりました

招待状です どうぞ!」


「ありがとうございます」


招待状を受け取り中身を見ると

こんな内容が書かれていた。



……………………………………………………


(招待状の内容)


この度は我の行方不明により

国民全員に迷惑かけてすまない。


お詫びに、来月の満月の日に

シラトス城で舞踏会を開催する事になった。


お金の面はすべてこちら側で負担するので

是非、来て欲しい。


ただし、以下のものは

自己負担で頼む。


服装面、移動面


この舞踏会が素敵なイベントになりますように…


※皆が楽しめるように

当日 我は挨拶をしてから

すぐ席を外します。


シラトス王国 魔王

シルク・クリアランより


……………………………………………………



「……舞踏会……」


ジンジャー「はい、是非お二人にも来て頂く……ってどうしたんですか?!

暗い顔をして…」


招待状を読み終えた私と

アッサムさんはとても落ち込んだ。


だって……


アッサム「ジンジャー様…ありがとうございます とても嬉しいのですが

申し訳ございません…

私達は舞踏会に参加できません

お気持ちだけいただきます」


ジンジャー「えっ?!何故ですか!?」


ルクシ「なんで?!折角の舞踏会なのに

お姉ちゃん!アッサムさん!」



アッサム「舞踏会だなんて私達のような

下働きの女が行っては良い場所では

ございません…あまりにも身分違いです


それに……私達ドレスを持っていないので、その………」


「「ごめんなさい」」


2人してジンジャーさんに頭を下げた。


私達だって本当は舞踏会に行きたいけど

あまりにも身分違いだし…


なにより、ドレスを持っていない


ドレスって一着の値段なんて

……お給料じゃ絶対に足りない



ジンジャー「…お断りの理由は身分と

ドレスがない事ですか……」


理由を聞いたジンジャーさんは

くすりと笑った。


ジンジャー「ふふっ大丈夫ですよ

この舞踏会は身分は関係ないので

差別するような人がいる場合は

即刻、退場して貰います


あとドレスや装飾品は

こちらでご用意しますので

ご安心ください」


アッサム「…良いのですか?

私達まで参加して…

それにドレスも高級品でしょう

参加できるなら私達はメイド服でも…」


ジンジャー「アッサムさん、

こういう時は甘えて下さい

大丈夫、きっとこの舞踏会は

貴方にとって素敵な思い出にさせます!」


真剣な眼差しでアッサムさんをみて、

キュッと彼女の手を握りしめた。


アッサム「ジ…ジンジャー様…///」


ジンジャー「……!すっ…すみません!

いきなり手を掴んでしまって…///」


アッサム「……いえ 大丈夫で…す///」



「………………」


2人とも顔が真っ赤…

もしかして…ジンジャーさんも…


なんだか、見ている私が

甘酸っぱい…いや照れ臭い気持ちになった…


…と言うか羨ましい!!


ここだと素敵な人はいるけど

みんな妻子持ちだし

アタックできる人すらいない…


でもさ…私もいつか、

好きになった人と……


ルクシ「……おねえちゃん?」


「なっ…何かな ルクシ君!」


ルクシ「あの2人を見て羨ましいって

思ってる?」


「……!!!…えっいや……

…う…うん…実は///私もいつかは…

…ってそんな相手すら

いないけどね」


子供のルクシ君にバレるとは….

うぅ…私そんなに分かりやすいのかな


ルクシ「 おねえちゃん それなら大丈夫だよ

舞踏会に行けば いるじゃん

おねえちゃんの相手!」


「そっか、舞踏会に行けば…」


きっと私の運命の王子様が…

頭いい!ルクシ君!!


そう思い、ルクシ君の頭を撫でようとした

次の瞬間、彼はとんでもない発言をした。


ルクシ「そうだよ 舞踏会に行けば

おねえちゃんの好きなシルク魔王が

いるんだから!」


「…ほわっ?!」


なななっなんで

シルク魔王?!


驚愕のあまり、

撫でようとした手は

思わず引っ込ませてしまった。


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